突然意識を失って反応がなくなるなどの発作を繰り返し起こす病気である、「てんかん」。原因や症状は人により様々で、いずれの年齢層でも発症しえるうえ、厚生労働省によれば「患者数は100人に1人と、誰もがかかる可能性のあるありふれた病気のひとつ」だと言います。

一方で、てんかんを持ちながら生きる当事者たちの生活には、焦点が当たりづらいという現状も。そこで本記事では、てんかんを持ちながら法律事務員として働くオリヴィア・サルヴァティさん(25歳) さんのエッセイを<コスモポリタン イギリス版>よりお届けします。

語り:オリヴィア・サルヴァティさん

突然に終わった“子ども”時代

11歳だったある日、私は母とショッピングセンターで新しい靴を試していました。すると、次の瞬間、気づけば私たちは書店の外にいたのです。どうやってそこに行ったのか、わかりませんでした。まるで時間が早送りされたみたいで、誰かが私の人生のリモコンをうっかり押してしまったかのようでした。

これは再び起こりました。そして、もう一度。その後まもなくして私は、診察室で母から、私には意識のくもりによってボーっとしていることや記憶喪失があることを説明されました。

そして専門医で検査を受けたところ、私の脳内で発作が起きていることが分かったのです。私が経験していたのは、突発的に短い時間にわたって意識を失う「欠神発作(けっしんほっさ)」でした。

その後はすべてがあっという間。検査を受け、さらに検査を受け、「この薬を飲んでみて」「あれを試してみて」と次々に言われました。まるで実験を受けているかのような気分でした。

診断後、家族の挙動がたちまち変わったのを感じました。周囲の誰もが緊張状態なのです。いつも私から目を離さず、不安そうにチェックしている姿は、当時の私の目には奇妙に映りました。

てんかんを発症して、変わったことがもう一つあります。それは、急に“子ども時代”が終わりを告げたということ。家族は私を愛してくれましたが、だからといってこの病気は治せません。必然的に私は、大人のように考えるようになっていきました。

自信を失った10代

数年後の14歳のとき「強直間代発作(大発作)」を起こしました。これは、意識がなくなり、全身が硬くなった後(強直相)、全身をガクガクとさせる(間代相)もの。「てんかん」と聞いたときに、多くの人が想像するものに近いでしょう。

それからは、毎週のように起こるこの強直間代発作と付き合っていくことが、私の新たな闘いになりました。私は、すっかり自信を失っていました。先生や学校の友達、さらには好きな人の前で、こんな無防備な姿を見られるのは、すごく恥ずかしかったから。たとえ、そんな風に思うべきではないと分かっていても。

強直間代発作を管理するために特別な薬物治療を受けましたが、副作用が深刻で、ほぼ常に怒りと不安に圧倒されることになりました。てんかんと思春期と薬の副作用のバランスをとるのは困難だったので、薬を変えてもらったときは嬉しかったです。とはいえ、元の自分に戻ったと感じるまでに6カ月ほどかかりました。

大学を休学し、深刻なうつ状態に

腹立たしいことに、生活の一部分が安定すると、別の部分が破綻しました。

18歳になると、将来にワクワクしながら大学に入学しました。ところが、発作が悪化したために休学するしかなくなったのです。てんかんによって夢が破れたと思い込んだ私は、深刻なうつ状態に落ち込みました。

その後、セラピーに助けを求めた私は「症状を変えることはできなくても、考え方を変えられることはできる」と教えられました。セラピーと自分に合った薬(これを見つけるのに10年間かかりました)によって発作を管理しやすくなったことは、精神と肉体がどれだけ結びついているかを示していると思います。

少しずつ回復していった私は、学びの場に戻りました。そして私は、もうすぐ人権問題を専門とする事務弁護士(事務処理だけをする弁護士)になります。振り返ると、てんかんは試練でしたが、それによって目標を達成できないことはありませんでした。寄り道をしながら、ちゃんと目的地に到着してきたのです。

olivia salvati
Olivia Salvati

健康のために実践していること

自分の限界を定める

てんかんは、「光が点滅するような発作から始まり、口から泡を吹くもの」というイメージが強いようですが、症状の実態はずっと複雑なものです。私の場合は、ストレスや不安、疲労などがきっかけになるので、メンタルヘルスや生活習慣に気をつけています。

たとえば、土曜日に友達から外出しようと誘われたけど、金曜が仕事で忙しかったとしたら、自分の体を尊重して断ることを覚えました。取り残される不安があって、厳しい教訓でしたが、限界を定めることが私の健康を守っています。

同僚に病気を打ち明ける

雇用主に健康状態について伝えるのは勇気がいりますが、私が症状を伝えたことで対応策ができました。

今では、もし私が職場で発作を起こしたら、どうやってたすけたらいいかみんな知っていますし、発作によって数日間仕事ができないこともあるので、私が回復するまで休める柔軟さもあります。

一に休息、二に休息…

一般的に、「目に見えない病気」に関しては誤解が多いものです。

てんかんを患う人々についてとりわけ知られていないことのひとつは、その健康状態にかなり起伏があるということです。一日仕事を休まなくてはいけないけれど、翌日はまったく平気、ということもあれば、回復までにもっと時間がかかることもあります。

たとえば、強直間代発作の後ではベッドから数週間出られないことも。最近、てんかんを抱える子どもと若者のための慈善団体「Young Epilepsy」のチャリティマラソンに参加しましたが、体の疲労は強直間代発作による疲労には遠く及びません。発作後の回復に必要な休息の時間は、なかなか理解するのが難しいものだと思います。

他人と比較しない

SNSによって、私たちはすぐに他人と自分を比較するようになってしまいました。私も、同世代の人々が達成している目標を見るのが辛いこともあります。

そういうときは、こう言い聞かせることにしています。「私はたくさんのことを乗り越えてきたし、私は自分の進み方でいつかそこに到達すればいい」と。

※この翻訳は抄訳です。
Translation:mayuko akimoto
COSMOPOLITAN UK