「セルフラブ」や「自己受容」といった価値観が広まりつつある昨今。自分を愛する大切さが叫ばれる一方で、ありのままの自分を受け入れることの難しさに直面している人も少なくありません。

アメリカを拠点にするライターのシャノン・カーリーさんも、その一人。「自分の体が嫌い」 で「自分には価値がない」と思っていた彼女が、がんとの闘病を通して気づいたこととは--。

文:シャノン・カーリーさん

最悪だった自分の体との関係性

子どものころから、自分の体が大嫌いでした。

腕は太すぎるし、走るのは遅い。自分の理想とは程遠いルックスだったし、思ったように動かない…。どんなに“自然体の姿”や、“ありのままが美しい”と思うようにしても、自分では欠点しか目に入ってこなかったんです。

学生時代は、こういった気持ちをかき消すために必死でした。とにかく細く、痩せて見えたかった。だって世の中では、それこそが“幸せな人の体”の定義とされていたから。

でも、無理なダイエットが摂食障害不健康な運動習慣につながって、私はただただ惨めになっただけでした。なんとか、“社会の美の基準”に従おうとしていましたが、自信はなくなるばかりでした。

大学卒業後の私は、周りからは順調な人生を歩んでいると思われていました。IT業界に就職し、着実に出世コースに乗っていたし、Instagramには友達と楽しそうにしている写真ばかり。でも、自分の体との関係性は最悪でした。

鏡では偽りの姿を見ているようだったし、常に自分にはネガティブなことしか言えませんでした。セラピーにも通ったけれど、睡眠、健康な食事、運動など身体的、精神的健康につながるようなことは、面倒なタスクにしか感じられなかったんです。

portrait of a woman on circular mirror
Martina Ferrari / EyeEm//Getty Images

病気が発覚してから気づいたこと

そしてついに限界を迎えたのが、30歳だった2020年の夏のこと。

胸の痛みとひどい疲れを1年ほど放置していましたが、ついに違和感を無視できなくなり、原因を探るために8週間ほど様々な医療機関を転々としました。 その間に、ついに胸の痛みは耐えられないほどに悪化し、動くことも笑うこともできなくなってしまったんです。

検査の結果、言い渡されたのは「悪性リンパ腫」。つまり、「がん」でした。

診断された後に感じたこと。もちろんショックや恐怖、絶望もありましたが、同時に驚いたのは「すべてがはっきりする感覚」もあったことです。死について考えることで、想像していなかった自由を感じたし、長年抱えていた「自分には価値がない」という考えや、自分に対する批判からようやく解き放たれたようでした。

否定し続けていた、「私の体」。でも、がんと闘ってくれるのもこの体だったんです。

もちろん、がんの治療はつらいものでした。抗がん剤治療で髪はすべて失ったし、コロナ禍だったので、誰も面会できないまま病院で過ごす日々が続きました。全く動けない日もあったし、痛みに耐えて、何年も避けてきた感情と向き合わなければいけませんでした。

でもそれによって、強制的に自分の体と闘うのを止めることができたし、自分の体の声を聞き始めるようになりました。そして、がんを克服して自分の人生を生きるには、たとえどんな見た目でも自分の体が必要なのだと気付いたんです。

silhouette of young woman enjoying the freshness of air and warmth of sun by the sea at sunrise
d3sign//Getty Images

がんを乗り越えて得た学び

今では寛解に向かっていて、心と体のケアに専念しています。栄養士と話したことで、間違ったダイエットの知識も正すことができました。

食べものは私の成長のエネルギーの源だし、運動できることは特権。動けること、踊れること、強くなれることに感謝しています。他にも呼吸法や瞑想が、自分を受け入れて愛する助けになっています。

がんは恐ろしいものだけれど、私に必要だった機会を与えてくれました。今では鏡を見ると、自分を誇らしく思えます。大切なのは、体がどう見えるかではなくて、私がどう感じるかだから。

※この翻訳は抄訳です。
Translation: Haruka Thiel
COSMOPOLITAN US