アラブ首長国連邦のドバイを本拠とする航空会社「エミレーツ航空」の、客室乗務員候補の採用に最後まで残ったというマディソン・ケヴァルティーンさん。TikTokの動画で8月30日(現地時間)、「過去の摂食障害を明かしたら、内定を取り消された」と明かしました。これを受け、航空会社の厳しい基準にさまざまな意見が寄せられました。

健康診断書を提出するよう求められ…

2023年の「ミス・ユニバース」カナダ代表に選ばれたマディソンさん。過去に摂食障害に苦しんだことがある彼女ですが、オープンに語ることで同じ悩みを持つ人を勇気づけられたら、と思いを込めて発信をしています。

エミレーツ航空の新人研修に応募したマディソンさんは、採用に向かって順調に話が進んでいたそう。そして採用前の最終調整として、健康診断などを含む書類を提出するよう求められたとTikTokの動画で語っています。

これはtiktokの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
「非常に細かく、個人的なことに立ち入った項目も含んだ健康診断書を提出するようお願いされました。その文書にはすごく個人的な健康の情報や、仕事をする上で必要な能力とは何の関係もない多くのことを書かなければいけませんでした」
「その中の一つの質問が、『かつて摂食障害で苦しんだことがありますか』というもの。皆さんの中には知っている方もいるかもしれませんが、私はミスコン参加者で、過去に苦しんだ摂食障害についての啓発やエンパワメントに活動の重きをおいています」

そうした信念をもつマディソンさんは、 書類にも摂食障害のことを正直に書いたと言います。そして書類提出から数日後、同航空会社から「事前条件を満たしていない」という理由で不採用の連絡がきたことを明かしました。

「偏見をなくしたい」

この航空会社の採用のリアルを語った動画は、10万回近く再生される結果に。「自己開示はリスクフリーであるべき」といった声のみならず、マディソンさんが正直に事実を伝えたことに賞賛の声があがりました。

こういった厳しい採用条件を目の当たりにしたマディソンさんは、このことをきっかけにますます摂食障害への偏見をなくしたいと思ったそう。

「書類を出す前と出した後で変わったものは、わたしが摂食障害を患った過去があるかどうかということだけ。客室乗務員の仕事に就くのに何の関係もないことが原因となるなんて、差別のような待遇にうんざりしています」
「ますます、メンタルヘルスや摂食障害で悩むことが、もっと“当たり前のことなんだ”と伝えていくべきなんだと強く感じます」

激しい“体型管理”も

INSIDER>によると、エミレーツ航空には客室乗務員が航空会社の基準を満たしていることを確認するために、イメージや身だしなみチェックをする専門の担当者が存在するとのこと。

同航空会社の元CAであるカーラ・ベイソンさんは同メディアに対し、「見た目や制服の厳しい基準だけでなく、体型に関する厳しい管理もあった」と告白。 内輪では、この担当者は“体重ポリス”と呼ばれていたとも言います。“ふさわしい”体型でない人はこの担当者から直接忠告をうけるほか、仲間内から注意されることがあったと明かしました。

一般的に体重制限を採用基準に含む航空会社は少なくないものの、それは安全性を考慮してのことだとされているそう。<NEW YORK POST>が報じたところによると、今年6月に出勤停止などの罰則を伴う厳しい体重制限を従業員に課した中国の航空会社は、その健康を害しかねない実態に多くの非難が集まったと言います。

なお日本では、厚生労働省が公正な採用選考に対するガイドラインのなかで「応募者の適正と能力を判断する上で必要のない事項を把握する可能性があり、結果として、職業差別につながるおそれがあります」と記載。採用選考時の健康診断を実施することや、健康診断書の提出を義務づけしていません。

運転・配送業務や食品関連の業務において、基礎疾患やアレルギーなどにおける健康状態の確認はするべきとしています。