長年にわたって非常に多くの物議を醸してきた“イェ(※改名し、現在の法律上の本名は「Ye」)”ことカニエ・ウェスト。そのすべてを把握するのは難しいが、ここ最近、オンライン上で反ユダヤ主義発言を繰り返しており、自身のTwitterとInstagramのアカウントに制限がかけられるなど、その言動が大きな問題となっている。

そしてこれらの発言は大きな反発を生み、いよいよカニエを“業界追放”すべきではないかとの議論がなされている。

彼は10月初めにも、キャンディス・オーウェンズ(保守派の作家・政治評論家で、度々その発言で議論を呼んできたことで有名な人物)と一緒に「White Lives Matter(白人の命は大切)」と書かれたシャツを着用して非難された。

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いっぽうで、カニエが双極性障害と診断されているという事実も、この問題を複雑にしている。彼は2016年に初めて、自身がこの病気を患っていることを明かした。精神疾患が深刻な場合、行動にも影響を及ぼすことは誰もが知るところだが、過去数年間、多くのブランドやセレブは、彼の暴言や政治的な爆弾発言がこの病気に起因しているのかどうかについて、頭を悩ませてきた。

しかし、カニエに近い人物たちが、次々と彼と縁を切ることを表明しているなか、いよいよ彼は見限られたのだろうか?

最近の反ユダヤ主義発言と、それに続く契約解除の脅威を踏まえると、カニエは自らの行動が自分自身に影響を与えないと思っているようで、彼との契約を打ち切る企業についても軽く見ているようだ。

4人の子を持つ父でもある彼は『TMZ』のインタビューで、何においても自分が“追放”されることはないと話し、もしそうだとしても彼の発言によるものではなく、外部によるものだと主張した。とはいえ、彼の不適切な行動や発言に、多くの人がついに我慢の限界を迎えている。

カニエとの関係解消を表明した企業やセレブのリスト

バレンシアガ

ファッションブランドの「バレンシアガ」は、これまで有益なパートナーシップを築いてきたカニエとの関係を解消した。カニエは「バレンシアガ」の決断についてこう語っている。

「私は金を失ったわけではない。『バレンシアガ』のサイトから削除された日が、私にとって最も自由な日のひとつだった」

アディダス

アディダス カニエ 関係解消
Jonathan Leibson//Getty Images
「アディダス」との発表会にて。2016年撮影。

カニエとのパートナーシップを再考すべきだと世間から圧力をかけられていた「アディダス」。長い沈黙を経て、10月25日(現地時間)にカニエとのパートナーシップを直ちに終了すると発表した。

「アディダス」の声明には次のように書かれている。

「『アディダス』は反ユダヤ主義をはじめとるすヘイトスピーチを容認しません。イェ氏の最近のコメントや行動を受け入ることはできず、憎悪に満ちた危険な言動は、多様性と包括、相互尊重と公平性という当社の価値観に反しています。徹底的な見直しの結果、当社はイェ氏とのパートナーシップを直ちに解消すると決定しました。『イージー(YEEZY)』製品の生産も終了し、イェと彼の会社に対するすべての支払いを停止します。当社は『アディダス・イージー』事業を即時停止します」

クリエイティヴ・アーティスツ・エージェンシー(CAA)

カニエが所属しているタレントエージェンシー、クリエイティヴ・アーティスツ・エージェンシー(CAA)は、この1カ月のあいだに彼との契約を打ち切ったと発表した。このほか、映像制作会社のMRCも、最近完成した彼のドキュメンタリーを公開しないと発表した。

カニエの弁護士たち

カニエ 弁護士
Kent Nishimura//Getty Images
ジョニー・デップの弁護も担当したカミーユ・バスケス弁護士。

続いて、ジョニー・デップをクライアントに持つことでも知られるカミーユ・バスケス弁護士も、10月24日(現地時間)付でカニエとの関係を打ち切った。カニエは最近、ビジネス上の問題を処理するためにバスケス氏を雇っていたが、『TMZ』によると、先ごろ彼の反ユダヤ主義発言が問題となった際、彼女はイェのような人物と仕事をする気はないと自身が所属する事務所に伝えたそう。

『TMZ』はさらに、その法律事務所は、カニエが公に反ユダヤ主義発言を撤回すれば、彼との仕事を継続することを望んでいたと報じた。しかしカニエはこれを拒否し、自ら同事務所との関係を解除したと伝えられている。

デフ・ジャム

レコードレーベル「デフ・ジャム」は、カニエが運営する同社傘下の「グッド・ミュージック(G.O.O.D. Music)」との関係を解消したと報じられている。

『ヴォーグ』のアナ・ウィンター

カニエ アナ・ウィンター
Stefanie Keenan//Getty Images
アナ・ウィンターとカニエ。2015年撮影。

セレブたちのあいだでも、カニエの言動は許し難いと考え、彼をボイコットする動きが相次いでいる。かつて、トップブランドのファッションショーで肩を並べて写真に写っていた米『ヴォーグ』誌の編集長、アナ・ウィンターも、カニエとの関係を断つと決めたそう。カニエとアナは10年来の友人だったが、アナの代理人は『ページ・シックス』に対し、アナはカニエと再び仕事をするつもりはないと語ったそう。

キム・カーダシアン

カニエ キム
Marc Piasecki//Getty Images
カニエとキム。2020年撮影。

カニエと8年間結婚生活を送り、4人の子どもをもうけたキム・カーダシアンも、元夫であるカニエの言動についてTwitterで強く非難した。さらに自身のInstagramのストーリーでも同様のコメントをしている。

「ヘイトスピーチは決して許されることでも、正当化できるものでもありません。私はユダヤ人コミュニティとともに立ち、彼らに対する恐ろしい暴力や憎悪に満ちた発言を直ちに終わらせるよう呼びかけます」

その他多くのセレブたち

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反ユダヤ主義発言を受けて、カニエを真っ先に批判した著名人の1人が、ドラマ『フレンズ』で知られる俳優のデヴィッド・シュワイマー。彼は10月11日に、Instagramで次のようなコメントを投稿した。

「カニエ・ウェストが精神的に病んでいるかどうかは別として、彼が偏った考えを持つ人であることに、疑いの余地はない。彼のヘイトスピーチは、ユダヤ人に対する暴力を呼びかけている。もし誰かが、彼の言葉を別の方法で解釈し、擁護するならば、その人物は人種差別主義者だ。カニエのように影響力のある人物が発した、対立的で無知で反ユダヤ主義的な発言を非難しなければ、私たちは共犯者になってしまう。沈黙は共犯だ」

このほかにも、クロエ・カーダシアン、リース・ウィザースプーン、エイミー・シューマーといったセレブたちが、カニエの中傷的なコメントを受けて、ユダヤ人と連帯する意向を示した。

また、ジェイミー・リー・カーティス、エリック・アンドレ、フローレンス・ピュー、ジョシュ・ギャッド、グウィネス・パルトロー、ケンダル・ジェンナー、ルビー・ローズ、チェルシー・ハンドラーなど、数多くの一流スターたちが、カニエと反ユダヤ主義を非難する意志を表明している。

Translation: Masayo Fukaya From COSMOPOLITAN UK