日本はもちろん世界中で愛されてきたディズニー映画『リトル・マーメイド』。現在アメリカでは、この映画が元になったミュージカルをツアー形式で上演中! そんな中、主役のアリエルを演じている女優が、その外見の違いを理由にバッシングの標的に…。
ディズニーが映画で描いたアリエルは、白い肌に青い目、そして赤毛が印象的。そんな役どころに抜擢されたのは、ミュージカル界で活躍する日系アメリカ人女優のダイアナ・ヒューイー。ネガティブな批判や意見が殺到したSNSに対し、ダイアナはもちろん、彼女のキャスティングに携わった人々がコメントを発表し話題になっている。
同ミュージカルの初演に選ばれたのは、シアトルの「5th Avenue Theatre」という劇場。過去にも人種に関係なくキャスティングを行ってきたことで知られている。また、監督グレン・カサール氏をはじめキャスティングに携わった人々は、日系アメリカ人であるダイアナをアリエルとしてキャスティングしたことについて誇りを持っているよう。
「彼女は素晴らしい女優で、年齢だって合っている。何より、他の人とは比べものにならないくらいの歌手です。50人ほどオーディションをしましたが、彼女が最も優秀でした。そんな彼女をキャスティングすることに、何の問題があるんでしょうか」
「今回のショーでは、カニのセバスチャンをアフリカ系アメリカ人が演じています。そもそもカニって、アフリカ系アメリカ人なんですか? あくまでもこのミュージカルは、アニメーションのリメイクなんですよ」
実在する人物ならまだしも、ダイアナが演じているのは童話の主人公である人魚姫。とはいえ、オーディションに呼ばれた時には、ダイアナ自身すら「誰の役? キャスティングの人たちは私がアジア人ってこと知ってるの?」と思ったそう。
「オーディションの時、私自身ですらアジア人だからキャスティングされるはずがないって思い込んでいたの。それって、すごく悲しいことよね。肌の色や目の形などを理由に、自分に何かが足りないと思うべきじゃないわ」
そんなダイアナの葛藤を知り、本場ブロードウェイでアリエルを演じたシエラ・ボーゲスが応援のツイートを届けた。
主題歌「Part Of Your World」の歌詞の一部にある"Ready to stand"を引用し、ダイアナを応援したシエラ。「ダイアナを支持するわ。アリエルの光を輝かせ続けて! あなたは完璧よ!」
また、ダイアナ自身も今では次の世代につなげるために闘っているそう。
はじめは「アジア系アメリカ人だから、観客に好かれるために普通以上に努力をしなきゃいけないと思ってたの」と明かしたダイアナ。さらに「(アメリカの)南側の地域へ移動するにつれ、差別はひどくなっていった」とも。そんな時に、とあるアジア系の養子の女の子とその母親との出会いが、彼女にダイバーシティの大切さを気づかせたという。
「あるお母さんが私のところへ来て、『あなたがアリエルを演じると知り、娘に見せられると思うと涙が止まらなかったわ』と話してくれて。アジア人があまりいない地域で小さなアジア系の女の子と出会って、ダイバーシティや偏見を持たない心、平等性、そしてそれらを発信することがどれだけ大切なのかを再認識したの。誰かが矢面に立たなければならないのであれば、私が引き受けるわ」
「アジア系アメリカ人の私が各地域でアリエルを演じることで、今後何かのオーディションを受けようと考える人に『才能と努力があればキャスティングされる』と知ってもらいたいの。私は世界から人種差別や偏見がなくなると信じたい。全員が完全に平等な扱いを受ける世界になる…と。そのために、まずは芸術の世界から始めましょう」
プロの演者として、そして世界で活躍するアジア人としての覚悟と誇りを見せつけた発言に触発され、応援メッセージで溢れかえるダイアナのSNS。彼女と理解ある劇団の行動が、また一歩、世界を平等へと導いていると信じたい。
※キャスティングに関する情報について、一部表現を修正致しました(2017年8月29日)