俳優・草刈正雄さんの長女で、タレントとしてTV番組などに出演し、その天真爛漫なキャラクターで一躍人気となった紅蘭さん。2歳の娘さんの母親で実業家としての顔も持つ紅蘭さんは、昨年Instagramに寄せられた「母親らしい格好をしろ」という批判に対して声をあげたことでも話題に。

そもそも“母親らしさ”とは何なのか、好きな格好をしてはいけないのか、紅蘭さんが考える母親像について語ってもらいました。

――紅蘭さんの格好について寄せられた批判的なコメントについて、どう思われましたか?

世の中には様々な人がいて、色んな意見があるのは当たり前のことですが、私がその人を傷つけたわけではないですし、心の中にとどめておけばいいことを悪口のように書いてくるのは不思議に思いましたね。

人の格好なんてどうでもいいはずなのに、そこに対してわざわざ意見を言うというのはよほど他人に興味があるのかなと。今回は服装の話ですが、要するに私の外見について言っているわけじゃないですか。見た目についてわざわざコメントを書き込む気持ちは、理解できなかったですね。

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――批判に対するご自分の考えを投稿しようと思った理由は?

私が意見を言ったのは、服装のことだけではなくて、“~らしく”という言葉が嫌いだったからです。「女だから、女らしく」「男だから、男らしく」「この職業だから、この職業らしく」と、性別や職業で“~らしく”というのは、その人を一人の人間として見てない、個性をないがしろにしてしまっている言葉だと思います。

いい人ぶるつもりはないですけど、“~らしく”という言葉に縛られて悩んでいる人が、私の意見を読むことで気持ちが楽になって、「このままでもいいんだ、そういう考え方もありだね」と思ってくれるといいなと思って。私のことをわかってほしいというよりは、悩める人たちを勇気づけるためにも投稿しました。

――“らしさ”に合わせなくてはいけないような風潮に、違和感を持ったのはいつですか?

芸能界に入ってから、世間は“~らしく”という風に人を見るんだということを知りました。高校生のときにアメリカへ、その後バックパッカーとしてアフリカに行って、日本に帰ってきたタイミングでそのままTVに出演したら、「草刈正雄の娘なのに!」と言われて。「逆にパパの娘らしくしなくちゃいけないの?」と正直驚きました。

パパは正統派で、妹の麻有は清純派、私はちょっと破天荒でぶっとびキャラみたいな感じだったので、パパの“娘なのに”とか“娘らしく”とか全然知らない人から言われたときは、「家族はみんなが同じカラーじゃなきゃいけないのかな」となんだか変な感じでしたね。

――そもそも“母親らしい”という言葉について、どう思われますか?

私は草刈紅蘭として生まれてきて、他は後からついてきているものなので、仕事や性別、母親についての“らしさ”は考えたことがないです。

私は娘にとってのママでしかなくて、母親らしいかどうかは娘が決めること。少なくとも母親らしさは、他人が決めることじゃないですよね。

あえて言うなら、母親らしさというのは容姿や服装といった見た目のことではなくて、行動に現れるものじゃないかな。母親は何かあったときに命がけで子どもを守るじゃないですか。そういう行動力のことですよね。

――日本では年齢でも「らしさ」を求められる傾向にあると思いますが、これから年を重ねていく上で、どんな風にファッションを楽しんでいきたいですか?

ずっと自分らしく、好きな格好をしていたいですね。たとえば私が50歳、60歳になったときに好きな格好は今と全然違うかもしれないし、もしかしたら変わらないかもしれない。それは歳を重ねるにつれて変わっていくかもしれませんが、マインドは今と変わらないですね。

――母親だから、何歳だからと、好きな格好ができないと悩んでいる方にアドバイスはありますか?

今回コメントやDMをたくさんいただいて、我慢している人が多いんだなと知りました。ただ私は「やっちゃいなよ!」とも言えないですし、伝えるなら「好きにしたらいいと思いますよ」という言葉になってしまいます。

きっと何があろうとも突き通す勇気がないと、人に何か言われたときにすぐ元の姿に戻ってしまうのかなと思うんです。 人と比べたり、人の目を気にしたりしていたら、好きな格好なんてできないですよね。

私にしてみたら「どうして好きな格好をしたらいけないんだろう?」「母親らしいとか女らしいとか、誰が決めたんだろう?」という感じで、それほど気にしなくてはいけないことなのかとすごく不思議に思うんですよ。みんな周りの目を気にしてるんだなと感じました。

――普段から自分らしくいるために、心がけていることはありますか?

あくまでも私の考えなので押しつけるつもりはありませんが、この“草刈紅蘭”という体はひとつしかないんです。私より綺麗で魅力的な女性は山ほどいるけど、自分にしかできないことはたくさんあって、娘にとっては私が一番の存在。だから自分を否定せず、人と比べないで愛することができれば、自分らしく生きられると思っています。

自分を好きになるのは簡単なことではないですが、シンプルにいうと自分に嘘をつかなければいいんですよ。偽っていたらどう頑張っても、自分のことは好きにはなれない。今は整形したり写真を加工することができて、見た目に自信を持つことはできるけど内面まで愛せている人は少ないのかなと感じています。もっと内面にも自信を持つことができたらいいですよね。

――自分に自信を持つためには、どうすればいいと思いますか?

もっとNOと言えるようになればいいじゃないかなと思います。みんなの意見と自分は違うなと思ったときに、「違うんじゃない?」と言える力は素晴らしいことだと思うんです。違うと思っているのに、周りに便乗するとどんどん偽りの自分ができてしまう。そうすると自分自身がわからなくなって、いつの間にか自分のことを好きじゃなくなってしまいますよね。

だから周りの目を気にしてやりたいことを我慢するのは、自分を偽っているのと同じじゃないですか。だからまず嘘偽りがない自分になる。そうなれば、もう怖いモノなしになりますよ! 自信が持てたら好きな格好もできるし、ありのままの自分でいられます。

――紅蘭さんが自分を好きになろうと思ったのは、何かきっかけがありますか?

自分らしくいたいと強く思ったのは、小さい頃どこに行っても、“紅蘭ちゃん”ではなくて、“草刈正雄の娘”だと紹介されて、自分には名前がないような気持ちになっていたことが大きいですね。パパの存在が大きすぎて、いつも目の前にドンと立たれているような感覚でした。

だから自分を認めてもらえるように得意なことを見つけたくて、ダンスを習い始めたんです。けれど小学生のときにやっと発表会でセンターに立てたと思ったら、それさえ「草刈正雄さんの娘さんだからでしょ」と言われて。自分で頑張って得たことでさえパパのおかげで、失敗すれば「草刈正雄さんの娘なのに何やってるの?」になるんですよ。

普通の家庭ではあまりないシチュエーションですよね。何をやってもパパの娘としか見てもらえないことがショックだったし、悔しかったから「自分らしくいたい」と思えたんです。「私もいるんだよ!私を見て!」ではないですけど、それで派手になったのもあるかもしれない(笑)。意見をはっきり言えるようになってから、自分らしさをすごく大切に思うようになりました。

――紅蘭さんが小さい頃に経験したことやそのときの想いを、娘さんにも伝えたいですか?

娘には自分と同じ思いをさせたくないなと思いますよ。パパレベルではないですが、同じような経験をさせてしまうかもしれないですよね。でもそれはそこに生まれたから仕方がない。私も落ち込んだ時期はあったけど、その悔しさが今の私を作ってくれたと思います。

パパのことを言われれば言われるほど自立心が芽生えて、私をやる気にさせてくれたから会社を独立させることができたと思うし、心の中で思い描いていたことを実現できました。今思えばよかったですね。娘も大変かもしれないけど、家族を変えられるわけではないし、そこをどう捉えて解釈していくか、どうやって自分を創り上げていくか、私が娘を見守ってあげたいです。

――では最後に、どんな母親でありたいと思いますか?

本当はしたいファッションやメイクがあるのに、母親になったことで好きな格好ができないというのは、子どものためにどうなんだろうと思ったんですよ。

子どもが「私のせいでママが好きな格好ができない」と気づいたとき、私だったら絶対にショックを受けると思います。ママには自分らしくいてほしいし、私がいるからママの人生が変わってしまうのは悲しい。子どもを幸せにするためには、まず自分が幸せじゃないと。「ママが笑っていないと、子どもが笑わない」というのは本当にその通りだと思います。

人に言われて、自分がやりたいことを我慢して生きていく人生って何? という感じじゃないですか。一度きりの人生だから、自分らしくエンジョイしたほうがいい。だから娘にも、人目を気にして流されて、周りの意見に同調しなければいけない環境で育ってほしくはないです。

まだ2歳になったばかりで学校に通っているわけではないので、私がお手本にならなきゃと思っていますが、「自分らしくいていいんだよ」とわざわざ言葉にしなくても、私を見ていたら伝わるんじゃないかなと思っています。