友人グループの中で1番最初に妊娠したことによって、疎外感を味わったというクロエさん。彼女がどんなふうにその感情と向き合い、友人関係を新たなステージに転換していったかを体験談をもとに<コスモポリタン イギリス版>から紹介します。

語り:クロエさん

“仲間外れ”から感じた孤独

2018年のイギリス国家統計局のデータによると、第1子出生時の母の平均年齢は28.9歳で1970年代と比較すると確実に上昇しています。私はその平均年齢よりも少し早い27歳で結婚・妊娠し、仲の良いグループのメンバーの中では最初でした。

妊娠14週目にしてようやくひどいつわりに慣れてきた時、SNSで目にしてしまったのは、仲良しグループの6人が私抜きでパジャマパーティをしている写真。寄り添ってカクテルを飲んている彼女たちの顔にはキラキラした笑顔が浮かんでいて。

どうして私は呼ばれなかったんだろう」と、すぐさま思いました。

そのころは、つわりとの戦いの日々で心細さを感じていたので、友だちに会いたくてたまらない時期。学生時代からの友人とは何をするにも一緒だったので、私が妊娠したことが、「みんな一緒」ではない初めての出来事だったかもしれません。

この仲間とは四六時中つながっていないと安心できないほど密な関係だったため、その写真を見たときは、自分で処理しきれないほどの感情が沸き上がり、孤独でみじめで心のなかで嫉妬の炎がメラメラと燃え上がってしまいました。

私は友達に何でも打ち明けていましたが、妊娠に関してはなんとなく自分の気持ちを伝えることができていませんでした。もともととても社交的なタイプだったので、妊娠によってこれまでの生活を送れなくなることについて、とまどっていたのかもしれません。

でもこうして寂しいと感じれば感じるほど、私は自分自身やあらゆることに疑問を持つようになったんです。たとえば、自分は本当に夜外出もせず、おむつ替えをしながら過ごす生活ができるのだろうか…とか。

つわりのピークの時期にはすでにうんざりしていました。そして、自分が映画やドラマで描かれているような、“子どものいる女性”のステレオタイプにはまっているのではないかと心配しはじめていたんです。

『セックス・アンド・ザ・シティ』で仲間との会話をしながら赤ちゃんの世話と格闘しているミランダみたいな姿になっている自分を想像して、赤ちゃんが生まれる前からネガティブなイメージにとらわれはじめてもいました。

「退屈な人間だと思われる」という恐怖

27歳でロンドンを出た直後に妊娠した、現在36歳のピオナさんもこんなふうに話しています。

「子どものいない友人と会う前には、何か面白い話ができるように手持ちのネタを増やそうと必死になってしまって」

ピオナさんは、「妊娠して子どもが生まれても、キャリアや夜遊び、家族のことすべてを手に入れることができる」と皆に証明しようと決意。でも、その願望は夢物語だったとすぐにわかったのだそう。

「出産後初めての夜遊びでは、愉快な話が思いつかず泣き出してしまいました。そのうえ、おっぱいが張ってとても困りました」とピオナさんは回想。

「以前、『あなたは他のママとは違って、子どものことばかり話さない』と友だちに言われたことがありますが、その言葉で私の不安は高まっただけ。退屈だと思われるのが心配だったんです」
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Getty Images

人生の変化の後に喪失感を感じるのは当たり前

親になると、友人を失うのではないか、という恐怖を感じるというのは現実的なことだとセラピストのターシャ・ベイリーさんは言います。

「時間の使い方とアイデンティティが新しい役割に適応せざるを得ないので、喪失感を感じるのは当然。友人に忘れられてしまうのではないかと心配したり、妊娠する前にやり残したことがあるのではないかと嘆いたりすることもあるでしょう」

異なるライフステージにいる友人との距離はどうしても広がりがちですが、ミスコミュニケーションのためにさらに広がるおそれがあるのだとか。

「妊娠した友だちのことをそっとしておいてあげたほうがいい、と考える人もいますが、こういう気遣いがかえって孤独感や取り残されてしまう恐怖の感情を高める結果になることも多いんです。たとえば、妊娠した女性が、自分以外の仲間がいつものように出かけている写真をSNSで見てしまう、というような出来事によって、孤独感が強まる結果になることもあります」

大事な赤ちゃんを授かり、妊娠できたことにとても感謝しましたが、それでも妊娠前の自分の生活を懐かしむ気持ちはすぐには変えることができなかった私。ベイリーさんは、これもまた当たり前のことだと言って、私を安心させてくれました。

「母親になる前の人生を懐かしむのが悪いことだと感じて、罪悪感をもつ人も多いんです。内向きになっていくうちに、そんな風に考える自分のことを悪い母親だと思うようになる場合もあります。実際には、こういう難しい感情を人に話せば話すほど、恥ずかしいと思う気持ちは減っていくものなんですよ」
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友人から学んだ新たな視点

36歳のハイジさんは、5年前にルイーズさん(仮名)との友人関係が消滅してしまったことについて、こんな風に回想しています。

「多分、共通しているものがなくなってしまっただけなんですよね」

ふたりは職場で出会ってすぐに意気投合。ルイーズさんには結婚式の付き添い人を務めてもらうほど親しい仲だったそう。

けれども、ハイジさんが妊娠を告げると、ルイーズさんはぱたっと誘ってこなくなったといいます。

「なんで会えなくなったのか、ぜんぜん理解できなくて、とっても悲しい気持ちになったのを覚えています。でも、どうすることもできなくて。彼女は変わってしまったんだな、と思うだけでした。私はとにかく前に進んでいくしかありませんでしたから」

けれど今になってみて、ルイーズさんは当時、距離を置こうとしていたわけではなく、ハイジさんの妊娠の事実に彼女なりに対応しようとしていただけなんだろうと思うようになったのだとか。

シングルだったルイーズさんの気持ちを、彼女の視点で考えられていなかったとハイジさんは今感じているのだそう。現在2児の母になっているハイジさんは当時の自分についても、妊娠によってとても感情的になっていたし、自分のことでいっぱいいっぱいだったと回想。

「彼女がぱったり誘ってくれなくなったとき、ルイーズがどう考えているか、聞くべきことがいっぱいあったはずなのに、当時の私はそれすら思いつかなかったんです」

ハイジさんは過去の自分への反省を踏まえて、友だちが妊娠したとき、どんなふうに支えになってあげるといいか、当時の自分と同じぐらいの年齢の女性たちにアドバイスしたいことがあるのだそう。

「なにごとも想像で決めつけないこと。友だちに直接聞いたり、自分なりに妊娠について学んだりしてみて。そして、妊娠した友だちも戸惑っていて、自分の気持ちを話したりするのがうまくできないかもしれないことを理解してあげてほしいです。これまでどおり会ったり話したりできない状況になっても、辛抱強く待つこと。そして、話したくなるまでいつでも待ってるよって伝えてみてください」

正直に弱みを見せあう関係が大切

ベイリーさんも、異なるライフステージで友情を維持するためにどうしたらいいか、アドバイスしてくれました。

「互いに正直に弱みを見せあう関係を続けられれば、それまでに築いてきた、安心して何もかもシェアできるという関係や絆を、より強めることができるはずです。できるだけ、互いの様子をチェックしあって、どんな気持ちでいるのかを確認しあうことが大事ですね」

私の場合も、勇気を出して仲良しグループのメンバーと再度密なコミュニケーションをとるようにしたことで、これまでどおりの関係に戻ることができました。妊娠後期になってから、声をかけてもらえなかったあのパジャマパーティの件についてどう思ったかを、勇気を出してみんなに伝えてみたんです。

「すごくショックだった」

この一言が口から出た瞬間、一気に気持ちが楽になるのを感じました。

そして、友人たちのびっくりした顔や、申し訳なさそうな顔を見たら、涙が止まらなくなってしまいました。数カ月間、もうみんなは私のことなんか気にしていないんだと自分に言い聞かせてきましたが、実はそんなことはなかったんだと、話をしてみてわかったんです。

彼女たちは、単純に分からなかっただけ。私が妊娠について抱いていた不安な気持ちやサポートしてもらいたいと思っていた気持ちのことなど、私が話さない限り、彼女たちに伝わらなくて当たり前だったんです。

あれから6年がたち、私も2児の母となり、友人たちの状況もいろいろと変わりました。そして、この数年間で、友情について学んだことがあります。大人になるにつれて、抱える責任も増え、学校や職場でいつも会っていたころと違って、絶えず友人とコミュニケーションをとりあって、どんな様子かを把握するのは難しくなってしまいます。

けれど、だからこそ、互いに時間を作ることが大事。そして、お互いが歩んできた友情の歴史や出会って間もないころのこと、どんな風に仲良くなったかなどの記憶を忘れないでいることも、とても大切です。

私の場合も、全く電話をかけてくれなくなった人もいましたが、いつも気にかけてくれて様子を聞いてくれる友人もいました。というわけで今ではみんながパジャマパーティをしてカクテルを飲んでいるときに、私自身は自宅から電話で参加するしかなくても、仲間とまたこうやって一緒に過ごせるんだ、ということがとてもうれしく思えるんです。

※この翻訳は、抄訳です。

Translation: 西山佑(Office Miyazaki Inc.)

COSMOPOLITAN UK