トランスジェンダー男性が出産したというニュースがたびたび取り上げられ、さまざまな家族のカタチが見られるようになった近年。本記事では、2008年に「妊娠した最初の男性」として報じられたトランスジェンダー男性のトーマス・ビーティーさんについてご紹介


トランスジェンダー男性として出産を経験

出生時は女性として生まれたトーマスさんは、幼い頃から自分のジェンダーに違和感を感じており、2002年に性別適合手術を受け、法的に女性から男性へと性別を変更

トーマスさんが「妊娠した男性」としてメディアに取り上げられたときは、トランスジェンダーだと公表してメディアに露出している人がおらず、耳にしたことがない人がほとんどだったという。

「チャズ・ボノやケイトリン・ジェンナーが、トランスジェンダーとして世に出てくる前の話。誰もが何も知らない頃でしたし、多くの人は私のニュースによって初めてトランスジェンダーについて耳にしたと思います。もちろん、出産ができるということも」

「トランスジェンダーの妊活についての発信は、目を見張るものだったと思います」
これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
The Story Of One Man's Pregnancy | Pregnant Man's Diary | Channel 4
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前妻のナンシーさんとトーマスさんは、子どもが欲しかったものの、彼女が子宮摘出手術を受けていたため、彼は男性ホルモンであるテストステロンの摂取を止めることに。そしてその4カ月後に月経がはじまり、ドナーの精子を使用して妊娠することに成功。

2008年当時、<Advocate>誌に妊娠についてエッセイを寄稿したトーマスさん。メディアへの露出によりさまざまな声が届くとともに、テレビや雑誌の取材依頼が殺到したトーマスさんは当時のことをこのようにコメント。

「何もかもが目まぐるしかったです。でも、今も後悔はしていません」
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2018年には4児の父に

2008年に第一子となるスーザンを出産した後、当時の妻であるナンシーさんとの間にさらに2人の子どもを授かったトーマスさん。その後の2015年に二人は離婚したものの、彼は2016年に子どもたちが通っていたデイケアで働いていたアンバー・ニコラスさんと再婚。

現在は、2018年にアンバーさんが出産した息子のジャクソンを含め、4児の父に。また前妻ナンシーさんとの子どもたちは、トーマスさんの家とそこから16キロほど離れた彼女の家を行き来しているとのこと。

家族とともに穏やかな日々を過ごすトーマスさんだけれど、2008年に「妊娠した男性」としてタブロイド紙の表紙を飾ったことで、いまだに世間からそう認識され続けているという。しかし、妊娠を経験したことについてはこのようにコメント。

「妊婦であることが悪いとは思っていません。父親であること、出産を経験したことを今でもとても誇りに思っているんです。名誉あるバッジのようなものです」

トランスジェンダーの認知度の変化

2008年当時は、「妊娠した最初の男性」と言われていたトーマスさん。しかし、支援団体「全米ゲイ・レズビアン・タスクフォース」に勤めていた経験もあり、自身もトランスジェンダー男性として出産を経験しているトリスタン・リースさんは、トーマスさんの物語を聞く前に、何十人もの妊娠を経験したトランスジェンダー男性を見てきたという。

世間の人たちにとって、最初のひとりとなりさまざまな注目を浴びたトーマスさんは、家族のさまざまなあり方に目を向けさせ、妊娠を考えているトランスジェンダーの人々がよりよい経験をできるようになればと考えていたよう。

「私の家族にとっても、他の人々にとっても、トランスジェンダー男性が妊娠するのが可能なことであり、法律がそれを尊重してくれるのか確かめたかったのです。だから、戦い続ける義務があると感じていました。諦めて、『もういい、“女性”だと呼んでくれ』というつもりはありませんでした」

自身の経験に対する世間の認識が変わったとしても、家族を持ちたいと願うトランスジェンダーの支援にはまだまだやるべきことがたくさんあると感じているそう。

「『トランスジェンダーは、生殖器官を完全に取り除かなければならない』、『子どもをもつことを望んではいけない』と考えている人がまだたくさんいると思います」

「私たちは、妊孕性温存について議論する必要があります。トランスジェンダーであることで、家族を持つ権利を失うべきではありません。あなたには幸せになり、家族を持ち、尊重される権利があるのです」

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cosmopolitan / getty images