2001年に公開されたラブコメ映画『愛しのローズマリー』。グウィネス・パルトロウとジャック・ブラックが主演を務めたものの、ストーリーが「太い人への偏見を助長する」として、昨今では批判的な見方が強まっている作品だ。

同作でボディダブルを演じた女性アイヴィー・スニッツァーが新たなインタビューで明かしたのは、映画公開後にボディシェイミング(体型に対する誹謗中傷)の被害に遭い、それをきっかけに摂食障害に苦しんだという過去だった。

『愛しのローズマリー』のあらすじ

女性の外見に囚われすぎている男性ハル(ジャック・ブラック)は、催眠術にかかったことを機に“内面の美しさ”しか見えなくなる。そんな時に出会ったのが、太い女性であるローズマリー(グウィネス・パルトロウ)だった――。
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愛しのローズマリー (吹替版)
愛しのローズマリー (吹替版) thumnail
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「進歩的な作品」だと思っていた

グウィネスが“ファットスーツ”と呼ばれる特殊メイクを纏って演じるだけでなく、ボディダブル(代役)の俳優が演じているシーンもあった同作。そこでボディダブルを担当したアイヴィー・スニッツァーが「同作に出演したことによる影響」について、文筆家であるアメリア・テイトによるインタビューで明かしている。

映画『愛しのローズマリー』で、グウィネス・パルトロウのボディダブルを演じたアイヴィー・スニッツァー。
Getty Images
映画『愛しのローズマリー』で、グウィネス・パルトロウのボディダブルを演じたアイヴィー・スニッツァー。

当時20歳で、映画『愛しのローズマリー』のオーディションで役を射止めたアイヴィー。現在ではそのストーリーが問題視されている同作だけれど、当時のアイヴィーは「進歩的な作品」だと感じたという。

そもそも体が大きな人や太い人を主役とした恋愛映画やドラマが少なかったうえに、作品に登場したとしても、当事者の尊厳を傷つけたり偏見が強化されるような描き方をされることが多かった時代に、「ローズマリーは少なくとも“悪者”ではなく、クールで人気者で、友人も多いキャラクターだった」と振り返っている。

「オーディションでは他にも希望者がたくさんいた中で選ばれたことに、日々ワクワクしていました。映画に関われるということだけでも楽しかった。なかなかそんな機会はありませんから。出演者や制作スタッフも『私がいなければ映画が成立しない』とばかりに、私と丁重に向き合ってくれました。体を撮影するシーンでも安心して挑めました」
「当時はまだ、“ボディポジティブ”という考え方は広まっていなかったものの、私は自分らしくいられることに自信を持っていました」

また、グウィネスに演技を褒められることも多かったアイヴィー。撮影現場は楽しく、この作品に携わることで勇気づけられていたという。

『愛しのローズマリー』
©20thCentFox/Courtesy Everett Collection//Aflo
撮影現場で撮影されたグウィネス。“ファットスーツ”と呼ばれる特殊メイクを身につけている

自宅にダイエット薬を送りつけられたことも

ところが、作品の公開後は「太い人であることの“悪い”部分だけが強調されている」と感じ、それまでの自信を失ったというアイヴィー。

さらに、映画のプロモーションのために参加した雑誌インタビューで「太いことは最悪なことではない」と発言したことをきっかけに、多くの人からボディシェイミング(体型に関する誹謗中傷)を受けることに。個人情報がリークされダイエット薬を送りつけられることもあり、恐怖を感じていたという。

これらの影響から、アイヴィーは自分の体を嫌うようになり、摂食障害を患うまでに。

「太い人は、太いことをやめようとしなければいけないんだ…と思ったんです。太い人はその体を嫌っているはずだと人々から期待され、私はその通りに自分の体を嫌いました。サラダばかりを食べるようになり摂食障害にもなりましたが、それさえも自慢に思うほどでした」

過度な運動と嘔吐、厳しいカロリー制限により“痩せて”いったというアイヴィー。

「細くなりすぎて肌の色はくすんでグレーになっていたし、口を閉じていても肌の表面から歯の形が分かるほどでした。餓死しかけていたんです」

さらに、食べる量を調節するために胃の上部にバンドをつける「ラップバンド手術」を受けたところ、バンドが外れてしまい胃が捻じれるという経験も。その影響から、現在でも少量ずつしか食事をとれないのだという。

ローズマリー役を演じた後にもいくつかの映画へのオファーがあったものの、どれも“悪役”だったことや、もう有名になりたくないという気持ちから引き受けなかったアイヴィー。映画公開から約20年が経った今でも『愛しのローズマリー』を観た若い女性たちが当時の彼女のように傷ついてしまうのではと、悲しい気持ちになるという。