ファッション心理学を専門とするシャケイラ・フォーブス=ベルが、ファッション業界に長らく根付いている“サイズ問題”について調査し、その核心に迫る。イギリス版『コスモポリタン』より。


試着室で、選んだ服の「サイズ」に混乱したことがある人は、少なくないはず。もちろん、私自身もそのひとり。何本もある私のジーンズは、ブランドによってサイズが12から16(日本のサイズでLから3L)まで異なっている。

ファッション業界は長い間、ひそかに私たちに「ガスライティング(心理的虐待の一種)」を行ってきた。そして私たちは、この問題が自分たちに与えている心理的ダメージを十分に理解しないまま、“現状”を受け入れてきた――。

だが、各国の消費者たちがいま、ブランド各社による一貫性のないサイズ表示を声高に批判し始めている。

young woman trying on dress in changing room
Helen King//Getty Images

『ジャーナル・オブ・ジェンダー&ソサエティ』に掲載された研究結果によると、「標準サイズ」が合わないと気付いたとき、女性は自尊心を傷付けられる。また、服のサイズが合わないとき、私たちはそれを服ではなく自分のせいだと考えてしまうという。

これについて、消費者のサステナブルな選択をサポートする「Sustainably Influenced」の創設者で、同名のポッドキャスト番組のホストでもあるビアンカ・フォーレイさんは、こう話す。

「まさにそれが、私が買い物をしたくない理由です…買い物をすると、落ち込んでしまうのです」

フォーレイさんにとっても、ほかの多くの女性たちにとっても、(かつては「リテール・セラピー」といわれ、気晴らしになるとされていた)買い物は、もはやセラピーといえるものではなくなっている。

大量生産に問題?

バーチャル・パーソナル・スタイリストで、サステナブルファッションにも詳しいレイキン・カールトンさんはこの問題について、次のように指摘。ファストファッションブランドを非難している。

「一元的な品質管理がまったく行われていないような状況で、調達先がこれほど多岐にわたっていれば、一貫性を保つことなどできません」

denim jeans rack
DigiPub//Getty Images

そのほか、人気ブランドのほとんどが、数少ない「スリムな“砂時計形”の体形の白人女性」をサンプルにした時代遅れの標準サイズをいまだに採用していることも、問題だとされている。

サイズは虚栄心の象徴?

現代のファッション産業の誕生に貢献したのは、確かに「サイズの標準化」だった。だが、それはすぐに「ヴァニティ(虚栄)・サイジング」を生み出すことにつながった。あえてサイズを小さく表示するこのヴァニティ・サイジングは、消費者がより小さいサイズを選ぶことがきるように、ブランドが表示方法を変えることを意味する。

やせていることが美化されるようになった欧米の美の基準によって、より小さいサイズの服を着ることができたとき、女性たちは自分に対してより前向きな気持ちを持てるようになった。それは、研究結果でも証明されている。

そして、ブランドは戦略としてヴァニティ・サイジングを採用し、それによって売り上げを増やしてきた。

いっぽうブランドのなかには、平均よりも大きい数値を「標準」としているものもある。研究結果によれば、これもまた、売り上げを増やすための戦略だという(私はこれを、「ヒューミリティ(自虐)・サイジング」と呼んでいる)。

なお『Journal of Consumer Psychology』に発表された研究結果によれば、女性たちは大きいサイズの服を買ったとき、「損なわれた自尊心」を回復させるために、また別の買い物をする(「補償的消費」をする)傾向があるという。

cropped shot of young woman buttoning up her jeans
LightFieldStudios//Getty Images

消費者にも「力」がある

「消費者のボディイメージを刺激すれば、より多くの支出を促すことができる」ことをブランドが知っているのだとすれば、問題があると批判されるサイズ表示を統一させようとすることなど、あるのだろうか――?

実際のところ、こうした状況には変化の兆しもあるとみられている。たとえばH&Mは、サイズ表記について見直す必要があることを認めたと伝えられており、これは大きな前進といえる。

ただ、それでも私たちは、この問題をブランド任せにしておくわけにはいかない。私たちには、消費者としての「力」がある。この問題に関して、ある程度は主導権を握ることができるはず。忘れてはいけないのは、「服があなたに合ったもの」であるべきだということ。「あなたが服に合ったもの」である必要はない。

自分を守るためのヒント

ショッピングは、消費者と売り手の間の「心理戦」であるべきではない。私たちは、ただ批判するだけという態度を捨てて、戦術を身につけるべきだといえる。

サイズ表示に関するブランドの戦略から自分の身を守り、より慎重に買い物をするためには、次の3つのことを覚えておくといいかもしれない。

woman trying on clothes in dressing room
SeventyFour//Getty Images

1)知識を持とう

イギリスのサイズで8か10(日本のサイズでSかM)が合う人でも、ブランドによってはそれより大きいサイズを選ばなければならない。

だが、もともとサイズ表記が統一されていないことを知っていれば、落ち込むことにはならない。研究結果によれば、こうした知識は私たちにとって、自分を守る盾となる。

ブランドが売り上げのためにラベル表示を利用していることを知っていた場合、その消費者に対して、ブランドのこの戦略は機能しないことが証明されている。

2)頼るのはラベルよりメジャー

ブランドのなかには、顧客に適切なサイズを選んでもらうための「find-my-fit(自分に合うサイズを見つけよう)」といったサービスを提供しているものもある。自分に合ったサイズを見つけるためには、ラベルに頼るのではなく、身長や体重、年齢層などに基づいて適したサイズを確認することができるこのサービスを利用するのが“得策”といえる。

ただ、「自分のサイズとブランドが採用している数値を知っていれば、問題はサイズだけではないことがわかるはずです」という前出のカールトンさんによれば、“最善の策”はメジャー(巻き尺)を使うことだという。

african american woman uses a flexible measuring tape to measure waist
Catherine McQueen//Getty Images

体は人によって、形やバランスが異なる。「そうしたことを考えれば、大量生産のためのサイズの標準化が、もともと無理のあるものだということがわかります」とのこと。

3)自分に自信を持とう

その他の研究でも、自尊心を高く保つことができれば、大きなサイズを選ぶことになっても、ダメージを受けにくくなるとの結果が示されている。

24歳のティックトッカー、「ピンク・オー」さんは、ザラのサイズの一貫性のなさについてTikTokに不満を投稿。笑いを誘う話し方で、注目を浴びた。彼女はさらに、こう述べている。

「自分の価値を、自分以外のものと関連付けてはいけない、そのことを学びました…命のないモノが自分に合わないからといって、自分が不十分であるように思うのは、もうやめました」

これはtiktokの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

確かに、大きなサイズを選ぶことが、あなたの美しさを損なうことにはならないはず――。

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

Translation: Ryoko Kiuchi From COSMOPOLITAN UK