今まで信じてきた価値観が時代遅れになったり、誤解していたことに気づいたりした経験はありますか?「物の見方」をアップデートすることはそう簡単ではないけれど、常に変化する世の中を生きていくうえではとても重要。

この記事では、価値観をアップデートする過程で起こる心の反応への対処法を<オプラ・ダイアリー>からご紹介。専門家による具体的なアドバイスをお届けします。

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専門家がすすめる3つのステップ

たとえそれが「自分に良い影響を与えないもの」だとわかっていても、自身にとっての“信念”を見つめなおすのは難しいこと。

イェール大学の心理学教授ローリー・サントスさんは、自分自身の“古い”価値観と向き合い、物の見方を積極的にアップデートするためのステップとして、以下の3つを提案します。

1. 立ち止まって冷静になる

「空腹だったり、腹を立てていたり、恐怖を感じたりして興奮しているときは、とても感情的になっています。そういうときに物の見方を変えるのは非常に難しいでしょう」とサントスさんは説明。

「心理学者が『感情移入ギャップ(hot-cold empathy gap)』と呼ぶ状態です」

2. 深呼吸をする

気分を落ち着かせるために、「深く呼吸をしてみましょう」とサントスさん。

迷走神経が活性化され、闘争・逃走反応(fight-or-flight response)を和らげてくれます」
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pixdeluxe//Getty Images

3. 適切な問いを投げかける

心の余裕ができたら、「ワーク(The Work)」と呼ばれる、作家のバイロン・ケイティさんが考案した一連の質問リストに答えてみましょう。

  • その考えや認識は本当に正しい?
  • その考えが本当であると言い切れる?
  • そう考えるとき、あなたはどのように反応する? 何が起きる?
  • その考えがなければ、あなたはどうなる?

「たとえば、『自分の体は全然ダメで、好きじゃない』という認識を変えたいとします。最初の問いに対しては『その通り!』と思うかもしれませんが、2番目の問いかけで違う視点からも考えられることに強制的に気づかされるでしょう」とサントスさん。

「まず立ち止まって冷静に考えてみることで、『まあ、全部がダメということはないかも。心臓はそれなりにちゃんと動いているし』などと思えるでしょう。そして、『自分の体はダメだ』という思い込みのせいで自分自身に対する扱いが雑になることや、逆にそう思わないようにすれば、もっと自分を大切にできるかもしれないことに気がつける可能性があります」

「ワーク」は、自分が物事にどのようなことを期待しているかを問う作業。そうすることで、多くの場合は自身の期待が時代遅れだったり間違っていたり、他人にとっては自然でも自分には適切ではなかったりすることに気づくはず。

それがもう自分には役に立たないものだとわかれば、一呼吸置いた後、楽な気持ちで古い価値観を手放すことができるのだそう。

変化に向き合うためのアドバイス

世界が大きく変化し、「自分も考え方をアップデートしなければいけない」と思ったときには、哲学者や心理学者のアドバイスを参考にしてみて。

変化は避けられないことを知る

イェール大学の哲学教授であり『変革をもたらす経験(原題:Transformative Experiences)』の著者L・A・ポールさんは、「時代の変化を経験すると、あなた自身にも精神的な面で変化が生じます。大切に思っていたことが予想もできないような形で変わるのです。不確かさは人生の一部であり、私たちはそれを受け入れるべきなのです」と述べています。

ただ反応するのではなく観察する

「仏教の瞑想や心理療法について何十年も研究して学んだのは、私たちは身に起こる出来事、さらには自分自身の感情さえも本当の意味では変えられないけれど、経験に対する関わり方は、ある程度自分でコントロールできるということです」と、『心理療法としての禅(原題:The Zen of Therapy)』の著者マーク・エプスタインさんは話します。

「瞑想や心理療法、宗教的な儀式などを通じて行われるのは、物事に対する自身の反応に飲み込まれずにそれを観察し、自分自身について何か否定的に感じさせている考え方から自由になることです。内省は人間にもともと備わる能力であり、誰にでもできることなのです」
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自分の名前で問いかける

心理学者のイーサン・クロスさんは、著書『心の声:なぜ重要なのか、どう付き合うか(原題:Chatter: The Voice in Our Head, Why it Matters, and How to Harness It)』で、複雑な状況を新しい視点で見るための簡単な解決策を提案しています。

彼の研究室では、被験者たちに不快な写真を見せながらその脳の動きを観察する、神経科学的調査を実施。その際、自分自身に「私』はどう感じている?(What am I feeling?)」と問いかけた参加者たちより、「『ジェニファー』はどう感じている?(What is Jennifer feeling?)」というように、自分の名前で問いかけた参加者たちのほうが、感情に関する脳の活動がはるかに少なく、またその脳の活動も一瞬で落ち着くことがわかったそう。

「自分を三人称で呼ぶことによって心のガードが取り払われ、少しだけ客観的になれるのです。『距離を置いた独り言(distanced self-talk)』と私たちが呼んでいるこの方法により問題から一歩離れ、より広い視野から状況を判断でき、多くの場合は解決策を見つけることができるのです」

感謝の気持ちを大切にする

「人はその瞬間に注意を向けている物事に対し、相対的な価値を過大評価してしまうことがあると、認知科学でわかっています。焦点錯覚(フォーカシング・イリュージョン)と呼ばれる現象です」と、認知科学者のマヤ・シャンカーさんは説明。

シャンカーさんには、実体験としてこの錯覚を活用した経験があります。どうにも悲しい出来事があった際、シャンカーさんは傷つきながらも「感謝リスト」の作成に取り組んだのだとか。

「自分の人生に、幸せをもたらしてくれるものが数多くあることを思い出すことが目的でした。リストに書き出したことを振り返ることにより視点を変え、自分の人生が実はとても多面的であると認識できるようになったのです」

※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。元記事に関連する文化的背景や文脈を踏まえたうえで、補足を含む編集や構成の変更等を行う場合があります。
Translation: 平田三桜(Office Miyazaki Inc.)
OPRAH DAILY