――いろんな時期を経て今があると思いますが、自分らしさって何だと思いますか?

KABA.ちゃん:私、小さいころは自分のことを女だと思っていて、大きくなったらおちんちんはなくなると思ってたんですけど、小学校5年ぐらいのときに、保健体育の授業か何かで男女に分けられて、「私、男だったんだ!」って。そこからは、男であることを受け入れて、男として男を愛していくしかないのかなって思ってましたが、その後芸能界に入って、番組を通じて恋愛対象が男性であることをカミングアウトしました。怖かったですけど。

松中さん:それ、すごい勇気ですよね! 当時、芸能界でカミングアウトしてる人はほぼいなかったし。

KABA.ちゃん:小室哲哉さんのプロデュースで音楽ユニット「dos」として活動していたときは、「ファンを裏切っちゃダメだ」みたいな指導があって、カミングアウトは止められてたんです。あくまでも表に出るときは男らしくしててほしいと言われてました。

松中さん:音楽番組のインタビューとかではあんまりしゃべらなかったですよね(笑)

KABA.ちゃん:キャラが出ちゃうからしゃべるな、と(笑)。でも自分がなりたかった職業だから、そこは我慢しようと思っていました。その後「いいとも」でレギュラーになって、「恋愛対象は男性だ」って言ったことでゲイだと広まったんですが、でも実はそのときすでに、自分は女の子になるんじゃないかなって思っていたんです。

それから、40歳を迎えるときに姉が乳がんになって、「あなたもいつ何があるかわからないから、後悔しない生き方しなさいね」って言われたときに、自分の中で一つだけ引っかかったのが、性別のことだったんです。で、心療内科に通い始めて、性同一性障害の診断が下って、やっぱり私は女性であってよかったのかなって。その思いと現実を一致させる方法があるんだったらトライしてみようと思いました。お仕事のことを除けば、今すごく自分らしくいられて、楽ちんですね。

――LGBTの人たちと、どう接したらいいかわからないという人も多いと思います。

松中さん:「カミングアウトされたら何て言えばいいんですか?」って問いに「『ありがとうございます』って言いましょう」って教えるような、そんなマニュアル化は意味がないですよね…。

KABA.ちゃん:それまで通りでいいんじゃないの?

松中さん:相手の気持ちに対する想像力があればいいんじゃないかな。もちろん他人同士だし、究極はお互い何を考えているかはわかんないし、傷つけちゃう可能性もありますよね、そりゃ。でも傷つけることを恐れずに、話をしたらいいと思う。「僕ゲイなんです」、「あ、そうなんだ。ところでさ…」ってなかったことにされちゃうのがいちばん辛い(笑)。

KABA.ちゃん:初めてアメリカにダンス留学したときに、ダンスやってる人にあからさまなオネエが多いのにビックリしました。隠しもしないで堂々としてて、それがすごく魅力的で。でもダンスはちゃんとやるし、みんなもそこにそんなに注目していなくて。これが自然体なのかな、自分もそうありたいなって。全世界がこういう感じだったらいいなと思います。

松中さん:セックスに近い話でもあるから、みんな興味津々なんだよね。ゲイってセックスモンスターみたいに思われちゃって、年がら年中セックスのこと考えてるんじゃないかって。

KABA.ちゃん:考えてるけど、そればっかじゃないのに!(笑)

松中さん:休み休み考えてるんだから(笑)。みんなと同じだよね。

――2020年東京オリンピックに向けて、今後社会はどう変わっていくと思いますか?

松中さん東京都の小池百合子知事は、東京オリンピック・パラリンピックに向けて、LGBTを含むあらゆる差別に反対するオリンピック憲章の理念を条例化するって言っていますね。同性パートナーシップ条例も、渋谷区と世田谷区に続いて、港区議会でも請願が採択されたし、今後も広がっていくんじゃないでしょうか。同性婚に関しても、それによって誰一人不幸にならない話ですよね。誰かが幸せになることをお祝いするだけなので、ポジティブなメッセージを伝えていけばいいんじゃないかなって思っています。

KABA.ちゃん:結婚という名前ではないかもしれないけど、パートナー法とか、何かしらはできるんじゃないかな。

松中さんイギリスも、ロンドンオリンピックの後に同性婚ができるようになったんですよ。東京オリンピックでも海外の人がたくさん入ってくるだろうから、何かきっかけになるかもしれない。同性同士の婚姻の制度がないと、海外で結婚している同性カップルの関係が、日本ではないことになっちゃう。例えば片方が日本人で片方が外国人のカップルの場合、異性婚だと外国人に配偶者ビザが出るのに、同性婚では出ないっていう不公平が生まれますよね。そのあたりをどうにかしないとっていう問題にはなると思います。

僕、シドニーオリンピックを現地で見たんですけど、閉会式でカイリー・ミノーグが50人のドラァグクイーンを連れてショーをやったんです。それが2000年。2020年には、KABA.ちゃんがドラァグクイーン連れて閉会式ってどうですか?(笑)

KABA.ちゃん:あら、そんな力あるかしら(笑)。じゃあLGBTでユニット作りますか。

――では、コスモが密着しますので。ダメなら裏番でやりましょう(笑)。

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