自分の人生は、自分でしか生きられないし、どう楽しんでいけるかは、毎日の選択と気持ち次第。どんな生き方だって、自分で選んできている人は、いつだって魅力的に見えるし、自然と心惹かれるもの。コスモポリタン日本版では、人生を謳歌しているさまざまな女性の生き方を紹介していきます。

ブラウンシュガーファースト代表荻野みどりさん

ココナッツオイルブームの火付け役であり、原宿に1号店となるスイーツショップ「BROWN SUGAR 1ST.」をオープンさせた、食品会社「ブラウンシュガーファースト」代表の荻野みどりさん。日本のオーガニック業界を引っ張る存在でもある荻野さんの生き方をフォーカス!

-突然ですが、ココナッツオイルがここまでのブームになった要因は?

ココナッツオイルの使い方をひとつに絞ったことがブームにつながった

ここまで大きくなるとは思っていませんでしたが、ある程度のブームは作りにいきました。出産を機に、"子供が安心して食べられるおやつ"を販売するビジネスを思い立ち、当初はクッキーやマフィンを作っていました。その材料にココナッツオイルを使っていたのです。当時は、海外のセレブたちは愛用しているものでしたが、日本には浸透していませんでしたし、確立されたジャンルもありませんでしたが、調べてみたら、英語で学術論文もいっぱい出て、医学的にも証明されていることが分かり、火をつければ、ヒットにつながるのではないかと思ったんです。バターの代わりになる油で、トランス脂肪酸フリーで、オーガニックで…当時の馴染みがないところで、現在の看板商品「有機エキストラバージンココナッツオイル」の販売を始めることにしました。

ただ、健康志向の人だけが買うもの、という流れにはしたくなくて、一般的なスーパーにも並べるんだと決めて、本格的に動き出しました。

ブームになった勝因は、パッケージを含めて、商品へのこだわりもありますが、一番は、使い方を明確にしたことだと思っています。

ココナッツオイルは、いいポイントが多すぎるんです。そのいいところを挙げすぎたら、バイヤーさんが使い方に迷うのではないかと思いました。バイヤーさんが迷うと、最終的に購入してくれるお客様も迷ってしまう。だから、バイヤーさんの中ですと~んと落ちる使い方だけをアピールしたんです。それが、"ココナッツオイルはバター代わりにパンを塗るもの"という使い方です。

そして、成分による利点も絞り、トランス脂肪酸フリー、免疫力を高めるラウリン酸の高含有という2点だけをアピールしました。

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-ブームに火をつける方法は、どう学んだのですか?

今まで経験したたすべての仕事が礎になっている

高校生の時からファッションが好きで、地元・福岡のアパレル系の短大に通いながらセレクトショップでアルバイトをしていました。アパレルの世界では、学歴は関係ないと思い、短大を中退し、19歳の頃からフルタイムで正社員販売員として働き出しました。

その時に、流行の先読みの仕方、雑誌の見方、コミュニケーションの取り方など、商売に必要な基礎力を身につけたと思います。

上京するきっかけになったのは、バイヤーとして東京へ出張に来る機会も増え、もっと世の中を広く知りたいと思ったから。

上京してからは、派遣会社に登録をして、アパレルに限らず、いろんな仕事を経験しました。それは、なにか勉強したいことがあると、学校で学ぶより、現場で学びたいと思っていたから。パソコンを勉強したいと思って、パソコンの販売を始めたり、当時、外国人も住んでいるシェアハウスで暮らしていたので、英語は独学にプラスして、彼らと会話することで身につけました。ヨガスタジオの立ち上げ、ドイツの医療機器メーカーのマネージャー秘書など、今までに経験した職種を職務経歴書にまとめると34ページにわたるぐらい。

20代のうちはいろいろ経験してトライ&エラーしながら成長する時期だと思うんです。例えば、30代で転職すると、ある程度のキャリアある即戦力と判断されて、会社は、その人を育てようという体制にはならない。でも20代は、まだ成長の途中と判断されることが多く、育てようと思ってもらえる機会が多いと思います。特に、何がやりたいのか見つかっていない人は、いろんな職種をその時その時全力で経験し、吸収して、「アシスタントレベルのことはできます!」くらいのスキルを身につけるのもひとつの手段だと思うんです。いろんな会社で、いろんな仕事に携わってみると、世の中を俯瞰して見れるようになる。そういった点では、派遣会社で働けたことはよかったと思っています。

もし、「自分探しの旅に出かけてくる」といって、海外へ行こうとする人がいたら、私は、「派遣会社で働いたほうが、自分が探せると思うよ」と伝えたいですね。それぐらい、ジャンル違いの仕事をたくさん経験したことが、今の仕事につながっていると感じています。

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-いつも前向きに働ける秘訣は?

ワクワクすることを選択していく

大学への進学を考えていた時、第一希望はニューヨークでしたが反対され、東京の大学でさえも反対されるぐらい、両親が厳しかったんです。福岡の土地柄なのか、女性である私が知識をつけて出世することは、まったく求められていなかったですし、2223歳で結婚するのが女性としての私の幸せだと言われていました。20歳を超えて上京をする時も、家出でした(笑)。その反動からくる、ハングリー精神がベースにあると思います。

とはいえ、卑屈になっていた時期もありますよ。

アパレル時代は、「学歴は必要ない!」と思いましたけど、ある日、生涯年収を上げるにはホワイトカラーになる必要があると考えました。でも、ホワイトカラーの職種に就こうとすればするほど、学歴の壁が立ちはだかるんです。だったら学歴をつけようと、働きながら大学入試を受けて、大学に通ったりもしましたが、学費も家賃も自分で払っていたので、続けるのが難しくて中退しちゃって。でも、また学歴の壁にぶつかるから、違う大学を受けて通ってみては中退し…を4校分も繰り返していたんです。いつの間にか学歴コンプレックスでもがいていました。でも、ある日、友達に「コンプレックスはネタにして笑い飛ばせ」って言われて。「あ、コンプレックスって克服しなくてもいいんだ」と思えたんです。

そんな風に思っていた時期を経て今、仕事もプライベートも大切にしているのは、ワクワクするほうを選ぶということ。私は、どんな時でもワクワクしたいんです。ワクワクしているとがんばれるし、まわりの人もつられて笑顔になる。

ココナッツオイルの取り扱いを始めた時、子どもをおんぶしながら、国連大学の広場で毎週末行われている『ファーマーズマーケット』で販売していたのですが、その姿を見て、「大変そうだね。大丈夫?」と言われたことがありました。だけど、その時の私はその先の「今」をイメージしてとてもワクワクしていたんです。

あともう1つの幸せに生きるコツは、必ずしもステップアップすることではないということ。上を目指すのではなく、今、自分がいるところでどれだけ心からリラックスして心豊かに生きられるかが大切だと思っています。

今は会社を経営していますが、それがすべてなくなったとしても、私は、子どもと一緒に暮らすには、最低これぐらいの稼ぎがあれば心豊かに過ごせるという最低限を経験から知っています。それは、都心でひとり暮らしをしていた時、お金がないけど幸せな暮らしを経験したことが強みになっているのですが、最低限を知っているからこそ、新しいことへの挑戦もビビらないで進んでいけますし、捨て身になれるんですよね。一度、自分の最低限な暮らしを考えて見てください。今、自分が立っている場所が、よりクリアに認識でき執着が手放せてふっと肩が軽くなりますよ。


荻野さん曰く、「会社という存在は、自分の生きたい社会、私の場合、子どもの未来の社会を形づくるためのツールのひとつ」。どんな人生にしたいのか、自分が幸せだと思うことを明確化することで、今必要なこと、するべき努力が見えてくるのかもしれない。

【荻野さんから学んだ仕事をより充実させるためのヒント】

・コンプレックスは克服しなくてもいい

・やりたいことが見つかるまではいろんな職種を経験してみる

・上に憧れたり、下に怖がったりせず、今立っている場所を大切にする

・ワクワクすることを選択する