いつかは子どもが欲しいと思っていても、キャリアと育児の両立や、産休後の仕事復帰に対して不安を感じている人もいるかもしれません。

本記事では<コスモポリタン イギリス版>より、マネージメントコンサルタントとして働いている、アコスア・アチャンポンさんの体験談をお届け。時間的な制約や精神的な負担により、これまでと同じようには働くことが難しい一方、親になったからこその気付きやスキルがあると語る彼女。

そのなかで見つけた、仕事と子育てへのモチベーションとは――。

語り:アコスア・アチャンポンさん


【INDEX】


職場復帰への不安

1年ぶりに迎えた職場復帰の日。通勤ラッシュの混雑した車内で、新しい自分にとっての“普通”を考えながら、自分がワーキングマザーであることを改めて感じていました。

子どもが生まれてからは育児に夢中になっていたので、今後のキャリアについて考える時間はゼロ。産休の終わりが近づくにつれ、仕事と育児を両立できるのかを考え始めたものの、全く自信が持てませんでした。

辛いこともあったけれど、達成感にあふれていたマネージメントコンサルタントとしてのキャリアと、新たな愛を見つけた「母親業」。両方とも大変だけど、とてもやりがいがあるし、全力で取り組まなければいけないという共通点はありました。

さらに不安だったのは、業界のマイノリティになったこと。男性が多い環境で女性は少なく、母親はさらに希少だったため、自分自身、そして周りの人が、私が今までと同じようには働けないと受け入れる必要があったのです。

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私個人としても孤独を感じていましたが、実際に多くの母親たちが同じように孤独や不安を感じているというデータもあります。

統計によると、41%の母親が出産・育児が昇進の妨げになっていると感じていて、38%が長時間働いている人が上司から認められやすいと考えているそう。さらに、コロナ禍の影響で子どもの保育施設が不足し、父親より母親の方が1.5倍仕事を失う、あるいは辞める必要があったという結果も。

また<Pregnant Then Screwed>によると、62%の保育園が家賃、住宅ローンと同じぐらいの費用がかかり、4人に1人は、費用を賄うために食費、光熱費、衣服代を節約しなければいけないほどだといいます。

「仕事と子育て」の葛藤

リスクアナリストとして働くヘンリエッタ・オウスさんも、子育てとキャリアを両立させる難しさを感じている一人。

「産休後に仕事に戻ると、同僚たちは私が彼らと同じように仕事ができると思い込んでいました。実際には、授乳のために夜は何度も起きないといけないし、眠れない日々が続いていたのです。さらに会議のために早く起きなければならなかったので、より不安になりました」
「パンデミックの間、娘の体調が悪かった時期があり、会議に出席せず娘の看病だけをするか、 “両立”するか悩みました。結局、仕事の責任を無視することができなかったので、後者を選びましたが罪悪感を感じました。すごくストレスを感じていたのに、出産前と同じように働けると証明するために、自分自身に大きな負担をかけていたんです」

実はオウスさんのように「孤立している」と感じている働く親は多いそう。周産期メンタルヘルスを専門とする認知行動療法士のジュヌヴィエーヴ・ボアチさんは、出産後の仕事復帰についてこう説明します。

「出産後に仕事に戻るのは大きな変化です。以前の自分にできたことでも、制限がかかることでストレスになる可能性があります」
「私たち人間は、将来や物事に対して確信が持てないときに不安を感じます。仕事に戻ると、『できるかどうかわからない』という壁に直面する可能性がありますが、それは非常に一般的なこと。これらの経験を“当たり前”にする必要があり、親には、過度のプレッシャーがかからない調整期間が必要です」

親になったことで
仕事に良い影響も

私自身、仕事に戻るという選択に対して強い罪悪感を感じ、職場に戻った最初の1カ月間は、何度もトイレで静かに泣いたことを覚えています。会議にも完全に集中できず、すべてにおいて失敗しているように感じていました。

しかし時が経ち、新しい生活に慣れてくると、物事の見方が変わり始めました。私の新しいアイデンティティとスキルは、さらなる成長に役立つものなのじゃないかと思い始めたのです。

デジタルエージェンシー「A Vibe Called Tech」の創設者であるシャーリーン・プレンぺさんも、育児が仕事にいい影響を与えていると感じているそう。

「私が以前読んだ本に、『母親になることには絶大な責任を伴う』という一節がありました。世間では、親は子どものためにそばにいる必要があり、子どもを養う責任があると思われています。でもそれだけではなく、親には子どもが尊敬できる人になる責任もあるのです」

彼女自身、ビジネスを始める大きな動機となったのが息子の存在。彼にとっての最高のロールモデルになろうとすることで、大胆な選択ができるようになったのだとか。

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私の場合は、母親になったことで「共感力」が高まり、熱心に耳を傾けることの重要性を学びました。これは職場でも、すぐに決断するのではなく、まずは「話を聞く姿勢を持つ」ということにつながっています。

そしてなにより、忍耐力なしに親はなれません。過去6年間の私は、過程は関係なく、とにかく結果を出す必要があるキャリアに時間を費やしてきました。しかし、今の私は、物事の背景にある理由に感謝できるように変わったのです。

変化を受け入れる

仕事に戻った最初の日、パソコンの電源を落としながら「働く母親になるには犠牲が必要であり、その犠牲は報われる必要がある。そうでなければ価値がない」と気づきました。

それから2年経った今は、より賢くそして一生懸命に、与えられた時間内に仕事で最善を尽くしています。ほとんどの日は、午後6時にはパソコンの電源を切り、そのあとは子どもたちとの時間を過ごしている…それでいいんです。

現実的に、子どもが産まれる前の状態に戻ることは決してできないでしょう。そして戻るべきではないとも思います。ボアチさんもそれに同意し、変化を受け入れることを推奨します。

「時に私たちは、親である自分自身に非現実的で高い目標を与えています。それにより燃え尽き症候群、感情的な倦怠感、ストレスを引き起こす可能性があるのです」

出産後に仕事に戻ることを考えると、恐ろしいと感じるかもしれません。責任は増えますし、自分を以前よりも弱いと感じるかもしれません。

でも、その分たくさんの力を得ています。いろんなことをやりながら泣き叫ぶ赤ちゃんのお世話をしているうちに、両立のプロになっているでしょう。

それに親が職場にもたらすスキルや影響も企業には必要です。一方で、会社が子育てをする親に対して過剰に期待することは課題として残っています。

親になることは、新たな自分を形作ります。新しい自分に慣れるまでには時間がかかるかもしれませんが、美しい新たな才能も得られるはず。一歩踏み出す勇気や、自分らしくいることが大切になってくるのです。

さまざまな視点での議論が必要ではあるものの、一人一人が勇敢な決断をするたびに、社会全体が答えに確実に近づいていくのだと思います。

※この翻訳は抄訳です。
Translation: Haruka Thiel
COSMOPOLITAN UK