ファッションにも美容にもお金を使いたいし、おいしいものも食べたい! でもお給料の全部を使ってしまって、この先大丈夫? そんな「貯められないアナタ」が、お金を貯めるには? 30代までに知っておきたいお金事情を、ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子さんにお聞きしました。

―単身世帯の貯蓄額の世論調査で、20代で平均は142万円、30代の平均貯金額は589万円という金額を見ました。みんな結構貯めているんだなという印象です。

これは平均値なのですが、実は中央値(データを大きさの順番に並べた時の真ん中の数値)は、20代が0円で、30代が83万円です。つまりすごく貯めている人と、全然貯めていない人の差が大きいということなんです。平均値はものすごく貯めている人の影響で高くでているんですね。

―20代でも貯めている人は、意識的に貯めているということですね。

意識的に貯めている、というよりは、意識しなくても貯まってしまう人って、実は結構いるんです。そういう人って、貯蓄が趣味というわけでもなく、例えばタクシーを使わずに公共交通機関を使うとか、やたらとカフェに入らないとか、手数料のかかる時間にはお金を下ろさないとか、小さなことから生活習慣が違うんですよね。それで1000万円貯まったから、じゃあ金融商品でも買おうか、みたいな。

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―貯まる人は雪だるま式に貯まっていくんですね……。

20代で保険商品を7つも8つも持っていたり、外貨建ての老後の保険を持っていたり。貯蓄額が5000万なんて人もいました。びっくりしますよね(笑)。でも20代、30代は誰にとっても貯蓄のチャンス、一番貯めやすい時期なんですよ。

養わなければいけない人がいない独身時代はもちろんですが、結婚して子供がいない時期というのも、共働きであれば収入は倍になり、支出は一本化されて減らせる部分も多いので、貯蓄をするのにおすすめです。

でも、実際はこの時期を逃してしまう人も多いんです。ファッションや美容、外食や旅行などにお金を使いたい時期でもありますから。もちろんそれはそれでいいんですが、貯蓄に回す分まで全部使ってしまうとなると…。将来、もし結婚して子供ができるとなるとまず貯められませんから、早いうちに貯めておいたほうが後々絶対に楽です。

―無理なく貯められる金額として、どのくらいが目安でしょうか?

無理なく貯蓄に回せるのは収入の20%くらい、ちょっと無理して30%まではいけるんじゃないでしょうか。例えば年収400万円で、手取り30万円弱であれば、一人暮らしで月に5万円くらい。実家暮らしならば10万円くらいは貯められると思います。ご結婚なさっていて共働きなら、夫婦合わせた収入の30%は貯めたいところです。

でも逆を言えばこのぐらいの金額って、知らないうちに使ってしまう額でもあるんですよね(笑)。貯めるのが苦手な人は「半年で50万貯める」など、はっきりした目標と期日を決めたほうがいいかもしれません。最初から所定の額の貯蓄分を別の口座に移してしまい、それはないものとして残りで生活をする。貯蓄をしているという安心感もありますし、残りは全部使えると思えるし。

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―最近は様々な貯蓄の仕方があり、迷ってしまうのですが…。

貯蓄の口座や金融商品には、すぐに引き出せるものと、そうでないものがあるので、自分のライフプランをある程度考えて、それに合わせていくつかに分けるのがいいと思います。

例えば老後資金ならば60歳まで崩せないものでもいいけれど、結婚資金や住宅資金にと思うなら、5年とか10年くらいで取り崩しができるもののほうがいいですよね。毎月の貯蓄、5万円なり10万円なりを、それに合わせて振り分けてみましょう。

―貯蓄が苦手な人におすすめの方法はありますか?

「確定拠出年金(イデコ)」がいいのではないでしょうか。以前であれば多くの日本企業は退職金を用意し給付を確約していたのですが、それが低金利でできなくなってきたためにできたものです。毎月お給料から決まった額を積み立て、それを運用した成果により、60歳以降になった時に給付されます。会社が導入しているところもあれば、個人で入れるものもあります。

イデコは非課税の制度なので、3つのポイントで節税になります。一つ目は積み立て時の控除で所得税と住民税が軽減されること。二つ目は運用で得た利益が非課税になること。三つ目は受け取り時に一定額まで非課税になること。運用する商品には、保険以外にも債券タイプや預金タイプなど種類もありますし、非課税枠を使いたいならイデコがいいと思います。

もし「60歳を超えないと崩せないこと」がネックになるなら、「つみたてNISA」がいいと思います。つみたてNISA(少額投資非課税制度)の口座を開くと、年間40万円まで積み立てることができ、その中で資産運用をした投資の収益に関しては非課税になります。こちらであれば好きな時に売れるので、「投資を始めたばかりだし、お金がいつ必要になるかわからない」という方は、まずはつみたてNISAから始めるのをおすすめします。

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―「投資信託」というのも耳にしますが、どうでしょうか?

投資信託は、運用会社のファンドマネージャーが、証券や債券、不動産などで運用し、購入者(投資家)にその成果を分配する金融商品です。運用をプロに任せることができるし、小さい額から投資ができるので、個人で投資を考えているのであれば使ってもいいのではと思います。

こうした金融商品を買う場合、銀行などで買うと手数料が異常に高くて利益を出すことが難しいので気を付けなければいけません。おすすめは、手数料の安いネット証券。対面式ではありませんが、SBI証券や楽天証券などでは、独立系のファイナンシャル・アドバイザー(IFA)を追加料金なしで利用できますので、それを活用したいですね。

IFAは企業に属しているわけではないので、いろいろな会社の商品を独立した立場からの意見が聞けますし、リスクの許容度などに合わせたアドバイスも受けられます。アメリカやシンガポールで個人が投資をするときは、IFAを使うのが一般的ですし、プロを頼ると失敗も少ないです。

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―貯められる人間になるために、明日からできる何か具体的なことはありますか?

ひとつは「欲しい」と思った瞬間には買わないこと。1週間取り置きして、その間考える。それでも欲しいと思うものだけ買う。それだけで買い物は半分くらいになると思います。

もうひとつは、いわゆる断捨離すること。ついつい買い物をしてしまう人って、たいてい家の中が片付いていないんです。家の中を整理整頓して、いらないものを捨てたり売ったりしてみると、自分が買ったものがどれだけ価値のないものだったかわかります。

買い物上手、貯蓄上手な私の友人は、シーズンの初めにお洋服をすごくたくさん買うのですが、ちょっと着てまだ価値のあるうちに売っています。3万円で買ったものを半額くらいで売る、それを繰り返して回していますね。そうなると売れる価値のあるものしか買わなくなる、買い物上手になります。化粧品でも「買ったけど結局使ってない」というものって結構ありますよね。そういうものもネットなどで売ってしまう。

断捨離することで、買うサイクルから売るサイクルに変わるのもいいことですよね。

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―最後に、貯めるための心構えを。

一番は「将来のことはなんとなかると楽観的に考えないこと」です。私はセミナーなどでも“投資家の神様”の異名を持つジム・ロジャーズのように「日本はヤバい」と強く言っているので、参加者の皆さん「貯蓄しなきゃ!!!」と帰っていきます(笑)。まずはそういう危機感を持つこと。それだけで貯蓄性は全然変わってきます。

そもそもすでに日本社会は、経済的に楽観視できないレベルになっていると思います。私個人としては、今の20代が60代になる40年後については本当に悲観しています。少子高齢化はさらに進み、一人の若者が1.3人の高齢者を支えなければいけない、そのために負担が増え、手取りは今よりずっと減ってしまい、かつ自分が年老いた時の年金はあまりもらえません。

でもそういう時代になってもお金さえあれば海外に出ることもできますし、親の介護も施設を利用することもできる。お金は人生の自由度を上げてくれるものですし、年齢が若いうちからためるに越したことはありませんよ。

今回お話を伺ったのは…

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Yoko Hanawa

【花輪陽子さん】
大学卒業後、外資系の投資銀行に入社。リーマンショックで、夫婦同時失業を経験。投資銀行を退職後、ファイナンシャル・プランナーに転身。
https://yokohanawa.com/