デジタル化が進み、誰もが簡単に「画像生成AI」を使えるようになった今、AIで生成した“モデル”も世界中で話題に。しかしそのモデルたちが、非現実的な体型の基準を助長する可能性があると指摘されている。

AIモデルを起用するメリットとリスクは?

NEW YORK POST>が報じたところによると、現在、独自のAIモデルを求めるブランドが殺到しているとのこと。AIモデルであれば現実に存在しないため、スキャンダル等があった場合の解雇のリスクもなく、継続して広告に起用できるのでコストも削減できるという。

現在注目を集めるアイタナ・ロペス(25歳)は、バルセロナを拠点とするフィットネスインフルエンサー兼ゲーマーという設定のAIで生成されたモデル。平均して月に3,000ドル(約44万円)ほどの収益を生んでおり、最高10,000ドル(約147万円)の月収を作ったこともあるという。

instagramView full post on Instagram

企業側はブランドを代表する理想の人物をつくりあげられるものの、一方で、非現実的な体型の基準を助長する可能性があると指摘されている。

これはなにも彼女のような見た目や体型に向けられているのではなく、非現実的な存在であるAIが今ある“美の基準”を強化していることや、広告のために起用されているにも関わらず過度に性的であるという点などが、重なり合って議論されている。

なおアイタナ 生成したAIモデルエージェンシー「ザ・クルーレス」のルーベン・クルス氏は、「この“美の価値観”に沿っていないと、ブランドは興味を示さないでしょう。仕組みを変えるには、ブランドのビジョンを変えなければいけない」と主張している。

AIが生成した“理想的な体型”

NEW YORK POST>によると、摂食障害に関するコンテンツや研究を公開しているウェブサイト<The Bulimia Project>は、SNSのデータをもとにAIが“理想的な体型”をどのように認識しているかを調査

画像生成AIのDall-E 2、Stable Diffusion、Midjourneyによってつくられた「2023年のSNSから見る“完璧な”男性/女性の体」の画像は、“非現実的な”体型を広く示したという。全体の40%(女性は37%、男性は43%)が筋肉質な男性と女性の現実離れした体型を描いていたとのこと。

次に範囲を広げ、インターネット上の画像をもとに同じように画像生成をすると、肌や髪、目の色に多様性が示されたものの、体型は変わらずだった。

closeup of using smartphone on holographic background
Qi Yang//Getty Images

SNSが非現実的な体型を助長している可能性も

しかしインターネット上の画像よりも、SNSの画像をもとにつくられたものの方がはるかに性的であり、不釣り合いな体のパーツが多く「不安を煽る」ものであったと<The Bulimia Project>は比較している。

「SNSが、どのコンテンツが最も多くの人の目に留まるかに基づいてアルゴリズムを使用していることを考えれば、AIのレンダリングがより性的なものになるのは容易に想像がつくでしょう。推測しかできませんが、AIがSNS上で見つけた“現実離れした体型”をこれほど多く生み出したのは、これらのプラットフォームがそもそも非現実的な体型を助長しているからだとも考えられます」

最後に、「社会の非現実的な美の基準は、心身の健康を害する可能性があります」と記している。