久しぶりに会った友人や知人から、不意に「痩せた?」と聞かれたことがある人は少なくないはず。“誉め言葉”としての善意による発言だとしても、安易に体型に対して言及することが相手のボディイメージ(自分自身の中での“体”の在り方)に影響を与えてしまうことも。

そこで本記事では、「痩せた?」という質問が褒め言葉にならない理由を<グッド・ハウスキーピング> からお届け。無意識のうちに誰かにプレッシャーや影響を与えてしまうことを避けるために、体型に干渉しないコミュニケーションのヒントをお届けします。


【INDEX】


他人の体型について言及する心理

自分の身体について不満を言ったり、“コミュニケーションの一環”として、お互いの体型を比較することで友人関係などを築いた経験はありませんか? たとえば「あなたって本当に痩せてるよね。私もそれぐらい細くなりたいな」--というように、自虐的なコメントと合わせて、相手の身体の状態についてコメントをしたことがある人もいるはず。

2015年に公開された調査によると、外見や容姿の評価に重きをおいている社会では、人はこうした会話を通してお互いの共通点を見出す傾向があると言います。

これが「痩せることで美や成功・幸福といった価値を手に入れられるというダイエット文化の刷り込みによる影響」だと話すのは、西イングランド大学ブリストル校外見研究センターのフィリッパ・ディートリッヒ教授。こういった影響から、自分の身体への自己評価が低くなったり、常に自分や他人の外見を評価するようになっていくのだそう。

外見に対するすべてのコメントが、ネガティブな影響を引き起こすというわけではありません。本人の感性が反映されたファッションやヘアスタイルを褒めることもできますが、「そのトップス似合うね。痩せた?」というような表現だと、「あなたが痩せたから、その服に似合うようになった」というニュアンスを含んでしまいます。

こういった体型の変化に対するコメントは、「痩せている方が良い」という、ダイエット文化による社会的なプレッシャーを与えつづけることに繋がるのです。

作家でアクティビストのヴァージー・トーヴァーさんは、「痩せた?」という言葉が友情の始まりになると考える人がいる一方で、人の境界線を侵略する行為にもなりえると警鐘を鳴らします。

「痩せた? という質問の加害性に気がついていない人が多いように感じます。そもそも、身体というのは非常にプライベートなもの。他人の体型を比較したり言及すること自体が、無作法なのです」
woman diving into large sprinkled donut
Malte Mueller//Getty Images

“褒め言葉”のつもりでも

もし、友達が減量をしていると知っていたら、成果と言えるものを褒めるのは理にかなっていると思うかもしれません。でも、その発言が「減量するべき」という考えを強化したり、体型への不安を助長する可能性があることを覚えておきましょう。

この理由について、ボディイメージについて綴った書籍の著者でもあるジェス・ベイカーさんは、次のように解説します。

「そもそも自分の身体を変えようとしている人は、自分の身体に不安や不満、嫌悪感などを抱いている可能性があります。そのため、“痩せた”という言葉をかけられた一瞬は嬉しい気持ちになるかもしれませんが、それが同時に『体重を減らしつづけなくてはいけない』というプレッシャーに繋がる可能性があるのです」

そもそも、人の体型は一定ではありません。特に女性はホルモンの影響などで体型や体重に変化がありますし、減量後の“リバウンド”を経験する人もいるでしょう。そのため、一時的な体型の変化に対するコメントによって、「“褒められた状態”を継続しつづけようとする」という影響を与えてしまうかもしれないのです。

the crying girl looking at her reflection in the mirror through the phone anorexia, body shaming dysmorphophobia, self hate, dissatisfaction with appearance concept
Anna Kondratenko//Getty Images

自ら望んで減量していないケースも

身体についての言及は、自信や自尊心の低下にとどまらず、トラウマとしてその人に影響を与えつづけ、もっとひどい状態の引き金になることもあります。

プラスサイズモデルでボディイメージ活動家であり、自身も摂食障害に苦しんできたソーシー・ウェストさんは、「体型が変わった=自ら望んで減量している」と決めつけることの危険性について、次のように語っています。

「相手が今、どういう状態にあるのか知らないままに、コメントしている人もいるかもしれません。もしかするとその人は、もう何日も食べていないのかもしれないし、 摂食障害でなかったとしても、人生を変えるほどのショッキングな出来事によって、一時的に体重が減っているのかもしれません」

相手が摂食障害や不安障害に苦しんでいるかもしれないし、何らかの病気の治療中かもしれません。また、愛する人との別れによって深い悲しみの淵にいたり、なんらかの被害による人生におけるトラウマを経験している最中かもしれません。そんな時に体型について言及されたら、その傷をさらに深めてしまうもしれないのです。

体型について言及されたら

では、もしもあなたが体型について言及された側で、不快な思いをした場合には、どのように対処すれば良いのでしょうか。

トーヴァーさんは、「気持ちのいい質問ではないからやめてほしいと率直に伝えても良いですし、話をそらしても良いです。覚えておいてほしいのは、相手を教育する義務を無理に背負う必要はないということ」と、言います。

専門家がおすすめする回答の例は次の通り。

  • 「自分の体型のことは話したくないんだ。なにか別のことを話さない?」
  • 「何かもっと楽しいことを話そ! 最近、何か面白い映画を見た?」
  • 「ダイエットには興味がないんだよね。体型って変わるものだけど、私はそれでいいんだ」
  • 「微妙なトピックだから、できれば今は話したくないな」
  • 「実は今ストレスを抱えていて、調子が良くないんだ。そのことについて、相談してもいい?」
  • 「実は今、外見について言及しない練習をしているところなんだ。あなたも一緒に試してみない?」
  • 「よく分からない。気にしていないから」
  • 何も言わず、肩をすくめて話題を変える。

体型以外の会話で仲を深めるには

長年の習慣は、なかなか消えないもの。だからこそ、体型について言及せずに親しくなるための会話例を知っておくと参考になるはず。

  • 「時間があるときは何をして過ごしてるの?」
  • 「すごく幸せそうだね。何かあったの?」
  • 「そのバッグ、すごく素敵! どこで買ったの?」
  • 「キラキラしてる! なにか幸せなことがあった?」
  • 「一緒にいると、すごく楽しい」
  • 「音楽の趣味がいいよね。おすすめの曲を教えてほしい!」
  • 「そのタトゥー、かっこいい! 意味を聞いてもいい?」

※この翻訳は、抄訳です。
Translation:mayuko akimoto
GOOD HOUSEKEEPING