健康志向やエシカル志向、環境志向の方に人気がある植物性ミルク。ずっと豆乳の独り勝ち状態だった日本ですが、近年はアーモンドミルクも豆乳と肩を並べるほど親しまれています。

今回はそんなアーモンドミルクに含まれる栄養素や健康効果を、菜食栄養学の発信をしているYukaさんが改めて解説。自宅でアーモンドミルクを作る方法もご紹介していきます。


【INDEX】


アーモンドミルクとは

アーモンドミルクはアーモンドを水と一緒に細かく砕いてすり潰し、搾って作られた飲み物のことを言います。牛乳、豆乳に続き「第3のミルク」として人気が出てきています。

元々は不揃いで規格外のアーモンドを商品にするために開発されたアーモンドミルク。乳糖不耐症(牛乳に含まれる乳糖で腹痛・下痢などの症状が起こる)の方や、乳製品アレルギーの方、またヴィーガン生活をしている方が牛乳の代替品として取り入れることが初めは多かったですが、最近では美容や健康にも良いとして注目を集めています。

世界規模で「食の多様化」が進んでいる今、ラテやカプチーノなどにアーモンドミルクをリクエストできるカフェが増えてきていたり、またアーモンドミルクを使ったスムージーやスイーツを提供する飲食店も増えていたり。

今まで乳・大豆アレルギーの方は牛乳も豆乳も飲めない状況でしたが、アーモンドミルクの普及によりアレルギーの方も選択肢のある豊かな食生活が送れるようになってきています。

cropped shot of young asian mother preparing healthy breakfast, pouring milk over cereals on the kitchen counter healthy eating lifestyle
AsiaVision//Getty Images

アーモンドミルクの栄養

「天然のサプリメント」とも呼ばれるほど栄養素が詰まっているアーモンドですが、砕くことで成分が抽出されやすく、アーモンドミルクにすると栄養がより手軽に摂れるようになります。

食物繊維

食物繊維は、排便作用がありスムーズな便通を促し、便秘解消にも役立つとともに、善玉菌のエサとなり腸内環境を整える効果を期待できます。

ビタミンE

アーモンドのビタミンE含有量は、さまざまな食品の中でもトップクラス。ビタミンEは強力な抗酸化作用で老化の予防に役立ち、美容と健康の強い味方になってくれます。

カルシウム

骨や歯を形成する大切な栄養素のカルシウムは、丈夫な骨や歯を形成するために必須。「カルシウムといえば牛乳!」というイメージがあると思いますが、アーモンドにも実はカルシウムが豊富に含まれているため、乳製品を取らない生活をしている方はアーモンドやアーモンドミルクを取り入れいるようにするのがおすすめです。

オレイン酸

オレイン酸は不飽和脂肪酸の一種で、悪玉コレステロールを減らし善玉コレステロールを維持する働きがあるとされ、中性脂肪やコレステロールによる脂質異常症の改善、生活習慣病の予防をするお手伝いをしてくれます。

このように、現代人が不足しがちな栄養素が取りやすいアーモンドミルクですが、それとは裏腹に、カロリーや脂質(特に飽和脂肪酸)は、牛乳や豆乳と比べて少ないのが嬉しいポイントです。

アーモンドミルクの健康効果

アーモンドミルクには身体を健康に保つために必要な様々な栄養素が含まれています。

ですが今回は、アーモンドミルクの最大の特徴とも言える「ビタミンEの含有量の高さ」から来るアーモンドミルクの健康効果について解説していきます。

生活習慣病予防

アーモンドミルクに多く含まれるビタミンEには抗酸化作用があるため、生活習慣病の予防が期待できると言われています。

私たちは日頃から、紫外線やストレス、喫煙、大気汚染物質などを通して酸化ストレスにさらされています。酸化ストレスがかかることにより、体内の酸素が活性酸素に変化し、活性酸素が過剰に発生すると、体の細胞を傷つけてがんや動脈硬化など生活習慣病の引き金になってしまいます。

ですが、ビタミンEは活性酸素に電子を与えて無害化してくれるため、細胞を活性酸素の攻撃から守り、結果として生活習慣病にもかかりにくくなるようにお手伝いをしてくれます。

妊活サポートや生理不順に有効

アーモンドミルクに豊富に含まれるビタミンEは、もともと動物研究で不妊を解消する栄養素として発見されたビタミンで、妊活に深い関係のある栄養素です。

女性ホルモンの分泌を調整してホルモンバランスを整えてくれるほか、月経前症候群(PMS)や月経痛、生理不順などに有効だと認められています。

また、ビタミンEには血流を促す作用があり、冷えを防いで生殖機能のはたらきを高めることにも期待できます。さらに、前述の抗酸化作用もあるため、卵子や精子の質を維持するのに役立ち、妊活中のカップルにも効果的です。

冷え性・肩こり改善

ビタミンEには毛細血管を拡張させて血流をよくする作用があり、冷えや肩こり、頭痛など、血行不良に由来する症状の緩和に効果的とされています。

逆にビタミンEが不足すると血行が悪くなり、冷えやすくなるほか、肩こりや頭痛の原因となります。

これから寒くなってくるので、アーモンドミルクで作ったホットココアやラテ、ミルクティーなどで体を温めながら血の巡りをよくして、冷え性対策をするのもいいかもしれません。

jar of almonds
Shana Novak//Getty Images



アーモンドミルクがダイエットや美容にいい理由

アーモンドミルクを選ぶ理由として、ダイエットや美容への効果もよく挙げられます。

実際にアーモンドミルクはダイエットや美容にいい食品なのかについて、掘り下げてお話ししていきたいと思います。

低カロリー・低脂質・低糖質

アーモンドミルクはカロリー数(100ml当たり)で言うと「牛乳(69kcal)>豆乳(47kcal)>アーモンド(15kcal)」で、牛乳や豆乳と比べてかなりカロリーが低いです。

糖質と脂質の含有量もとても低いため、牛乳や豆乳の代わりに取り入れると、摂取カロリーに加えて糖質と脂質の摂取量を抑えることができるため、ダイエット中の方にもおすすめです。

便秘対策・食べ過ぎ防止

ダイエット中は食事量を減らしがちですが、食事量が減ると食物繊維の摂取量も不足して便秘になってしまうことがあります。便秘は代謝の低下や、体脂肪の蓄積にも繋がってしまうことがありますが、アーモンドミルクに含まれる「食物繊維」は整腸作用があるため、ダイエット中の便秘対策に役立ちます。

牛乳には食物繊維が含まれていないため、牛乳をアーモンドミルクに置き換えることで、食物繊維の摂取量を増やすことができます。

また、アーモンドミルクに含まれる食物繊維には摂取後に血糖値の急激な上昇を抑える作用もあります。食事の前にアーモンドミルクを飲むと血糖値を緩やかに上げるお手伝いをしてくれるため、食後の満腹感が続きやすく、食べ過ぎ予防にも一役買ってくれます。

肌を健やかに保つ

さらにアーモンドミルクには、上記で紹介したようにビタミンEが豊富に含まれていますが、ビタミンEはエイジングケアや美肌作りに効果的な栄養素です。

ビタミンEは強力な「抗酸化作用」をもっているため、肌のシミやシワの原因になる活性酸素の増加があげられますが、その活性酸素のはたらきを抑える効果が期待でき、肌を美しく保つサポートをしてくれます。

また、ニキビができる原因として、ホルモンバランスの乱れや冷えによる血行不良が挙げられます。アーモンドミルクに豊富なビタミンEはホルモンバランスを整えたり、血行を促す作用があるためニキビ対策にも役立つため、肌荒れの少ない肌作りのお手伝いをしてくれます。

さらに血行促進作用もあり、血流がよくなることで細胞の新陳代謝が活発になるため、肌が正常にターンオーバーされ、美肌効果も期待できます。

homemade almond milk in a glass on a wooden board
Olga Gagarova//Getty Images

アーモンドミルクの作り方

アーモンドミルクは牛乳や豆乳と同様に市販品として手に入れられますが、実は家庭でアーモンドから手作りすることも可能です。

作り方はアーモンドを水に漬けて皮を剥き、水とともにミキサーにかけ、ガーゼで濾して絞るだけ。アーモンドの濃さや甘さを自分好みに調整できますし、無添加で美味しく作れるのでとってもおすすめです。

おすすめの作り方

材料(作りやすい分量)

  • 生アーモンド…150g
  • 水…300ml(この量を増やすともっとサラサラとした薄めのアーモンドミルクになります。)
  • 水…アーモンドを浸す用

手順

  1. 生アーモンドを水に浸して一晩置く(12時間以上)。
  2. ①をザルにあけ、軽くすすぎ、水分をしっかり切る。
  3. ②と分量の水を入れ、ミキサーにかける。
  4. ③をガーゼやふきんで濾し、ギュッと絞り切って完成。
man wringing milk from cheesecloth
Laurie Castelli//Getty Images

アーモンドミルクのおすすめの使い方

アーモンドミルクはただ飲むだけではなく、アレンジを加えてデザート作りに使えます。

また、ほんのり甘味もありながらしょっぱいものとの相性も良いので、リゾットやカレー、シチュー、坦々麺、鍋、グラタンやドリア、スープ、フレンチトーストなど、幅広く料理に使うことができます。

まずは難しく考えず、牛乳や豆乳の代わりとしてレシピに加えてみましょう。

特にアーモンドミルクスープは、まろやかで身体が温まる、寒い時期におすすめの調理法です。いつも通り、野菜を食べやすいサイズに切り、油を熱した鍋で炒め、水を加えて野菜が柔らかくなるまで加熱したら、アーモンドミルクを入れて馴染ませ、塩胡椒やお醤油、お味噌などで味付けをしたら完成です。


植物性ミルクの新しい定番として地位を確立してきているアーモンドミルク。ただ牛乳の代替になるだけでなく、健康効果や美容効果も期待できるほか、家庭で簡単に作ることができたり、色々な場面で使いやすいため、これからより浸透していきそうです。気になる効果がある方はぜひこの機会に取り入れてみてはいかがでしょうか。