過去12万5000年の地球の歴史の中で、最も暑かった年になる可能性が残る2023年。そんな年の瀬に、COP28の開催がせまっています。世界の問題を各国が集まって議論するCOPは、今年はいつから開催されて、どんなことが議題にあがる予定なのか。注目のテーマをMedia is Hopeの名取由佳さんが解説します!

COPとは?

COPとは、国際条約を締結した国々が集まって話し合う「締約国会議」のこと。温室効果ガス(GHG)の排出を削減する方法や削減の目標、適応策や資金援助の課題などが議論されます。

COP28の概要

COP28の開催の日にちや場所は、以下の通り。

  • 時期 11月30日~12月12日
  • 参加国・地域:国連気候変動枠組条約に加盟する約200カ国・地域
  • 開催国:アラブ首長国連邦(UAE)

今回、産油国のアラブ首長国連邦が開催するというのも、実は注目の点です。議長のスルタン・アル・ジャベル気候変動特使は石油会社のCEOも務めていることから、さまざまな思惑が行き交うCOPになると言われています。

そしてこれに対して批判的な意見をもつ人も多く、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリは今回のCOPを「完全にバカげている」と批判しているのだとか。

これまでのCOPとCOP28

COPは1995年から、開催地を変えて毎年開催されています。これまでの主だった開催は、以下の通り。

  • 1992年 国連気候変動枠組条約を採択(1994年に発効)
  • 1995年 COP1がドイツのベルリンで開催
  • 1997年 COP3が京都で開催
    • 京都議定書を採択(2005年に発効)
  • 2015年 COP21がフランスのパリで開催
    • パリ協定を採択(2016年発効)
  • 2020年 トランプ政権でアメリカがパリ協定から離脱
  • 2021年 COP26がイギリスのグラスゴーで開催
    • バイデン政権のもと、アメリカがパリ協定に復帰
    • グラスゴー気候合意を採択
  • 2022年 COP27 がエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催
  • 2023年 COP28がアラブ首長国連邦のドバイで開催

COP21で採択されたパリ協定では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度よりも十分低く保ち、1.5度に抑える努力を追求する」という世界共通の長期目標が掲げられました。これは途上国を含むすべての参加国に、数値目標を定め排出削減の努力を求める枠組みを作った、画期的なもの。

パリ協定より前のCOPでは、温室効果ガスの多くを排出してきた国とそうではない国での削減に対する対立構造が深まるような議論が続いていました。その構造は今も残っているものの、パリ協定によって世界全体で同じ目標に向かうことに合意がなされたのです。

15 degree paris agreement concept various green objects and a thermometer on a wooden table
Cristian Storto Fotografia//Getty Images

注目のテーマ

今回のCOP28で注目のテーマは、この3つ。

  1. 各国の温暖化対策の取り組みの総点検
  2. ロス&ダメージ(気候変動の悪影響による損失と損害)の具体化
  3. 化石燃料の段階的廃止

“1.5度目標”の達成に向けてCOP28で特に注目されるのが、グローバル・ストックテイク(GST)です。GSTはパリ協定に基づいて各国が自主的に設定した、温室効果ガスの削減目標の進捗状況を評価するための仕組みで、今年は第1回が行われます。今後も5年ごとに実施して、目標達成に向けた改善へとつなげる狙いがあります。

各国は現在、2030年までの目標を国連に提出していて、COP28ではそれらを評価して、“合意文書”をまとめます。つまりGSTが1.5度目標にどれだけ沿っているか、もしくはどれだけ不十分なのかが、今回のCOP28ではっきりするということ。各国はその結果をふまえて、35年までの削減目標を決めることが求められています。

さらに注目の合意テーマでもある「化石燃料の段階的廃止」には、議長のリーダーシップはとても重要な要素。前述の通り石油会社のCEOも務めているジャベル気候変動特使は、6月のドイツ・ボンでの国際会議の場で「化石燃料の段階的廃止は避けられない」とも発言をしています。

段階的廃止の合意を得ることは難しい議論であり、議長の発言の真意もつかみきれない一面があります。そういった複雑な側面ももっていることから、 今回のCOPは「グリーンウォッシュ(環境に配慮しているように見せかけること)」の場になるのではないか、という懸念もあがっています。COP自体の意義が問われる機会になる可能性もあり、いっそう動向が注視されているのです。

重要な意味をもつ2024年

はじめてCOPが開催されてから、約30年。パリ協定で合意を得たのは大きな成果でしたが、現状の世界の削減目標を全て達成したとしても、1.5度目標の達成には程遠い現実もあります。

しかしそんな中でも注目なのが、再生可能エネルギーの価格の低下。 30年前の再生可能エネルギーは非常に価格が高く、安定した提供が難しいものでした。それが今や専門家の予想を超えたスピードで、より安価に手に入るエネルギーになってきているのです。

もちろん再生可能エネルギーにも、課題はあります。しかし記録的暑さや異常気象を経験した、2023年。どんな立場にある人も異変を感じるきっかけとなったのではないでしょうか。

今年のCOP28の世界各国の成果を踏まえて、2024年は日本の温室効果ガスの削減目標(NDC:Nationally Determined Contributions)を見直し、2035年までの政策も議論されます。世界と同様に日本でも、1.5度目標の達成に向けた気候変動問題において2024年は重要な意味をもつと言えるでしょう。

改めてCOPではどんなことが約束されて、目標に対してどれほど進捗しているのか、確かめる機会にしよう。

解説したのは…

一般社団法人MEDIA IS HOPE共同代表 名取由佳

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Media is Hope
Media is Hope:気候変動の正しい知識と解決策を日本の共通認識にするため、メディアの支援やサポートを行い、気候変動解決に向けてあらゆるステークホルダーが共創関係を築くための架け橋となる団体。 2021年に設立。