LGBTQ+当事者に対する社会的な認知度は年々高まってはいるものの、当事者の親や家族も、その立場だからこそのさまざまな悩みを抱えています。
「カミングアウトされたときの受け止め方」や「子どもをどう支えていけばいいのか」など、親がどのようにサポートするかは、子どもの幸せに大きな影響を与える可能性がある重要な問題です。
本記事では、二人の専門家が解説する「LGBTQ+のわが子を家族としてサポートする方法」を<ウーマンズ・デイ>からご紹介します。
【INDEX】
- 「支えたい」という気持ちが大切
- カミングアウトされたとき、どうする?
- 「今はそう思ってるだけじゃない? 」と聞くのはNG
- 自分自身を教育し、サポートを求める
- オープンな対話を心がける
- 子どもたちの味方になる
- 間違ったら謝罪し、前に進む
- 急がない!
「支えたい」という気持ちが大切
2009年に行われたLGB当事者(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル)を対象とした研究によると、10代の頃に「親からの拒絶反応が強かった」と語る当事者は、家族からの拒絶反応がなかった、または低かった同世代の当事者に比べ、自殺未遂をした人が8.4倍、深刻なうつ病を発症した人が5.9倍、違法薬物を使用した人が3.4倍いることが判明。
また、2010年に行われた別の研究では「思春期に家族の受容度が高かったLGBTQ+の若者は、家族の受容度が低かった同世代の若者に比べて、自尊心、社会的支援、一般的な健康状態のレベルが高かった」という結果が出たとのこと。
これらの研究結果はつまり、安全で健康的で幸せな生活を送るのに、親や家族のサポートは大きな影響力をもっているということ。
しかし、親や家族にとって「自分が適切なサポートをしているかどうか」を判断するのは難しいものです。サポートの形はさまざまだけど、「支えたい」という気持ちが相手に伝わることが最も大切だとも言えるでしょう。
カミングアウトされたとき、どうする?
カミングアウトは、多くのLGBTQ+当事者にとって大きな意味をもつもの。Facebook上で一斉にカミングアウトする人もいれば、信頼できる限られた人にしかカミングアウトをしない人もいます。また、自認するだけであえて誰にもカミングアウトしない人も。
クィアやトランスジェンダー当事者を専門とするセラピストのローデス=ドロレス・フォリンズさんによると、若者が家族へのカミングアウトを考えているとき、最初に考えるのは「家族から愛されなくなってしまうかも」ということなのだとか。
「子どもにカミングアウトされたときは、『あなたのことを愛しているよ。伝えてくれて、ありがとう』と伝えることが大切です」
加えて、「どうやってあなたを支えたらいいかな? 」と尋ねることや、子ども自身が何を恐れ、希望を感じているかについて、しっかり話し合う機会をもつことを提案しています。
「プライベートでも仕事でも、若いLGBTQ+の人たちは自分のアイデンティティやカミングアウトについて多くの不安や懸念、疑問、あるいは期待をため込んでいるものです。しかし、最初から親や保護者が一緒に話し合うことで、つらい思いをせずに済むことも多いのです」
「今そう思ってるだけじゃない? 」と聞くのはNG
「若者は、自分のセクシュアリティやジェンダーアイデンティティを理解できるほど成熟していない」と考える人は少なくありませんが、それは真実ではありません。
LGBTQ+の子どもを持つ南アジア系移民のための団体「Desi Rainbow Parents & Allies」の創設者であるアルーナ・ラオさんは、「クィアやトランスの若者は自分が何者であるかに気づいています。だからこそ、当事者の自認を受け入れることがサポートの第一歩です」とコメント。
「親は子どもの主体性を奪うことなく、『自分はこういう人間です』と言える自由と勇気を与えるべきなんです」
自分自身を教育し、サポートを求める
オンライン上では基礎知識として参考になる資料や、重要な用語を定義したLGBTQ+用語集、ほかの当事者の経験談なども多数見つけることができます。
また、フォリンズさんはLGBTQ+当事者の家族や友人のためのミーティングを開催しているNPO団体などにコンタクトを取ったり、Facebookでサポートグループを見つけることを提案。一方で、反LGBTQ+を提唱するグループは避けるようにアドバイスしています。
オープンな対話を心がける
LGBTQ+の子どもが学校でいじめられていないか、精神的に苦しんでいないか、ということを知るためには、健全でオープンなコミュニケーションが大切と説明。
「『以前は幸せそうだったのに、今は変わってしまった』というような変化があるかどうか、いつも気に留めていてください。ほとんどの親は、何か変化があれば気づくはずです。やさしく気遣い、決して何かを強いることはせず、自然に話をしましょう」
残念ながら、現代でもLGBTQ+の若者は学校でいじめにあう可能性が高く、特にトランスジェンダーの学生は嫌がらせを受けやすいと言われています。LGBTQ+の学生をサポートするアメリカの教育団体「GLSEN」が2015年に行った調査によると、トランスジェンダーの学生の75%が「学校は安全でない」と感じているのだそう。
フォリンズさんは「トランスジェンダーの若者をもつ親が、子どもに対して『サポートしている』という姿勢を伝え続けることはとても大切」と説明。
「親にとっても子どもにとっても大変なことですが、子どもたちが必要なサポートやケアを、いつでも受けられることを伝え続けましょう」
子どもたちの味方になる
LGBTQ+の子どもの保護者は、シスジェンダーやストレート(異性愛者)の子どもの親とは異なる方法で、学校や家族内で対話する必要があるそう。
「子ども(当事者)が学校と保護者の“仲介者”になることを期待するのは良策ではありません。子どもへの負担が多すぎますし、うまくいかないことが多いのです」とフォリンズさん。
「子どもの役割は『生徒であり、あなたの子どもであること』です。学校の教師、校長、副校長など、その子の人生に関わるすべての教育者にきちんと扱われているかをケアするのは、親・保護者の役割です」
ラオさんは「親は子どもの許可を得た上で、本人に代わり(自分以外の他の)家族に説明をする必要がある場合もあるでしょう。その際、当事者の味方になることも大切です」と解説。
「私のトランスジェンダーの息子は、私から家族にカミングアウトしてほしいと頼んできました。彼は繰り返しカミングアウトすることに疲れ切っていたんです。そこで彼の許可を得た上で、家族には私から話しました」
また、必要に応じて境界線を引くことも大切。「たとえば、当事者の性転換治療について人はあれこれ詮索してくるでしょう。そういったことを他人が知る必要はありません」とラオさん。
「必要なのは、『当事者のアイデンティティ』を伝えることだけです。親が子どもと話し合い『これは伝えてもいいこと、これは伝えてはいけないこと』を明確にしておくことはとても重要です」
間違ったら謝罪し、前に進む
どんなに学び、気をつけていても、時には間違ったことを言ったり、してしまうことも。ラオさんは「謝罪することはもちろん大切ですが、問題を大きくしないようにすることも重要です」とアドバイス。
またラオさんは、年配の方から「長年知っている人の新しい変化についていけない。つい昔の性別(や性自認のままで)の代名詞で呼んだり話したりしてしまう」という悩みをよく聞くそう。
そんなときは「私も40代でこのジェンダーにまつわる言葉を覚えたんですよ」と答えることにしているとのこと。ずっと続ければ慣れる、習慣なようなものだと説明します。
フォリンズさんは、代名詞は 「単なる言葉」ではないと説明。
「彼なのか彼女なのか、そのどちらでもないのか―― 家族は子どもの正しい代名詞を使い、ほかの人にも正しい代名詞を使うように促す必要があります。そのためには、まずは家族が率先して正しい代名詞を使い続けましょう。そうすることで、当事者である子どもがより健康的で安全な環境で生きていけるのです」
急がない!
LGBTQ+にネガティブな考えの文化的・宗教的背景を持つ親は、自分たちに合うサポートを見つけるのに時間が必要になることも。信仰する宗教がLGBTQ+当事者に否定的な場合、フォリンズさんは「何よりも、子どもの側ことを一番に考えてください」と提案。
ラオさんも「現在、世の中にはたくさんのリソースがあります。時間をかけて、子どもと親をサポートしてくれるコミュニティを見つけましょう」とアドバイスします。
「将来につづく親子の関係の方向性を決めるチャンスはそんなに多くはありません。子どものために立ち上がれば、自分自身にも力を与えることになります」
※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。元記事に関連する文化的背景や文脈を踏まえたうえで、補足を含む編集や構成の変更等を行う場合があります。
Translation: 宮田華子
WOMAN’S DAY