女優業だけではなく、今年公開の映画『夏、至るころ』で監督にも挑戦するなどジャンルを超え、幅広く活躍する池田エライザさん。Instagramでは、130万人以上のフォロワーを抱え、そこで発信する豊かな表情や自然体な姿に魅了されている人も多いはず。

世の中で様々な動きがある中で、24歳の今、仕事や人生、SNSに対しての考えや、コスモポリタン読者と同世代だからこそ感じることを聞きました。

女優業だけではなく、この夏公開の映画『夏、至るころ』で監督にも挑戦するなどジャンルを超え、幅広く活躍する池田エライザさん。世の中で様々な動きがある中で、24歳の今、仕事や人生、snsに対しての考えや、コスモポリタン読者と同世代だからこそ感じることを聞きました。
Koichiro Inomata

ステイホームの間はどんな風に過ごしていましたか?

もともと家にいるのが好きな方なので、全然苦じゃなかったです。絵を描いて、鳥と遊んで、歌を歌って、動画を見て……でも、やっぱり本を読んでいましたね。自己啓発本に少し偏見があったから、あえて読んでみたり。ただ10代の頃からずっとバタバタと働いていたから、仕事が止まっている感覚は初めてで。働きたかったから、連載の原稿の締切が嬉しいって思ったのは、初めてでした。自分の手で収入を得ている安心感を覚えましたね。

自粛中に何か始めたりも?

新しく映画の脚本を書きたくて。具体的に映画化の話があるわけでもなく、ただ趣味で、何本か書いているんですが…遺伝子について勉強したいなと思っていたのですが、それが進まずに焦ってました。

ご自身の仕事や人生について、考えるきっかけでもありましたか?

考えましたね。エンターテイメントを提供する側として、この世の中に対して必要なメッセージは何なのか。何も考えずに楽しめる娯楽作品も大事だけど、もっと質の高いものを出していかないといけないんじゃないか、とか。「勉強」となると苦手意識を持たれるけど、ドラマや映画ならハードルが低くなるから、そういうもので本質がつける、問題提起ができるような作品を作れたらと思うんですよね。

あとは自分が発信することについても同じ。コロナ禍やアメリカの#BlackLivesMatterをきっかけに、社会的な発言をする人が増えていますよね。この間の選挙でも「誰に投票しますか?」って聞かれることも多かったのですが、そんなこと聞かないほうがいいいと思うんです。私のファンの方には、私の考えに追従するのではなく、自分で調べ、それが誰であっても良いからまずは投票に行ってほしい。自分で動いてほしいってことを考えていましたね。

“思考停止”から抜け出してほしい、というような?

何かを発言したり、行動する若者が歓迎されにくかったり、なんとなく腰が重くなるようなどんよりした空気がある気がするので、思考停止してしまうのもわかります。でもそういう社会も、みんなで動かなきゃ変わらない。だから自分を駆り立て、みんなを駆り立てるために、作品として形にしていきたいなということは、ずっと考えていた気がします。

その一方で、Twitterのアカウントは6月半ばに削除されましたね。

Twitterの発信をやめたというよりは、情報収集という部分でよくないのかなと思ったんです。あるとき、Twitterのトレンドからニュースを見ることが習慣になりつつある自分に気が付きました。手軽ではあるけれど、自分が何かを発信する立場なら、それじゃいけないなと。自分から出てくる関心で情報収集するようにしないと、言葉の説得力もなくなっていくだろうし、誰もついてこなくなっちゃうなって。スーパーで勧められるままに試食を食べるより、私は自分の好きなものを買って食べたい、みたいな感じです。

でも自分から、何か特定の情報や知識を求めることって…あんまりないような。

私に関して言えば、何かしらの疑問があると、まずは自分で考えるクセがついているんですよね。中学時代にはもうスマホはあったけど、それでも私は本の虫で、辞書を読むのすら好きで。自分の関心について時間をかけて調べるのは苦じゃない、今もその延長線上にいるだけです。ネットの情報には嘘もあると身を持って知っているので、あんまり信じていないところもあるのかもしれません。

SNSはInstagramのみを利用されていますが、気をつけていることは?

その日の思想を安易にSNSに残さないこと。みんなも私も気が変わるし、毎日勉強しているから「あの時は40%くらいしか見えてなかったんだな」と思うこともありますよね。そういう変化の過程を想像する余裕って、SNSだと持ちにくいと思うんです。それなら自分の想いみたいなものは、映画のような作品作りで完結したほうが正しく伝わるし、こちらも「あとは観てくださった方のものです」って安心して委ねられるんです。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
池田エライザ | 撮影舞台裏に密着♡ | COVER GIRL | Cosmopolitan JP
池田エライザ | 撮影舞台裏に密着♡ | COVER GIRL | Cosmopolitan JP thumnail
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今24歳ですが、大人びているって言われませんか?

実はそれが嫌だったんです。「こんな幼稚でいいのか」と恥ずかしい気持ちになっちゃう時があって。「おしゃれな映画見てるんでしょ」とか言われると、「いや、本当はカートゥーン・ネットワーク見てるんだけど…」とか(笑)。でも20代も半ばになって「いいじゃん、別に」って思えるようになりました。この間も「意外と大人なんだね」って言われて、すごく嬉しかった。なんだか自由になった感じ(笑)。でも下の世代には、もっと大人びた、すごい子がいっぱいいますよ。

下の世代というと?

最近、ひとつ下の世代の方々と対談する機会があったのですが、次世代はほんとすごいなって。世の中に必死で食らいついてやってきた私の世代とは違うクレバーさがあるんです。私達より夢を持ちにくい冷めた世代で、「世の中最悪ですよね」と言いつつも「まあでも僕は大丈夫なんで」と飄々としてる。夢を追いながらも、ふわふわしてない。

現実に着地させる力を持った優秀な人が多い世代ですよね。

そうですよね。この間、監督として撮った映画は、まさにそういう世代の話で。両親に「夢があるなら応援する」と言われながら「この世界で何を見つけろっていうの?」と思ってる少年と、親の顔色をうかがって「公務員になる」と宣言したその親友、高校生二人の話。

着想はどんな所から?

モデルはわたしの弟です。高校時代の彼は、本当に何を考えているか分からなかった。

SNSを通じて選別された情報だけしか知らず、大事なことはすべて難しい顔したおじさんたちが決める、自分たちには何の権限もない――そんなところでどう頑張れっていうの? と思ってる。

そういう子たちだって、何か些細なきっかけで開花できるはずなんだけど、絶望して扉を閉めていたら何も起こらないじゃないですか。だから扉を開いてあげられたら良いのになって。私自身がそうだったから。

池田さんのきっかけはどんなことだったんでしょうか?

中学3年生の頃に言われた、事務所の副社長の言葉ですね。当時の私は「清楚で爽やか」でいなきゃいけないと、一生懸命それを演じてたんです。そうしたら副社長が「大人相手に嘘ついたって、バレバレなんだから無理しなくていい」って。バレてたんだ! と思って、「清楚」に費やす時間と労力で、自分の好きなものを突き詰めようと。パラダイムシフト!って感じでした。そういう経験を、若い世代にもしてほしい。もちろん「自分らしさ」がわかんなくたっていい。大人になれば図太くなれるし、周囲なんて気にせず探し続ければいいと思います。

いつもは演じる側ですが、今回演出する側にまわり、何か新しい刺激は?

自分の気質として、裏方のほうが向いてるな、と思いました。「じゃあなんで表にいるのか」と思ったんですが、私の言いたいことを言えるのは、私だけなんですよね。それに周囲でお世話になってる人、みんなが好きだから、ここにもいちゃう。女優とか監督とか、自分を規定する必要もないと思うんです。

自分らしさに迷ったり、何をしたらいいのかわからない人たちに、何かアドバイスはありますか?

SNSをやめてみるのもいいんじゃないかなと思います。「それ以外にストレス発散の場がない」と言う人には、でも昔はSNSはなかったんだよ、って教えてあげたい。趣味を作ったり、日記を書いたり、お酒を飲んだりで、発散してたんですよね。

SNSで自分の地位を作る、例えば悪口でマウントとったりしても、結局は怒りとか嫉妬とか劣等感…そういう「不純物」が、自分の中に増えていくだけ。それよりも、そういう不純物をどう浄化するか、向き合っておくほうがいいと思います。どう対処したら不純物が消化できるのか分かっていると、実は大人になってからすごく楽になるから。

池田さん自身の夏や青春の思い出は?

通学に1時間以かけて山を越えていくような田舎育ちなんで、夏といえば……とんぼがたくさん飛んでる風景とか(笑)。青春って言葉が実は苦手なんです。中学生のころから芸能活動をしていたので、体育祭も文化祭も見たことなくて。でも青い気持ちで何かに取り組めているなら、年齢なんて関係なく、いつだって青春だと思います。そう思えば、今が青春かもしれません。

華やかな表舞台と、本来の自分の折り合いは、どうやってつけているんですか?

表舞台にいる「池田エライザ」は、心は通っているけれど、選ぶ服、発言、所作も含めて自分とは別物…そういうふうに思い始めたのは、SNSを始めた高校生になった頃。たぶんここ3年位でしっかりと折り合いがついた感じです。それまでは色々言われたりして、いっぱい泣いていました。もちろん今でも「危ない、平均台から落ちそう」っていう瞬間はあります。「高い高い」って持ち上げて、最後の最後で拾ってくれない人も、世の中にはたくさんいる。ただそういう時も「“池田エライザ”の時に判断を間違って、誤解を生んでしまったんだな」と思うと、反省しやすいんですよね。

でも偽物というわけではないんです。ただ「こういう場ではこういう自分」という感じで、どっちの自分もそれぞれにいる感じ。そういう状況を肯定できるから、そんなに辛くならずに、飄々といられるのかも。みんながそう思えたら、生きづらくならないのになって思います。

コスモ読者で生きづらさを抱えている人に、何かアドバイスはありますか?

例えば「コギャル」って、あの名前があったからブームになったし、自分たちも開き直って生きられたと思うんです。ミレニアルとかZ世代もそうで「Z世代だもん」って自分から名乗ってしまえば、もっと新しく自由で、クリエイティブな生き方ができるような気がしません? ほんとに小さい、ただのきっかけだけど、そういうのを持てることが、すごく大事何じゃないかなって思います。


【Info】

映画『夏、至るころ』 2020年全国公開予定

海のない町、福岡県田川市に生まれ育った翔は、高校最後の夏を迎えようとしていた。ある日、いつも隣で祭り太鼓を叩いていた幼馴染の泰我が、受験のために辞めると言い出す。急に親友を遠くに感じて焦せる翔の前に、ギターを背負った謎の少女・都(みやこ)が現れる―。

原案・監督:池田エライザ
脚本:下田悠子
出演:倉悠貴 石内呂依 さいとうなり・安部賢一 杉野希妃 大塚まさじ・高良健吾
リリー・フランキー 原日出子
企画・製作:田川市・映画24区


Photo/Koichiro Inomata Styling/Izumi Machino Makeup & Hair/ANNA.(SHIMA) Model /Elaiza Ikeda Text/Shiho Atsumi

ジャケット¥72,000/CHANCE、中に着たトップス¥8,500/MSGM UNDERWEAR、パンツ¥20,000/KLOSET(すべてH3O ファッションビュロー)ベルト¥10,000/KAIKO ブーツ¥42,000/G.V.G.V.(k3 OFFICE)ピアス/スタイリスト私物

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