褒めることと否定すること、両極端の二つを繰り返すことで相手を一方的に支配する「トラウマ・ボンディング」。

気づかぬうちに多くの時間とエネルギーを奪う精神的な虐待を経験した著者が、負のループから抜け出すまでの体験を<コスモポリタン イギリス版>に告白。あなたの人間関係を見直すための参考にしてみて。

※この記事は、精神的な虐待にまつわる描写を含みます。心身への影響を懸念される方は閲覧にご注意ください。


【INDEX】


トラウマ・ボンディングとは?

トラウマ・ボンディングとは、「ポジティブな強い結びつきと、それを切り捨てるサイクルが繰り返されることを特徴とする、感情的な愛着」のこと。

人間関係のセラピストであるマリー・ローリー氏によれば、当人どうしの力関係が不均衡なことが原因となることが多く、恋愛関係だけでなく、プラトニックな関係、家族関係など、あらゆる種類の人間関係に見られるそう。

加害者は、褒めることと否定することを交互に繰り返し、時間をかけて少しずつ“絆”を深めていきます。すると次第に被害者は、当初のポジティブな気持ちを取り戻すために夢中になってしまうのです。

誉め言葉から攻撃的な言葉へ

振り返ってみると、ステラとの友情は、彼女の「ラブボム(=愛情攻撃)」から始まりました。「ラブボム」とは、相手を褒めちぎることで影響力を持とうとする心理テクニック。彼女は、私の人格や才能をたくさん褒めてくれました。

最初はお世辞を真に受けて、嬉しかったので、私も彼女に褒め言葉を返しました。しかしすぐに状況は一転し、いつの間にか躊躇なく私を打ちのめそうとするようになりました。

コロナ禍の頃は特に、私の行動やライフスタイルについて攻撃的なコメントが増えたのを覚えています。彼女自身は頻繁にオンラインデートをしたり、グループで遊んだりしているにもかかわらず、私が週末にボーイフレンドと会うのは、「無責任」だと強く批判し始めたのです。

また、自分が他人より道徳的に優れているという発言や、平然と他人の悪口を言う、という別のパターンもありました。私が全く知らないような人の名前を挙げてけなすことも多く、私も友人として指摘しましたが、それでも彼女は他人の悪口を言い続けました。そこに優しさや信頼関係はなく、結局それは友情ではなかったのです。

forgiveness supporting mother and hugging daughter
rbkomar//Getty Images

危険信号に気づきにくいという特徴も

トラウマ・ボンディングな友人関係では、「信頼性の欠如や感情的・行動的な一貫性の欠如などの警告サインがあります」と、マリー氏。でも、これらの兆候は、本当にひどくなるまで私にはわかりませんでした。

「友人関係は、恋愛関係よりも親密さの感覚が流動的で柔軟であることが多いので、危険信号を見分けたり、問題を解決することが難しくなります。そのため、友情の境界線を越えてしまったという感覚に気づくためには、第三者のサポートが必要なケースが多いです」

何度も暴言を吐かれ、精神的な負担を感じた後、ついに私はこの友情が健全ではないことに気づきました。彼女との接触が減れば、彼女が攻撃してくることも減るだろうと考え、距離を置くことにしました。怖くて何も言い出せなかったというのもあります。

すると驚くことに、彼女は私が距離を起きはじめたことに激しく反発し、私が加害者であるかのように責めたてたのです。心を冷静に保つためには自制心が必要で、とても疲弊しました。

「このような状況に陥った場合、境界線を維持する最善の方法は、自分の友情の基準を明確に伝えることです。自分が壊れていると気づいたら、落ち着いて安心していられる境界線を明確にしてください。誰もが人生の中で有害な友人関係に遭遇する可能性があるのです」(マリー氏)

あなたが間違った人を引き寄せている、と考える必要はありません。必ずしも自分が悪いわけではなく、非難されるべきなのは、当然ながら加害者側です。

young man sitting by worried male friend in bedroom
Maskot//Getty Images

トラウマ・ボンディングの体験談

同じような経験をした人に話を聞いてみると、歪んだ友人関係には様々なパターンがあり、見極めるのが難しいということがわかりました。

友人からの指摘がどんどん過激になっていったというクレアさんは、その発言を聞のが次第に苦しくなったといいます。

「彼女は、私たちが息子のために選んだ学校について何度も批判的な発言してきて、私立の学校にいれなかったことに対して、自分勝手な親だとほのめかしました。親としての私の意図を攻撃し、息子のために最善を尽くしていないと指摘されたことはあまりにも耐え難いことで、それが私にとっての友情の終わりでした」

トラウマ・ボンディングな友人関係の中には、感情の不均衡がもたらすものも。21歳のトラーニさんは、一方的な人間関係を経験したと言います。

「2カ月に1回くらいは話していましたが、ただ話を振られているだけという感じでした。元気かどうかなんて聞いてくれることもなく、私は自分の悩みを話すこともできなくなってしまった。私はただひたすら与えてばかりだったような気がします」

22歳のアリサさんの場合、不健康な友情はお世辞攻撃から始まったそう。

「彼には固定の友達がいないようで、以前の友達はいつも離れてしまっているようでした。みんな、彼が人を操るようなことをしていることに気づいていました。彼は私たちが仲良くしている他の人の悪口を言っていたので、結局私はその彼と話すのをやめました」

トラウマ・ボンディングは、意外にも身の回りで起こっていることなのです。

トラウマ・ボンディングへの対処法

強烈なお世辞や褒め言葉は、受け取って気持ちが良いものですが、残念ながらそれはよくない関係への入り口となってしまう場合もあります。自分の価値観を伝えることは、楽なことではありませんが、それによって充実した友人関係を築くことができるはず。

相手を苦しめながら、その人の人生に関わる権利は誰にもありません。友人というのは、幸せを脅かすような人ではなく、幸せを与えあえるような存在であるべきなのです。

※この翻訳は、抄訳です。
Translation:TOMOKO NOURRY
COSMOPOLITAN UK