クラシック女優の生き方に学ぶ⑤
グレース・ケリー Grace Kelly
グレース・ケリー。モナコ大公レーニエ3世と結婚し、ハリウッド女優からプリンセスへとリアルシンデレラストーリーを歩んだ絶世の美女。妊娠中のお腹を隠したことでエルメスのバッグ「サック・ア・クロア」が「ケリーバッグ」と改名されたことも有名な話。気品と清潔感あふれた洗練された佇まいが今もなお愛され続けるエレガンスの代名詞だ。
彼女がモナコ公国に嫁いだあと、陰ながら活躍し、国の重大な危機を救った事実が映画となったのがニコール・キッドマン主演の『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』。ただのお飾りプリンセスではなく、妻、公妃として、モナコのために尽くした姿が感動的だった。
ここまでくるとまさに「パーフェクト!」と跪きたくなるけれど(?)、そんな完璧な彼女にも私たちに通じる人間らしい一面があったのだ。
そのうちのひとつが、実は彼女が"ファザコンだった"ということ。彼女の父親ジョンは、ボート競技の選手で、オリンピックで2個の金メダルを獲得した英雄。さらに一代で財を築いた富豪だった。グレースには兄と姉妹がいたが、体育会系バリバリの父親は幼い頃は病弱だったグレースにはまったく関心を示さず、ひたすら兄と姉妹ばかりをかわいがって期待をかけていたのだそう。
常に「父親から認められたい」という願いを持っていた彼女は、その渇望の裏返しで、次々と年上男性と恋仲になるのだ。ゲーリー・クーパー(28歳上)、クラーク・ゲーブル(28歳上)、ビング・クロスビー(26歳上)、ケーリー・グラント(25歳上)、ウィリアム・ホールデン(11歳上)、などなど。そう、彼女は、共演した男優と必ずと言っていいほど、恋に落ちる、いわゆる共演キラーでもあった(ちなみにレーニエ大公は6歳上)。
父親ジョンは、グレースが『喝采』でアカデミー賞を獲った時でさえ、マスコミに「姉のペギーの方がもっといい女優になったと思う。グレースが女優なんて信じられない」などと発言。そのことで、グレースは「オスカーを受賞した日、それは私の人生の中で一番寂しい時間でした」「私は幸せではなかった」と落胆。
レーニエ大公と結婚したのも、父親ジョンが裕福ではあっても"成金"と揶揄され、決して手に入れることができなかった「上流階級」の地位を喜んでくれるのではないかと思ったからでは?なんて言われているほど。
モナコ公妃として大きく成長し、モナコの発展に最期まで尽力した彼女の生き方が素晴らしいのは当然だけれど、父親との関係に悩んでいたなんて知ると、"パーフェクト・プリンセス"にも、なんだか親しみを感じられますね。