放送作家・映像作家のカレン・キカックさんが、親友のジェーンさん(仮名)と出会ったのは2004年の頃。大学の授業が一緒になり、二人はすぐに友達に。それから、大学生活の多くの時間を一緒に過ごしたといいます。

二人の親交は卒業後も15年以上にわたって続き、お互いにキャリアを積みながら、恋人との別れや家族の問題など様々な悩みを共有し、ともに悲しみを乗り超えてきたといいます。ところがカレンさんの妊娠を機に、そんな関係に変化が訪れ――。

本記事では、ライフイベントの変化によって親友と疎遠になったと語るカレンさんが、その友情を取り戻すまでの体験談を<コスモポリタン イギリス版>からお届けします。

【INDEX】


文:カレン・キカックさん

一度も子どもに会ってくれない

ジェーンは、私の数少ない友達の一人。彼女は物静かな性格をしていて、「お金」や「結婚」「子ども」といったトピックによく見られる、社会が作り上げた“理想”や周囲の“期待”などには、あまり興味がないように見えました。

10年以上もの間、お互いに忙しい時間を過ごしていたにも関わらず、私たちは月に1~2回は会うようにしていました。私のベビーシャワーが開催されるまでは――。

close up or woman using smart phone
Tim Robberts//Getty Images

私の子どもはもうすぐ1歳半を迎えるのに、ジェーンはこれまで一度も子どもに会おうとしませんでした。それどころか、最近の日常生活をどのように送っているのかすら聞いてこないのです。

ジェーン自身はそんなつもりではないのでしょうが、これまでの人生で最も大変だった「妊娠・出産」の時期に、彼女が突然離れて行ってしまったことを、私は忘れることができませんでした。

どうして彼女が「そんなつもりではない」ことがわかるのかというと、私も前に同じことをしてしまったからです。ジェーンほど極端ではありませんでしたが、自分の子どもが生まれる前、特に子どもが欲しいと思っていなかったときは、友達が妊娠したことを知ると、距離をおきがちになっていました。

数年前、別の親しい友達とブランチを食べている際に妊娠を告げられたときは、その瞬間に「私だけ注文したお酒を飲むのは申し訳ない」と感じ、彼女のネイルが体に悪影響を及ぼさないのか、とても不安になりました。そして、こんなに早く友達の人生から私の居場所がなくなるなんて、とても信じられませんでした。

family fun beautiful shadows on wall of mom playing with her daughter childhood concept, harmony in family
Oleg Breslavtsev//Getty Images

子どもをもつ人との“溝”を実感

私自身の過去を振り返ると、友人の妊娠を知ったとき、私は自分のことを“重荷”のように感じたのを覚えています。彼女が妊娠を機に手放した「子供のいない人生」の“残り物”であるようにも感じました。さらに、「子どもがいない人には理解しがたい感覚や目的を見つけた」ということをほのめかされたように感じ、苛立ちを覚えたことも。

これらはすべて、友達が実際に言及したわけではありません。その頃の私は、心のどこかに埋め込まれた何か根本的な問題があると感じていました。その後の私たちの友情関係は、順調というわけではなかったにしろ、壊れることはありませんでした。そして私自身が母親になった今、友達の妊娠中や産後数カ月間に寄り添ってあげられなかったことを、とても後悔しています。

私を含めて、多くの親しい友人たちが母親になりました。妊娠・出産を経験してやっとの思いで“ママ友”に仲間入りしたのに、後ろを振り返るとそこには崖があり、前へ進むと一方通行の暗い道がある感じで、「子どもをもつ人」と「子どもをもたない人」の間に深い溝があるような、妙な気分になります。

一方で、「子どもをもつ人」と「子どもをもたない人」たちの距離が縮まっているような変化を感じることもあります。たとえば最近だったら、子どもがいない友人を誘って一緒に出かけることが増えました。そのたびに彼らは「ママの夜遊びの時間だね!」と、私の気分を盛りあげるセリフを口にしてくれます。

a close up shot of friends clinking sparkling wine glasses at sunset
Yana Iskayeva//Getty Images

「子どもをもたない選択」への偏見も

私たちは、はじめから自分と同じような人としか関わりをもてないのでしょうか? 個人では、子どもをもたないという選択をしている人とも変わらず関わり合いたいと思っていても、社会が分断や対立を煽っているように感じることもあります。

子どもをもたない選択は、立場や環境によってはまだ“珍しい”と認識される場合があります。ある有名人が子どもをもたない人生における素晴らしい点について話した際に、ひどい批判の声が上がったことを考えると、この選択が“普通のこと”のように認識されるまでは、まだまだ遠い道のりだということがわかります。

そんななかでも、子どもをもつ人ともたない人が関係を維持するためには、お互いの意見を尊重し、歩み寄ることが必要なのかもしれません。

ではそう思っていながら、なぜ私は1年半ものあいだジェーンに自分から連絡ができなかったのか――。それは、私が頑固で繊細で、小心者だったからです。ところが、娘のオリビアが1歳半を迎えた日に事態は一変しました。

私は人生でたった一度、今回だけは勇気をもって、自分からジェーンに連絡してみようと決めたのです。私がジェーンにメールを送ると彼女はすぐに返事をくれ、すぐに会う約束をしました。子どもが生まれる前にいつもしていたように、待ち合わせを「木曜日の夜に流行りのブルワリー(ビール醸造所)で」と決め、夜遅くまで時間をともにしました。

couple holding hands
Iuliia Bondar//Getty Images

1年半ぶりの再会と決意

ジェーンとは1年半も顔を合わせていなかったので、隣の席に座るのは少し変な感じでした。おそらく彼女は、私が妊娠してから連絡をとるのをやめたことに対して罪悪感を感じていたと思いますし、私が帝王切開をしたことすら知らなかったはずです。

私たちは、「もっと早くに連絡をするべきだった」と互いに謝りました。

ジェーンは、突然私から離れた理由について「妊娠や出産、産後について何をどう手伝えばいいか分からなかったし、アドバイスできることもなかった」と、当時の気持ちを打ち明けてくれました。私はそのときに初めて、ジェーンが乳児や幼児が苦手なことを知ったのです。

彼女は続けて「子どもをもつ友達と、こんな風に遊んだのは初めて」とも言いました。実際に私たちが再会して過ごした時間は、昔とは何も変わっていないように感じました。よく一緒にお酒を飲んでいた場所で、昔のように一緒にいる時間を楽しんだのです。

walking the path of happiness
Kosamtu//Getty Images

勇気を出してメッセージを送ったとき、ジェーンが返事をくれるかどうかはわからなかったし、もし返事がなかったとしても、その事実を受け入れる覚悟はできていました。

再会を果たしたあの夜に、私と彼女の間柄になんの変化もないように感じた一方で、子どもを生み、私の人生が大きく変わった以上、私たちの関係がこれから先どのようになっていくかはわかりませんでした。母親である私と子どもをもたないジェーンでは、ライフスタイルにどうしても違いが出てくる部分があるのは否めません。

今すぐに…は難しくてもこれから先の未来のどこかで、また私たちが一緒に過ごせる日がくると願っている一方で、すべての友情が永遠に続くものではないということも理解しています。それに、疎遠になった友達の価値が下がるわけでもありません。

ただ、そうわかっていても、疎遠になったという事実と気持ちに折り合いをつけるのは苦しいことです。

再会した日の夜、私の車から降りたジェーンは、振り返ってこう尋ねました。

「いつ、あなたの赤ちゃんに会わせてもらえる?」

私は、ジェーンやそのほかの友達と交友を続けるために努力するつもりです。子どもをもつ人と子どもをもたない人たちの間にある“溝”を埋められる日が来るまで。

※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。元記事に関連する文化的背景や文脈を踏まえたうえで、補足を含む編集や構成の変更等を行う場合があります。
Translation: Risa Tsubakihara
Cosmopolitan UK