仕事に遅刻しそうなとき、急いで出たのに忘れ物に気づいて慌てて家に戻る…でも、あれ、何を忘れたんだっけ?--こんな経験、ありませんか?

急いでいるのに戻るほど重要な忘れ物だったのに、なぜか思い出せず、頭の中は霧がかかったようにぼんやり。この状態は「ブレインフォグ」といって、その大きな原因の一つがストレスなのだそう。

今回は、<グッド・ハウスキーピング>からブレインフォグの症状と原因、そして対処法をお届けします。

※この記事は、診断の代わりとなるものではありません。症状について不安がある場合には、必ず医師または資格を有する医療従事者の助言を仰いでください。

ブレインフォグとは

「ブレインフォグ」とは医学用語ではなく、頭の中がモヤモヤ、ぼんやりした状態を表す言葉。集中したり、思い出したりするのが難しく、頭がはっきりとしてさえているときの反対の状態のことを言います。

「霧の日に例えられることもありますが、視界にフィルムがかかったようなイメージです」と語るのは、テキサス大学ダラス校で行動科学と脳科学を専門に研究するサンドラ・チャップマン博士。ブレインフォグは医学的な病名ではないものの、しっかりと向き合う必要があると話します。

「ブレインフォグを経験しているときも、考えたり、仕事をしたりすることはできます。でも、インプットの方ははっきりせず、時間がかかり、アウトプットも普段どおりにはいきません。明晰さ、集中力、記憶力、スピード、そして革新的な思考のいずれにおいても、レベルが落ちるのです」
「ブレインフォグは深刻にとらえられるべきです。なぜなら、脳のエンジン(複雑な神経系)が正常な容量と性能で機能していないという最も一般的なサインだから。そして、ブレインフォグはさまざまな原因によって引き起こされるため、多くの人々が考えているよりも一般的なものです」
strings in brain of girl reading book
Malte Mueller//Getty Images

ブレインフォグを引き起こす原因

脳震とう、化学療法、薬の副作用など、いくつかの医学的な問題が原因になることもあれば、更年期や閉経期にも起こるというブレインフォグ。

よく挙げられる、主な3つの原因は以下のとおりです。

ストレス

米国ストレス研究所によると、ある種の状況では、適度なストレスがポジティブな作用を持ち、記憶力がとぎすまされるという作用が。これはいわゆる闘争・逃走反応で知られるように、ストレスを受けたときに脳が危険信号を送るため、身の安全を守るために、神経系に影響をおよぼす化学物質やホルモンを分泌するから。

しかしストレスが慢性的だと、化学物質やホルモンが必要以上に長く分泌され、海馬が悲鳴を上げてしまいます。海馬は新しい情報を取り込む部位なので、ブレインフォグが起こってしまうのです。

チャップマン博士は「ストレスはコルチゾールの分泌を増やします。これは、記憶力、集中力、そして新しく学習する力を低下させる、有害なストレスホルモンなのです」と説明。

睡眠不足

睡眠が足りないと体が疲労し、脳も疲弊すると語るのは、ホフストラ大学医学部のガヤトリ・デヴィ博士

睡眠は脳の機能をリセットしてくれるだけでなく、不安の予防にも役立ち、あらゆる種類の記憶を固定するのに重要。また、アメリカ国立衛生研究所の研究によると、睡眠不足は集中力の低下を招くといいます。

もっとも、睡眠が脳に不可欠である理由はもう一つ。2019年にボストンの研究者らが行った小規模な研究で、脳内を血液や脳脊髄液が波のように流れ、脳に有害な物質を取り除く動きを発見し、これを「リンス・サイクル」と命名しました。

「睡眠不足、あるいは過剰な睡眠もブレインフォグにつながります。脳に蓄積した有害な物質を取り除く作業が行われるのは、深い睡眠の最中なのです」とチャップマン博士は解説します。

マルチタスク

自分にはマルチタスクをこなす力があると思っている人もいるだろうし、日々のタスクをこなすには、それが必要だと感じている人もいるはず。でも、チャップマン博士は、一度に多くのことを扱うのは、ブレインフォグの原因になると断言しています。

「マルチタスキングは、精神の機敏さや安定性を低下させます」
「脳はマルチタスクをするようにできていないのです。同時にいくつもの作業をしているとき、脳は実際にはタスクからタスクの間で切り替えているので、表面的にしか考えられず、疲弊しています。また、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌も増加します」
flat vector illustration
holaillustrations

更年期とブレインフォグの関係

研究によると、ホットフラッシュなどの症状は睡眠を妨げ、不安を強めることがあるので、更年期では物忘れしやすく、頭がぼんやりする傾向があるといいます。また、ホルモンもこれに関わっており、この時期にエストロゲンが減少することに伴ってブレインフォグが起きるそう。

「世界中の女性の60%が更年期に認知機能の変化を訴えており、こうした訴えは客観的なテストによって裏づけられています」とデヴィ博士。

最もよくあるのは、言葉が出てこない、思い出せない、というもの。これは脳内のエストロゲンの急激な減少と関わりがあり、エストロゲンは脳内の血流を促すため、記憶機能に重要な役割を持っているとのこと。

ブレインフォグとともに現れ得る他の症状

これまで述べてきたように、ブレインフォグはストレス、特定の薬、あるいは疾患の症状として現れるもの。しかしブレインフォグが生じているときには、他にもこんな症状が見られる可能性があります。

  • 睡眠障害
  • 頭痛
  • 混乱
  • 物忘れ
  • 集中力の低下

ブレインフォグの予防法

緊張をゆるめる

日々のストレスレベルを下げ、穏やかに生活することを重視して、マインドフルネスや瞑想、ゆったりとした散歩、ヨガ、読書、ジグソーパズル、ストレッチなどを取り入れましょう。

睡眠を優先する

寝る数時間前はスクリーンから離れる、毎日ほぼ同じ時間に寝て起きるなど、より健康的なルーティーンを見つけて。どちらも、頭がすっきりするだけでなく、体全体でその効果を実感できるはず!

体を定期的に動かす

脳を健康に保つことを含め、運動はいくつもの理由から重要。デヴィ博士は、「エアロビクスの最中は、脳が実際に新しい神経細胞を作っていることがわかっています。特に海馬の領域は、記憶にとって重要で運動は脳の血行も促します。事実、運動は約10%認知機能を高めるのです」と説明します。

carefree woman jogging in idyllic mountain meadow
Malte Mueller//Getty Images

    チャップマン博士がおすすめする方法

    • 1日に最低5回は、すべての刺激から自分を遠ざけ、脳に5〜10分の休みを与える。
    • 自然の中で時間を過ごす。
    • 心に刺激を与える活動をし続ける。ブレインフォグのレベルは変動するため、頭がスッキリしているときはより難しいタスクを、ぼんやりしているときは、自然にできるようなタスクを。
    • マルチタスクを避ける。脳の性能を下げ、コルチゾールを増やすため。
    • 健康的な食生活を送る。心に良いものは、脳にも良い。

    ※この翻訳は、抄訳です。
    Translation:mayuko akimoto
    GOOD HOUSEKEEPING