まもなく衆議院選挙が行われるけれど、現在の日本の衆議院議員の女性の割合は9.9%と世界レベルで見てもかなり低いということを知っていた? 女性議員が少ないということは、それだけ政治の世界で女性の意見や考えが反映されにくいということ。

世界では女性に一定の議席を割り振る「クオータ制」の導入が進んでいるけれど、日本ではいまだ導入されていません。そこで、衆議院選挙の前に改めてこの制度や日本の現状について知って、未来の政治について考えを深めてみよう。


【INDEX】

1、「クオータ制」って何?
2、日本の女性閣僚の割合はG7最低
3、ノルウェー発祥の制度
4、導入国の状況
5、女性議員が増えた国のその後
6、「逆差別」「代替要員」の問題
7、日本で導入に向けた動き
8、政治の世界での女性の活躍は、社会全体にとって良いこと!


1.「クオータ制」って何?

衆議院選挙の前に、知っておきたい「クオータ制」のこと
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クオータ制とは、政治では議員、企業では役員などで、女性の割合が一定になるようにする制度のこと。女性の社会進出や、男女ともに働きやすく、多様性のある社会を実現するものと考えられている。世界120以上の国や地域で導入が進んでいて、取り入れていない国が実は少数派。

性別で語られることが多いけれど、人種や民族、宗教など、社会的に不利な立場とされている人に、一定のポジションを割り当てる制度でもある。日本では、一部法律で言及はされているものの、努力規定にとどまっています。

2.日本の女性閣僚の割合はG7最低

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現在、日本の衆議院の女性割合は10%に届いていない。先日成立した岸田内閣では、閣僚20人中女性は3人と、G7で最下位。UN Womenによると、女性閣僚が50%を超えているのは13カ国で、世界平均では21.9%(2021年1月1日時点)。

また、日本では一度も女性の総理大臣は出ていないけれど、現在20カ国以上の国では女性が国のリーダーとして活躍しています。

3.ノルウェー発祥の制度

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クオータ制は、実はノルウェー発祥。ノルウェーでは法制度化はされていないけれど、1974年に政党レベルで自主的に導入が始まり、今では一般企業にも普及しています。

世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表している、政治や経済分野などでの女性の活躍度合を示す「ジェンダー・ギャップ指数」では、ノルウェーは2021年に3位となり、毎年上位をキープ。

もちろんクオータ制がすべての要因ではないけれど、ノルウェーや北欧というと、いろいろな面で女性の活躍が進んでいる印象を持っている人も多いのでは? ちなみに同指数、日本は120位と歴然とした差が。

4.導入国の状況

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フランスでは、クオータ制の法律ができた2000年に12%台だった女性議員(下院)の割合が、2020年には約40%に。お隣韓国では2000年に導入し、当時5.9%だった女性議員(一院制)の割合が2020年に17.3%と20年間に約3倍に。

他の導入国では、ルワンダ(下院)は61.3%、メキシコ(下院)は48.2%、世界的な女性リーダーとして注目を集めるサンナ・マリン首相率いるフィンランド(一院制)は47.0%、同じくアンゲラ・メルケル首相率いるドイツ(一院制)は31.2%(いずれも2020年1月時点、内閣府資料より)などの高い割合となっています。

5.女性議員が増えた国のその後

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導入された国では、その後男女平等の意識がより高まり、特に育児の分野などで社会が変わりつつあります。たとえば、2013年より女性のエルナ・ソルベルグ首相が、同国2人目の女性首相として、国のかじ取りを担うノルウェーでは、特に男女平等を意識した育児休業制度が注目を集めています。

同国では、現在最長54週間の育休が取得でき、これは両親で期間を自由に分割OKという使い勝手が良いもの。さらに44週までなら、出産前の給料の100%が支給されるという手厚さ(日本は5~7割)! 1993年には「パパ・クオータ制度」も始まり、育休のうち6週間は父親しか取れないものになっている。

こうした制度がある理由は、幼い頃から積極的に父親が育児に関わっている姿を見ることは、男女平等教育を語るうえで大切なことの一つだと考えられているから。北欧ではずいぶん前からベビーカーを押すパパの姿は当たり前(日本も最近になってようやく普通になってきた)で、パパもママも子育ての幸せを味わうことができている。

6.「逆差別」「代替要員」の問題も

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もちろんクオータ制がパーフェクトな制度であるということはなくて、デメリットも指摘されている。1つは「逆差別」の問題。

女性に一定の比率でポストを割り振ることによって、差別や格差は解消される。これまで社会の不平等に苦しんできた女性にとっては、大きなチャンス。でも一方で、それに対して男性は不満を感じることもあるかもしれません。

また重要ポストに就く女性が、出産や育児休暇を取得する時に、代替要員を探す必要も出てくる。だけど制度のメリットを考えると社会に必要な制度なので、うまく運用していくことが重要。

7.日本で導入に向けた動き

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日本でも動きがないわけではなくて、2021年5月には、クオータ制実現に向けた党派を超える勉強会が発足。でも内閣府が2020年6月から2021年3月にかけて行ったクオータ制の評価に関する調査では、女性の地方議員の53.6%が制度を評価したけれど、男性議員は20%しか評価せず、男女間の意識にも隔たりがあるみたい…。

8.政治の世界での女性の活躍は、社会全体にとって良いこと!

単一の考えだけで成り立つ社会が難しいことは、これまでの歴史が証明してきたこと。女性の権利や生き方に関して、政治の世界でもっと女性の意見を反映できれば、女性が生きやすい社会となっていくはず。そしてそれは女性だけでなく男性にとっても、安心して社会で働き続けられることにつながり、社会全体にとっても良いこと。

「クオータ制」はそんな社会を実現する一つの手段として、私たちが導入を考える時期に来ているのかも。そしてそれはLGBTQ+や障がいを持った人、外国籍の人など、多様な人たちが生きやすい世の中につながっていくのかも。

From: Harper's BAZAAR JP