記録的な投票率の高さで、例年よりも白熱した今回のアメリカ大統領選。郵便投票と11月3日(現地時間)に一般投票が行われ、11月7日(現地時間)には バイデン氏の当選が確実となりました。本記事では、20・30代のZ世代とミレニアル世代に選挙前後の意見をインタビュー。アメリカ在住のライターが現地のリアルな声をお届けします。今回は、投票する資格を持ちながらも投票しなかった人、そして投票権がないアメリカ在住者に話を聞きました。


投票しなかった人の声

Aさん(白人女性・26歳・コンサルタント)

選挙前インタビュー


1.今回はどちらの候補者を支持しますか?

どちらも支持していないため、投票しません。

2.その理由は?

私は自分の政治的思想を、社会的にはリベラル、財政的には保守派だと思っています。家族はかなりの保守派で全員トランプ氏に投票します。私はトランプ氏自身や、考え方が好きではないので、彼に投票はできません。

だけどバイデン氏にも投票できませんね。バイデン氏の政策、特に経済や医療については賛成できないので。

3. 前回の選挙はどちらに投票しましたか?

前回も同じ理由で投票していません。トランプ氏は好きじゃないし、クリントン氏の政策も支持できませんでした。

4. アメリカ国民として、国や大統領に何を求めますか?

まずは高所得者への大幅な増税に反対です。あとは国民皆保険制度にも反対です。以前、イギリスに住んでいたときに経験しましたが、いいものではありませんでしたね。

LGBTQ+や人種問題、女性の権利など、人々の選択肢や自由が広がっていくような国になってほしいと思っています。

選挙後インタビュー

5. バイデン氏の当選が確実となったことについての感想はありますか?

私は正直あんまり気にしていないです。毎日の日常が劇的に変わるとは思っていないので。選挙に関してのSNSでのネガティブな投稿にかなり疲れてきていたので、全て終わったことの方が嬉しいですね。

選挙権がないアメリカ在住者の声

Sさん(アジア人女性・29歳・IT系会社員)

選挙前インタビュー

1. 今回の選挙をどうみていますか?

アメリカに住む身としては移民政策に注目はしますが、トランプ氏の移民に対する方針はあくまで不法移民に対して。学生や仕事で来ている人、税金をきちんと納めている人に制限はできないと思います。ロックダウン時は不安になりましたが、私は合法な移民なので、今はあまり心配はしていません。バイデン氏は移民を歓迎しているのには賛成ですが、自分がアメリカ人だったら同意できるかはわからないです。

トランプ氏をサポートしているのは保守的な人であるように感じますし、一部の人にとってしか良くない政策が多いような気がします。バイデン氏はミドルクラスにフォーカスしているので、アメリカにとっては、その層をターゲットにするのは大切だと思いますね。あとはそれぞれの性格よりも、あくまで政策に注目するようにしています。

2.もし投票権があるとしたら、どちらの候補者を支持しますか?

トランプ派ともバイデン派ともはっきりとは言えません。

3.その理由は?

自国との関係性なども考えなければいけないので。

4.アメリカ在住者として、国に何を求めますか?

アメリカでは「お金」が本当に大事だと感じます。お金があればいい国だと思うけれど、お金がないと、教育も受けられないし、安全なところにも住めないし、チャンスがありません。アメリカというと、NY、LA、サンフランシスコなどをイメージする人が多い気がしますが、それはアメリカのほんの一部。中心地では警察もすぐ来てくれますが、エリアによっては警察さえすぐ来てくれるかわからない不安だってあります。

個人的には、正直アメリカは全ての人にとっていい国だとは言えないです。一方で、矛盾してしまいますが、大きい国で資源やチャンスがたくさんあるのはいいところですね。

多様性に関心がない人も意外と多いように感じますが、もっといろんな文化をお互いに受け入れて、分かり合えればいいのにと思います。

5.アメリカの国籍を取得する予定はありますか?

まだ就労ビザの段階なので正直わかりませんが、おそらく取らないと思います。選挙権は欲しいですが、選挙人制度だと一票の重みをあまり感じない気もしています。

選挙後インタビュー

6. バイデン氏の当選が確実となったことについての感想はありますか?

バイデン氏の年齢は心配ですね。健康そうには見えますが…。副大統領のカマラ氏には期待しています。彼女は移民、女性、多様性の代表だから。二人はバランスがいいと思いますし、二人の率いる政権が、トランプ政権の二の舞にならないことを祈ってます。

participants holding a banner reading "every vote counts
Erik McGregor//Getty Images

Sさん(中国人女性・25歳・会社員秘書)

選挙前インタビュー

1. 今回の選挙をどうみていますか?

今回の選挙は特に注目しています。新しい大統領を見られることを期待しています。

2.もし投票権があるとしたら、どちらの候補者を支持しますか?

ジョー・バイデン氏。

3.その理由は?

トランプ氏以外なら誰でもいいです。トランプ氏はこの国に多くのネガティブさと憎しみをもたらしました。彼の政策は多様性とインクルーシブな社会に対しての脅威です。

ジョー・バイデン氏のことはよく知りませんが、彼のほうが間違いなく、いい選択だと思います。

4.アメリカ在住者として、国に何を求めますか?

アメリカの新しい世代がもっと多様性にオープンになって、無知でなくなって欲しいと願っています。

5.アメリカの国籍を取得する予定はありますか?

80%取ると思います。投票する権利が欲しいので。

選挙後インタビュー

6. バイデン氏の当選が確実となったことについての感想はありますか?

バイデン氏が当選したことで、ホッとして感慨深い気持ちになりました。この気持ちは、トランプ大統領が科学を信じなかったり、とんでもないことを言っていたからだったんだと気づきました。アメリカに平穏な日々が訪れて欲しいですね。

副大統領は若く、仕事ができそうなので期待しています。女性が副大統領であることはとても嬉しいですし、次の大統領にもなるかもしれないとも思うので楽しみです。

Eさん(日本人女性・28歳・ライター)

選挙前インタビュー

1. 今回の選挙をどうみていますか?

アメリカの問題点が浮き彫りになった4年間だったように思うので、これがどう選挙結果に出るのかは本当に興味深いです。トランプ氏が当選した当時は日本に住んでいましたが、大学時代にアメリカに留学していた時にオバマ前大統領の講演を聞いたことがあったので、「アメリカ=リベラル」という印象が強くありました。前回はヒラリー氏が大統領になると思っていたので、衝撃的でしたね。

選挙権のない移民としては、どんな結果になっても従うしかないものの、今回もトランプ氏が当選してしまったら、正直言って、アメリカに対してネガティブなイメージを抱かずにはいられないです。

2.もし投票権があるとしたら、どちらの候補者を支持しますか?

バイデン氏。

3.その理由は?

詳しい政策を正直しっかり理解しているとは言えないですが、アメリカに住んでいる有色人種の移民として、人種差別的な発言を堂々としている大統領をサポートしたいとは思えないからです。そういった大統領が国を代表しているかと思うと、ふとした瞬間、不安や自分の身の危険を感じます。

コロナの対策ももっとできることがあったのではないかと思わずにはいられません。そして環境問題に対しても、真っ向から問題として取り組んでいない姿勢に疑問を覚えますね。だけど自国である日本にとって、果たしてどちらの大統領がいいのかなど考えるポイントはたくさんあるとはもちろん思います。

4.アメリカ在住者として、国に何を求めますか?

アメリカはこれからも性別、人種などあらゆる意味で、多様性があって、選択肢のある国であり続けて欲しいと思っているので、そういった政策をサポートしたいですし、日本人としては日本にとって良好な関係性を保ってくれる人がいいです。

    国によって方針が違うことは理解していますが、日本で育った身からすると、高額な医療費や、銃の恐怖への解決策があればいいのにと思っています。

    5.アメリカの国籍を取得する予定はありますか? 理由は?

    おそらく取らないと思います。選挙権の大切さは感じますが、将来日本に住む可能性や日本の国籍を捨てたくないからです。

    選挙後インタビュー

    6. バイデン氏の当選が確実となったことについての感想はありますか?

    ひとまず安心しました。今回の結果でアメリカの未来に希望を抱くことができ、何日間にも及ぶ緊張と不安から解放された気がします。あらゆる意味で、はっきりと分断されてしまったこの国が、少しでも団結することを心から願っていますし、この結果はその一歩になると信じています。カマラ氏のスピーチには感動しましたし、彼女の活躍は楽しみですね。

    けれど、トランプ氏の今後の行動や今回接戦になったという事実から、しばらく混乱が続くことが予想されるのは心配です。それに、この結果が日本にどう影響があるのかも気になります。

    今回の選挙は、今まで以上に多くの人々がSNSで意見を発信、セレブたちやファッションブランドなども投票を促す投稿をしていたりと、世界中の注目や熱意を感じました。また、投票率の高さからアメリカのエネルギーや、接戦だったことから一票の重要さを改めて感じさせられました。