2021年に米大統領に就任し、4月末には発足100日を迎えたバイデン政権。「アメリカ史上最も多様性のある政権」を目指して、女性やマイノリティの人々を閣僚及び閣僚級人事に起用したことも一つの大きな特徴です。
本記事では、多様性の尊重とマイノリティの人々の人権擁護に注力するバイデン政権が、医療システムにおける性的マイノリティへの保護を復活することを発表した、その経緯と背景をお届けします。
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就任100日目を迎えて
バイデン大統領は2021年4月28日(現地時間)、就任100日目に行われた議会演説で、トランスジェンダーの人々への支援を言及。
「議会がLGBTQの国民を守る『平等法』を実現することを望んでいます。全てのトランスジェンダーの米国民、特に若者たち。あなた方は本当に勇敢です。私はあなた方の味方だということを知ってほしい」
そして5月10日、バイデン政権下の保健福祉省は、トランスジェンダーを含める性的マイノリティを「差別禁止法」の対象に戻し、医療制度において保護されるよう対処すると発表しました。
トランプ政権時代の解釈を反転
元々は、オバマ政権時代に保健医療における性的マイノリティへの差別を禁じることを示した「医療保険制度改革法」(オバマケア)。
しかしトランプ前政権は、「性別」とは性自認や性的指向ではなく、出生時に登録された性として定義されるべきだとし、性的マイノリティを差別禁止対象から除外し、医療システムにおける保護を縮小してきたという背景があります。
そんななか大きな進展があったのが、2020年6月。アメリカ連邦最高裁が、性自認や性的指向を理由に従業員を差別し解雇することは、公民権法に違反しているとの判断を下しました。
その最高裁の判断を引用することで、「性自認や性的指向による差別を禁止する」という立場を改めて示すことができたのです。
保健福祉省長官のハビエル・べセラ氏は、「最高裁によって、性自認や性的指向に関わらず、すべての人々が平等な権利を与えられることが明確になりました。よって、保険福祉省は医療における一切の差別を禁止するよう対処する」と声明で宣言。
「差別に対する恐怖によって、医療ケアを受けることができないことが、さらに健康状態を悪化させるのです。保健福祉省として、LGBTQ+を含むすべての人間が、差別や干渉なく医療行為を受けるべきだと主張します」
医療システムにおける差別根絶を目指して
性的マイノリティの人々の医療格差問題がさらに深刻化した、トランプ政権時代。
人権NGO団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の報告では、ホルモン補充療法やHIV予防・治療などによいて適切な医療が受けられない、健康保険への加入が難しいなどの理由で、当事者たちが心身にさらにダメージを受けてしまうという情報も。また、医療提供者からの差別や偏見を恐れ、受診することを避けたり先送りする人が多いことも指摘しています。
トランプ政権の方針や解釈の是正を次々に発表しているバイデン政権。今年1月にも、前政権時代にとられた「トランスジェンダーの軍入隊禁止」という措置を撤回したばかり。今後どのような動きがあるのか、引き続き注目したいところ。
※この翻訳は抄訳です。
Translation: ARI