先日、イギリスのガーディアン紙に、タレントのベッキーさんの記事が出ていました。

日本のスターの陥落が、業界の性差別を浮き彫りに」と題され、報道されている相手の男性は普通に仕事を続けている一方で、ベッキーさんは仕事を一気に失っており、日本がいかに女性に対して不当に厳しい扱いをしているかが淡々と述べられています。

世界的に、性差別は大きな問題として取り上げられています。例えば男女で同じ職についていて、仕事の内容が全く同じであるにも関わらず女性の給料のほうが低い、という賃金格差を是正しなければいけないという声が年々高まっています。OECDが出している男女の賃金格差ランキングでは、2014年時点で日本は35カ国中33位。なんと下から3番目という残念な結果に。

また最近、公務員や警察職員などによるセクハラがニュースになっていましたが、日本の大手メディアを見ていると、本質を忘れてセクハラという言葉の定義だけをこねくり回したり、特定の判例を持ち出して「『髪を切った?』と聞いただけでもセクハラになる!」などとわざわざセンセーショナルに報じたりすることが多いように感じます。

英語だと 「sexual objectification」という言葉をよく使いますが、これは「自分と同じように相手にも人格があるということを忘れて、単に自分の性的な楽しみの対象として他人を扱うこと」。

なにがセクハラになるかは、本来は当人同士の関係性によるものであって、セクハラの定義うんぬん以前に、相手を不快にさせたり怖がらせたりすることは言わないし、やらない、というのは1人の人間として当然のこと。ただ、私自身の経験や、周りの友人たちの話を聞いていると、ほとんどの人が職場でのセクハラを経験しているんじゃないか…!? と思ってしまうぐらい、みんながエピソードのひとつやふたつ、持っていることに驚きます。

私はポッドキャストを始めるまで、外資系のPRエージェンシーでコンサルタントをしていました。自分では当然プロのコンサルタントとして席についているつもりでしたが、上司が記者に対し、「この子に合コンをセッティングさせて、可愛い子紹介しますんで」と勝手にオファーし、その話題で勝手に盛り上がっていたことがありました。私としては上司が社交辞令で言っているのか、本気で言っているのかよくわかりませんでしたが、後日上司から「あれ、ちゃんとセッティングしてね」と念を押され、そのアンプロフェッショナルぶりと失礼さに驚きつつ、自分の中でその話は聞かなかったことにしました。

またオーストリアに出張で行った際、酔ったドイツ人の同僚にいきなり「セックスしたい」と言われ、その場は「どんなジョークだよーあははー」と、無理やりジョークだったことにしてやり過ごしました。が、夜中に急にやってきて私の名前を呼びながら部屋のドアを40分ぐらい叩き続け、宿泊先がものすごく古くてドアの鍵が心もとなかったこともあり、とても怖い思いをしました。

ほかにも思い返せば色々ありましたが、どのケースも会社やマネージャーに特に報告はしませんでした。「自分が我慢すれば別にいいや」、という気持ちと、「報告してあとあと気まずくなりたくない」、という気持ちがあったと思う。

私は一時期、お悩み相談のコラムをやっていたのですが、そこにみんなが送ってきてくれるセクハラの相談でも、同じような理由で誰にも言わない、という人がたくさんいました。なかには親や彼氏に心配をかけたくないので誰にも言えない、とか、世の中には私よりもっとひどい目にあっている人もいるから私のケースはたいしたことないかも、という意見もありました。

「世の中にはもっと大変な思いをしている人がいるから、自分は文句を言える立場にないかもしれない」という考えはよく聞きますが、実際セクハラや性差別というのは相対的な問題ではありません。これは精神病などでも同じことですが、「レイプされたわけじゃないし」「自殺したいほどじゃないし」「もっと苦しんでいる人はたくさんいるし」などなど、より悪いケースを探して比較してもキリがないし解決には至りません

今振り返って客観的に考えると、私自身、性差別やセクハラを受けたときに、会社に報告すればよかった、と思います。なぜなら自分が我慢したことで、その上司はその後、ほかの女性たちにも不快な思いをさせたかもしれないから。セクハラでニュースになる事件を見ていても、実は常習犯だったというケースをよく目にします。

悪いのはセクハラしている本人だけですが、自分がしていることに気づいていない場合もあります。男女関係なく、セクハラに耐える必要はありません。もし悩んでいるなら、周りの人や会社、労働組合などに相談してみてください。匿名で相談したい場合は、都道府県にそれぞれ設置されている労働局雇用均等室でも無料で相談できます。

◆【Mamiの気になりニュース】まとめはこちらでチェック