自分の人生は、自分でしか生きられないし、どう楽しんでいけるかは、毎日の選択と気持ち次第。どんな生き方だって、自分で選んできている人は、いつだって魅力的に見えるし、自然と心惹かれるもの。コスモポリタン日本版では、人生を謳歌しているさまざまな女性の生き方を紹介していきます。

ティナ・キファさん

Toutes à l’école」創設者

パリのアパルトマンの一室を使用したオフィス。愛犬を連れて「ボンジュール!」とハツラツな挨拶をして迎えてくれたのが、今回の取材先のティナ・キファさん。カンヌ出身のティナさんは、南仏の太陽のように周囲を明るくする存在。

そんな彼女は10代と20代で『コスモポリタン フランス版』編集者、30代で人気テレビ番組の司会者、40代で『マリクレール フランス版』編集長を経て、貧困地区の女の子に教育を提供するアソシエーションToutes à l’écol(トゥテザ・レコール)を創設。現在は、カンボジアに女子のための学校を開き、1335の生徒たちへの教育事業に専念しています。今年で60歳を迎えるティナさんの生き方は、まさに「自主的に動くことで、すべてが手に入る!」と勇気を与えてくれる。そんな彼女のこれまでの道のりにフォーカスします!

カリスマ女性編集長から、50代で「1335人の女の子の母」へ転身!
Jean-François Mousseau

――ティナさんは、18歳の頃にコスモポリタン フランス版でキャリアをスタートしたそうですね。

70年代後半に、インターンシップからキャリアをスタートさせました。

オフィスでは、ジャーナリストとしての才能とカリスマ性に溢れる先輩たちに囲まれ、とても刺激的な環境でした。それに当時のコスモは、攻撃的ではなくユーモアに富む、質の高い記事でフェミニズムをサポートし、フランス社会において重要な役割を果たしていました。

雑用から始めたのですが、たまたま編集長とデスクが近く、一生懸命働いていたらすぐに記事を書かせてもらえるようになりました。その後、心理学や社会問題などの特集記事も書かせてもらえるようになって。コスモポリタンでは8年間働きましたが、後の人生で活かすことのできる多くの学びを得ました。

――その後、30代で人気テレビ番組の司会者へと転身、40代でマリクレール フランス版編集長を務めています。その経緯を教えてください。

まず、テレビ番組の脚本を書き始めました。その後、女性ジャーナリストたちが出演するテレビ番組への出演オファーがあり、テレビに出ることになりました。
この番組は人気で他の出演オファーも来るようになり、社会問題の討論番組などにも出演しました。でも、忙しくて子供になかなか会えないライフスタイルを変えたかったことと、私はテレビよりも雑誌のほうが合っていると改めて感じたので、雑誌の仕事に戻ることにしました。

そこで、モードや美容などとともに社会問題やニュースを取り扱う女性誌を立ち上げることに。この雑誌は成功したのですが、数年後にマリクレール フランス版からオファーがあり、編集長を務めることになりました。

――その後、カンボジアに女子のための学校を開校します。なぜ、ジャーナリストから教育に携わるようになったのですか?

マリクレールでの仕事が大好きで、10年間在籍しました。そんなある日、取材でカンボジアに行ったことで、私の人生の「新たな冒険」が始まることに…。

カンボジアに着くと、孤児、売春をする女の子たちの多さに、ただただ愕然としました――。孤児院を訪れたのですが、とても悲しそうに一人でベンチに座っている3歳の女の子が目に留まって。

話しかけると、目を合わせることなく、私にしがみつきました。

フランスに帰ってもこの子を忘れることができませんでした。そうしているうちに孤児院から電話があり、彼女がB型肝炎に感染していることを知って…。そこで、フランスで治療させるために彼女を探しにカンボジアにもう一度訪れ、フランスで里親になることにしました。

私はすでに自分の子どもが4人いたのですが、なぜかこの小さな女の子に強い感情を感じて。「この子のような少女たちを、助けないといけない!」という莫大なエネルギーが自分の中で湧き上がりました。

――実際に、どのようにカンボジアに学校を建てたのですか?

カンボジアを訪れたときに、ある女性から相談を受けて。その人は「ここで、女の子を教育することは社会を変えること。女の子が教育を受けることで、売春ではなく、他の生きる道を見つけることができる」と熱心に語ってくれました。そこで学校運営のために、広大な土地を貸してくれることになりました。

マリクレールに戻ると早速始動し、「世界中の女の子の教育のために、大規模な計画を立てるわよ!」とチームに宣言。その計画とは、「バラの花を売ったお金で、世界中の女の子を学校に通わせる」ということ。

あるファッションブランドは4万本のバラを前払いで買ってくれるなど、この計画は大成功。約1年でカンボジアのプノンペン近郊に学校「Happy Chandara(ハッピー・シャンダラ)」を建設し、92人の生徒を迎えました。その後、私もちょうど50歳を迎え、マリクレールも10年働いたタイミングで、ジャーナリストの仕事を辞めて学校の事業に専念することにしました。

カンボジアでの女の子の教育は、とても大切。彼女たちが教育を受けることで、売春ではなく、医者、教師、弁護士など…将来の可能性が広がるのです。

開校から10年、現在では1335人の生徒が学校に通い、小学校、中学、高校、ロレアル財団が取り組む美容師になるための職業訓練センターなどで授業やトレーニングを受けています。

カリスマ女性編集長から、50代で「1335人の女の子の母」へ転身!
Jean-François Mousseau

――教育をすることで、一人一人の人生と社会全体が変わる――。教育に携わる中で、どんなことを感じられていますか。

発展途上国の子どもたちは、とても勉強熱心で学校に行く機会に心から感謝している生徒が多いです。カンボジアの学校で優秀な学生二人が、フランスで現在勉強しているのですが、英語を勉強したいと言うのでロンドン留学をサポートしてあげると涙して喜んでくれて…! 一方で、先進国ではスマートフォンなどから得る情報の多さに麻痺し、子どもたちが「本物の感情」や「強い意欲」を失っている傾向があるように感じます。

新しいエリートは、貧困地区から育てるべきだと思います。勉強への意欲が高く、本物の「人生」を知っている。こうした人が上に立ったほうが、社会を変えやすいのです。

そういった意味で、このプログラムは、他の貧困地域にも広がっていってほしいと思っています。

――ティナさんは人生で多くのことを達成されていますが、5児の母でもあります。女性が「母」と「キャリア」を両立するための、アドバイスをお願いします。

最初の子どもを産んだのは24歳。続けて27歳、37歳、41歳で出産、そして45歳で里親になりました。

女性に伝えたいことは「罪悪感を感じないでほしい」ということ。仕事が忙しくて家事ができない、子どもや夫と一緒に過ごせない…なんて、すべてのことが同時にできないのは当然。フランスでは今、男性が育児、家事を手伝う家庭が多いですが、この状況を手に入れるまでは「闘い」がありました。 この状況が手に入ったのは、女性たちが「私は自分の人生を生きる!」と決めたからです。

それに社会生活を楽しんでイキイキとしている母の姿を見るほうが、子どもにとっても良い刺激になります。

――とても前向きで明るいティナさん。ポジティブに多くのことを挑戦し続ける秘訣は?

コスモポリタンは私にとって、「ジャーナリズムの学校、そして人生の学校」だった

一番最初に働いたコスモポリタンでの経験が、私の人生に大きな影響を残しました。

私が働いていた当時のコスモポリタンのモットーが、「YOU CAN DO IT!(あなたなら、できる!)」。そんな雑誌で、「強い意欲を持つこと、被害者意識を持ってはダメ、前に進む!」といったメッセージを記事で発信し続けていたことが、今の私を形成しました。コスモポリタンは私にとって、まさに「ジャーナリズムの学校、そして人生の学校」でした。

それに、私はお金や地位における「成功」より、人間性が溢れる活動にエネルギーを注ぐほうが満足感を感じます。だから、私は今とっても幸せです!

1335人の生徒たち、そして未来の生徒たちの人生を大きく変えることができる。カンボジアの学校開校から10年経ち、一番はじめに入学した生徒は現在高校生。あちこちから、生徒たちの嬉しいニュースが入ってくる。これほど達成感を感じる報酬などありませんね!

カリスマ女性編集長から、50代で「1300人の女の子の母」へ転身!
Julianne Rose


Fearless(フィアレス)に、大胆に「自分が心から信じる道」へ突き進むことで、人生を謳歌するティナさん。そんなティナさんが創設したカンボジアの学校で学ぶ女の子たちも、きっと社会を明るくするカリスマ性のある女性に育っていくはず。

ティナさんが取材中に、力強く語った言葉が「人生で多くのことを諦めず、絶対に“待たない”で挑戦するべき」ということ。それを一貫して実現してきたからこそ、年齢を重ねるにつれ、周囲の人にさらに勇気を与え続ける存在になれるのかもしれません!

【ティナさんから学んだ「人生で多くの夢を実現する」秘訣】

・若い頃に「質の高い仕事」と、「尊敬する人」に出会うことで、その後の人生に影響する

・新しい経験へと動けば動くほど、新しい人と話せば話すほど、未来が明かるくなる

・目の前のことに一生懸命集中して成果を出せば、次の新しいステップが待っている