専門医が解説!妊活前に知っておきたい「妊娠」の基礎知識
月ごとの妊娠率は、30歳未満の女性で約20%なのだとか
「妊娠」と「セックス」に関する知識が保健体育の授業止まりだと、「避妊をせずにセックス=すぐに妊娠」と思い込みがち。そして、実際に「赤ちゃんが欲しい」と思った段階で、妊娠が想像以上に複雑で難しいことに気付く女性やカップルは多いよう。
たとえば、イギリスでは「how to get pregnant(どうすれば妊娠できるか)」というキーワード検索が、月に1万2000件もあるとのこと。また、同国では7組中1組のカップルがなかなか妊娠できず苦労することも判明しています。
将来的に妊娠を考えているのであれば知っておきたい、専門医が解説する「年齢別の妊娠率や妊娠力アップのヒント」を<コスモポリタン イギリス版>から紹介します。
【INDEX】
・毎月の妊娠率と、妊娠までにかかる期間は?
・セックスのタイミングは?
・排卵期はいつ?
・妊娠率を左右する生活習慣とは?
・妊娠率を左右する他の要因は?
・40歳の妊娠率は?
・婦人科を受診するまでの適切な妊活期間は?
・妊活はいつ始めるべき?
毎月の妊娠率と、妊娠までにかかる期間は?
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンが、英国生育学会(British Fertility Society)と妊娠検査薬ブランド「クリアブルー」と共同で、 妊娠率と関連する事実をアメリカ生殖医学会(American Society of Reproductive Medicine)で発表。 30歳未満の女性は毎月の妊娠率はわずか20%ほどで、この確率は40歳になるとさらに約5%まで低下するとのこと。これらの統計は、女性が月経周期ごとに妊娠する確率の調査をもとに算出されているそう。
前述の情報を踏まえると、生殖能力に問題がない30歳未満の女性であれば、大抵は6ヵ月以内に妊娠できることに。ただし、6ヵ月以内に妊娠できなくても心配には及ばないそう。
イギリスの国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Care Excellence)のガイドラインによれば、「一般的に女性が40歳未満のカップルでは、日常的(2~3日に1回)に避妊をせずに性交すると10組中8組以上が1年以内に妊娠。さらに、10組中9組以上のカップルが2年以内に妊娠する」とのこと。
セックスのタイミングは?
繰り返しになりますが、妊娠は「セックスをすればすぐできる!」という単純なものではありません。妊娠しやすい期間は、排卵の約5日前から排卵日まで。これは、「妊娠可能期間」と呼ばれ、この期間中に性交を数回することで妊娠率は上昇するとのこと。
「妊娠は、女性の体内で多くのことが正常に、そして正確なタイミングで起こって初めて成立します」と話すのは、「クリアブルー」を製造するスイス・プリシジョン・ダイアグノスティックスの臨床研究ディレクターを務めるサラ・ジョンソン医師。「まずは、排卵が前提になりますが、そのためにはホルモン値が適切な水準でなければなりません。また、妊娠率を最大限高めるには、卵子が卵管を下りてくる段階で受精準備が整っているよう、精子が排卵前に女性の生殖器内にいるといいでしょう」。
卵子が受精可能なのは、排卵後約24時間以内。なので、受精は基本的に早ければ早いほど良いとのこと。
排卵期はいつ?
しかし、女性の月経周期には個人差があるため(また、期間も人によって大きく異なるため)、排卵前にセックスのタイミングを計るのが難しいことも。
「正しいタイミングは、エストロゲンが上昇するときです」とジョンソン医師。
「このタイミングで、女性の生殖器は精子に適さない(数分間しか生存できない)環境から精子に適した環境に変わり、精子は5日間以上生存できるように。受精のために、卵管まで移動できるようになるのです」
月経日を記録して排卵日を算出するアプリは数多くあるものの、ジョンソン医師いわく「日付を見るだけでは排卵日は把握できない」のだとか。最適なタイミングを計るには、以下3つの方法を用いると良いそう。
1.エストロゲンを検出する排卵日予測検査薬を使う
2.基礎体温を測る。(起床直後の体温で、排卵時を機に上昇する)
3.おりものの変化をチェックする
万事うまくいって精子と卵子が出会い、ともに異常がなければ「胚」が成立。その時点で「女性の子宮は胚が着床し胎児に成長できるよう、正確なタイミングで着床可能な状態になっている必要があります」とジョンソン医師。しかし、これが必ずうまくいくとは限らず、その理由は医療専門家もまだ研究中とのこと。
「現在、多くの研究が行われていますが、私たちもまだわからないことが多いのです。妊娠できない多くの女性やカップルの最終診断が、『原因不明の不妊症』となるのはそのため。どうして妊娠できないのか、その原因が医師にも特定できないからなのです」
妊娠率を左右する生活習慣とは?
特定の生活習慣によって、毎月20%という妊娠率は上下することがわかっています。
「喫煙により妊娠率は下がることがわかっています。喫煙するパートナーと同居している場合は、受動喫煙でも同じことが言えるのです」と話すのは、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのウィメンズヘルス研究所で、生殖科学を専門にするジョイス・ハーパー教授。
「痩せすぎや太りすぎも妊娠までにかかる期間の長期化の原因に。極端に痩せすぎの女性の場合、月経周期が完全にストップすることも。当然ながら排卵しなければ自然妊娠はできないため、すぐに医師に相談するべきでしょう」とアドバイス。
「太りすぎの場合は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)となる可能性があり、これも排卵のトラブルの原因に。PCOSだと診断されれば治療可能であるため、生理不順の場合には婦人科に相談しましょう」とハーパー教授。
妊娠率を左右する他の要因
プラスの影響を与えるとされること:
・健康的な食習慣。男女ともに、妊活開始前からアルコールやカフェインを控えるなど、健康的な生活を心掛ける
・定期的な運動
マイナスの影響を与えるとされること:
・殺虫剤を使ったり、X線に晒されたりする仕事
・妊娠に影響を与える薬の服用。このような薬は多いため、医者と相談し妊娠力に影響を与えない代替の薬がないか相談してみましょう
・男性の場合、過剰な飲酒による精子の質の低下
・男性の場合、体温の上昇。陰嚢(いんのう)の体温が上がりすぎないよう、ボクサーショーツなどのゆるめの下着がベター
・性感染症(HIVや性器結核など)
・思春期後の流行性耳下腺炎や、停留睾丸、POCS、子宮内膜症、月経周期トラブルといった健康上の問題
40歳の妊娠率は?
女性は一生分の卵子を備えて生まれてくるため、とりわけ35歳以降は、妊娠率が下がるとのこと。また、毎月卵子を平均ひとつしか排卵しないため、一生で約500の卵子しか排卵しません。37歳までに卵子の90%が消滅するため、40歳前後で妊娠できる確率が毎月わずか5%まで低下するのだそう。
「年齢とともに、卵子の量と質は低下します」と言うのはジョンソン医師。
「40歳までに急速に下がるわけではなく、生まれたときから継続的に下がっていきます。女性は100万~200万の卵子を持って生まれ、初経から毎月約1000個の卵子が消滅し、それが閉経まで続くのです。卵子の染色体は繊細で、老化が進むほど異常が出てくる可能性が高まるため、卵子の質は低下。これにより不妊や流産に加え、染色体異常の赤ちゃんが生まれる可能性が増えることになります」
一方で、男性は思春期から一生を通じて精子をどんどん生み出し、その数は1回の射精につき約1億とされていますが、同じく年齢とともにその質は低下するそう。男性パートナーの年齢が45歳を超えると、流産や自閉症などの症状を持つ子どもが生まれるリスクが高まるとのこと。
婦人科を受診するまでの適切な妊活期間は?
「35歳未満なら、1年間妊活をしても結果が出ない場合に相談しましょう。35~40歳なら6ヵ月試してみてから、40歳(以上)ならすぐにでも受診して」とジョンソン医師はアドバイス。ちなみに、35歳未満の女性であれば体外受精で出産できる確率は1回につき約30%、40~44歳では10%、45歳以上だと0%に近いとのこと。
妊活はいつ始めるべき?
これは、完全に個人の判断に委ねられるもの。まず、誰もが赤ちゃんを欲しいというわけではないため、子どもを持つことが「社会通念」だからという理由だけで妊活プレッシャーを感じる必要はないとのこと。ハーパー教授は純粋に、いざという時に適切な決断ができるよう、生殖能力に関する正しい情報を周知させたいと願っているとのこと。
「私は30歳で子どもを生みたかったけど、当時のパートナーはまだ心の準備ができていませんでした。35歳になって“子どもを望む”パートナーと出会い、すぐに挑戦。でも、なにをやってもうまくいかなかったから、長くて険しい妊活の旅を歩むことに。40歳になる直前に第1子を出産。他の女性に、私のような経験をしてもらいたくはありません」とハーパー教授は語ります。
「何年間も、子どもが一生生まれないのではないかと思ったけれど、(事実を)受け入れられなかったのです」
一般的に出産の高齢化は進んでいて、多くの国では女性の第1子出産年齢が30歳を超えているとのこと。
「イギリスでは、女性の20%が生涯子どもを持たないということがわかっていますが、そのうちのどれだけが自ら選んでそうなり、どれだけが状況の巡り合わせでそうなったのかは不明です。男女ともに、出産について十分な情報を得たうえで決断できるよう、自分たちの生殖能力について理解して欲しいのです」と教授は話します。
※この翻訳は、抄訳です。
Translation: Takako Fukasawa(Office Miyazaki Inc.)