かつてバージンだったアナタにも、いま現在バージンのアナタにも観てほしい! ひと味違う珠玉の「ロスト・バージン映画」8本を、コスモ編集部が厳選紹介。笑えて、泣けて、考えさせられる。そんな映画をお探しなら…♡

人生に1度だけの初体験。セックスは特別なコミュニケーションだからこそ、人間の本質があふれ出てしまうことも…! 第3弾では、ティーンエイジャーのロスト・バージン映画『早熟のアイオワ』と『17歳』の2本から、性の魅力と危うさを見つめて。 →そのほかの「ロスト・バージン映画図鑑」はこちら。

セックスになんて、憧れるワケが無いのに/『早熟のアイオワ』

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Aflo

STORY

夜な夜なポーカー賭博が繰り広げられ、セックスを求め男たちが訪れるポーカーハウス。そこで暮らす14歳の少女アグネスは、売春婦の母親から「そろそろ年頃」と客を取るように持ちかけられ…。暗澹たる状況の中で、幼い2人の妹を守ろうと必死にもがくアグネスの生き様が描かれる。

■セックスを嫌悪したまま、恋をした

売春婦の母を持ち、幼い頃からセックスを求める男たちを目の当たりにしてきたアグネス。母親を嫌悪しながらも、まだ14歳のアグネスには今の生活から逃げ出す術もなく…。そんな生活にあって、セックスになんて嫌悪感こそあれど、憧れを抱く訳ナシ! それでも、やがてアグネスの中の女が目覚め、とある男に心を奪われてしまう。その相手はなんと母親のヒモで、売春のブローカー! 母のことは殴るけれど、アグネスには優しくキスをする彼…。いろんな男たちを見てきたけれど、「彼だけは特別」とアグネスは思い始めてしまう。…そんなはずはないのに。

「あんな男、やめときなよ」なんて言われても、女としての自分に抗えない悲しさ。一度でも恋をしたことのある人なら、アグネスのこのどうしようもなく惹きつけられる情動に共感できる部分があるのでは? アグネスも結局、男の唇に抗えなかった。その日、優しく甘いキスの後に突然、男の大きな手でアグネスの口が塞がれる。そして「こんなはずじゃない、ふざけるな」という叫びも空しく、彼を受け入れさせられる。アグネスの叫びは、誰にも届かない。

■ツラいだけじゃなく、ちゃんと希望もある

実はこの作品、今やオスカー女優のジェニファー・ローレンスの長編初主演作。セックスを軽蔑しながらも、自らの中に芽生えた"女"と向き合っていく葛藤を見事に演じ切り、この頃から名女優の貫禄を感じさせる。また、妹役には当時10歳、「キック・アス」出演前のクロエ・グレース・モレッツがキャスティングされているのも意外なところ。天使のような笑顔は、映画の中では爽やかな清涼剤だ。

ツラい境遇に生まれた少女の物語だが、悲しいだけのストーリーではない。本作は監督・脚本を務めた女優ロリ・ペティの自伝的作品なのだが、ツラいロスト・バージンを乗り越えた先の希望もちゃんと感じられる作品になっている。涙に濡れた夜のあとのアグネスの強さや、彼女の心の支えになった姉妹の仲の良い姿には心に温かいものが広がるだろう。…とはいえ、甘い言葉と甘いキスにはご用心。

彼女は求め続け、どうしようもなく女だった/『17歳』

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Aflo

STORY

パリの名門高校に通うイザベル。彼女は、バカンスで訪れたリゾート地で出会った青年と、はじめての経験を済ませた。だが恋は始まらず、青年にそっけない態度を取るイザベル。バカンスを終えてパリに戻ったイザベルは、年齢を偽ってSNSで知り合った男たちと売春を繰り返すようになる。ところがある日、常連客の男が行為中に亡くなってしまい…。

■醒めたロスト・バージン

17歳のイザベルは家柄も育ちも良く、名門と呼ばれる高校に通っている"完璧女子"。ごく普通にしていれば、誰もが羨むような青春を送れるはずの存在だ。そんなイザベルの初体験はありがちなものかもしれない。バカンス先で知り合った青年と意気投合して、体を重ねる。当然、青年はもっと親密になりたいとアプローチするが、イザベルはスルリとかわして、涙ひとつ流すことなくバカンスを終える

だが初体験が、彼女の中の何かを変えた。自ら売春婦としてホームページで売り込み、さまざまなシチュエーションでエロティックなセックスをしていくイザベル。だが、楽しんでいる様子もなく淡々とお金を手にして、「ママには内緒」とは言うものの、売春に対する背徳も感じられない。どこか「セックスなんて、こんなもの」といった何か諦めに近いものを感じさせる。

■思春期の危うさの中で、女であることをまっとうする

イザベルのすごいところは、自分の置かれた状況を「私の人生だから」と、なぜか覚悟を決めているところ。そして彼女なりの結論をもって、思春期ならではの危うさで性に暴走している。その姿は、セックスだけでは満足できない何かを抱えたまま、女としての自分を全うしているようにも見える。言葉で説明できない何かを、セックスで埋めたくなる。そんなイザベルは、どうしようもないほど"女"だ。

監督のフランソワ・オゾンは、数々の作品で女の生き様を描き続けている人物。フランス映画らしくイザベルの本心は明らかにされないが、何気ないセリフの中にそのヒントが隠されている。でも、理解しがたい女心の複雑さには、打ちひしがれるばかり。だけど「それも女」なのだと、この作品は語りかけてくる。



「覚悟を決めた女は美しい」

『早熟のアイオワ』のアグネスも、『17歳』のイザベルも、きっと理想と違ったロスト・バージン。女だからこそ揺れ動くこともあるけれど、自分の中の"女"に折り合いをつけ、2人は前へと進んでいく。覚悟を決めた女はいつも美しい。2人のヒロインのロスト・バージン・ストーリーには、女の美しさのヒントがちりばめられているのではないだろうか。