毎年、世界中から注目を集める、アメリカのスポーツ月刊誌『スポーツ・イラストレイテッド』の水着特集号。同誌の最新号には、58年間の歴史上初となるモデルの帝王切開の手術の跡が見える写真を採用し、話題に。

同誌の水着特集では2016年、プラスサイズモデルのアシュリー・グラハムを初めて起用し、2019年にはヒジャブを着用したモデルのハリマ・アデン、2020年には初のオープンリー・トランスジェンダーモデルとなるヴァレンティナ・サンパイオが登場し、注目を集めていた。

近年、多様性を尊重したキャスティングを行う同誌は、妊娠・産後ケアブランドの「Frida Mom」と共同で行った撮影で、3歳の息子を育てる母親で、マイアミ在住のモデルのケリー・ヒューズを起用。

満面の笑みを浮かべた彼女は、堂々としたポーズでビキニのボトムを少し下げ、骨盤の上にある帝王切開の傷跡を披露している。

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またケリーは、自身のInstagramで出産後の傷の回復に苦しんでいたと振り返り、今は自分の体を受け入れることができたと綴った。

「初めて帝王切開の傷跡を披露した女性として、同誌の撮影に参加でき、言葉を失うとともにとても光栄に思っています。Frida Momとのパートナーシップは、特に母親になったときの女性の体の変化を正常化し、受け入れるために必要なもの。その一員であることはとても素晴らしいと感じています」

「私はモデルとして活動していたので、傷跡からくる不安に苦しみ、そして回復への道のりは信じられないほど困難でした。でもこの傷跡を受け入れることで、“傷跡が持つ真の力”を実感できたのです」

同誌のインタビューでケリーは、自然分娩能力を最大限に引き出す「ヒプノバーシング(催眠出産)」で出産希望だったものの、合併症を発症してしまい、急遽帝王切開になったことを明らかに

「医師から帝王切開をしなければならないと言われたときは、とても動揺しました。もちろん、私の出産の計画ではなかったから」

「私は泣き出してしまって…。“母になる”ということを、初めて学びました。自分の希望するプランがあったとしても、私のわがままで赤ちゃんを危険にさらしたくはなかったんです」

さらに赤ちゃんと家に帰った後、彼女は感染症にかかり、病院に戻って再び傷を切り開く必要があったという。

現在は、帝王切開の傷跡を誇りに思っているというケリー。カリフォルニア州ウェストレイクビレッジで心理療法士をするカーラ・コーン氏は、彼女が世間に与える影響について<ハフポスト>にこう語った。

「多くの女性は傷跡が見えることに不快感を覚え、隠そうとしています。しかし、『スポーツ・イラストレイテッド』で帝王切開の傷跡をオープンにすることで、産後の女性に“傷跡は恥ずべきものではない”というメッセージを届けられるはずです」

「この写真は、女性の体は赤ちゃんを産んだり、育てたりすることにおいて、不思議な能力と魔法を持っているのだと示すものだと思います。体の多様性や不完全さが、私たちをさらに美しくするのです」

またカーラ氏は、この写真を目にした男性読者に対しても、同じようなメッセージを伝えられると考えているそう。

出産における女性の体の強さを表現したケリー。彼女の姿は、きっと多くの人に勇気を与えるはず――。