2023年2月、英スコットランド自治政府首相であるニコラ・スタージョン氏が辞任を発表し、同時にスコットランド国民党(SNP)党首も退任しました。

そして3月28日(現地時間)、ケイト・フォーブス氏やアッシュ・リーガン氏といった他の候補者を抑え、スコットランド国民党の新党首、ハムザ・ユーサフ氏が首相に当選。これにより、スコットランドで初のイスラム系の首相が誕生しました。

今回は、ユーサフ氏が党首選に向けた演説で語っていた、女性やトランスジェンダーの権利問題に対してどのような立場をとるのかについて迫ります。

女性の権利のために

党首に選出されるまでの間、ユーサフ氏は女性の権利を向上させるために「たゆまぬ努力」をすると演説。具体的には、「スコットランドで妊娠24週目までの中絶を可能にすることを望む」と話しました。現在スコットランドで妊娠後期に中絶を希望する人は、イングランドへの渡航を余儀なくされています。

さらに、ユーサフ氏は、中絶手術を受けられる施設の周辺にバッファゾーンを設ける法案を“明確に”支持し、女性差別を犯罪とする提言も引き続き推進していくことを宣言。また、より多くの女性が仕事に復帰できるよう、1歳児と2歳児の早期学習と保育の無料化を早急に実現することも約束しています。

ユーサフ氏は、自身のリーダーシップを共に働く女性たちのために発揮したいと述べ、女性が閣僚ポストの半分を占める前任のスタージョン氏のやり方にならうとも明言しています。

バッファゾーン(緩衝地帯)法は、抗議活動を施設から特定の距離で行うことを義務付けることで、デモ参加者が施設に近づける距離を制限しています。一方で、緩衝地帯の外では自由に表現活動を続けることができます。

ユーサフ氏
Pool/getty
前首相のジョンソン氏(手前)と後任のユーサフ氏(奥)

トランスジェンダーの人々の権利のために

ユーサフ氏は、前首相のスタージョン氏と同様に、トランスジェンダーの人々の権利を支持していることも明らかになっています。

スコットランドでは昨年12月、トランスジェンダーやノンバイナリーの人々の性別変更手続きをより簡単にするための法案が可決されました。ユーサフ氏は、この法案に賛成した86人のスコットランド議会メンバー(MSP)のうちの一人です。

しかし、この法案はその後英国政府によって阻止され、ユーサフ氏らはこれに対し「スコットランド議会に対する“前代未聞の攻撃”である」と批判。

これを受けて、ユーサフ氏は次のように話しました。

「私は全ての人の平等のために全力を尽くします。なぜなら、あなたが誰であろうと、あなたの権利は私の権利でもあるからです」
「私がこの国でずっとマイノリティであったということが“出発点”になっています」
「自分の権利のために戦わなければならないことは理解していますが、私の権利は“空白”のなかに、あるいは“孤立”して存在しているのではありません。同様に他の人たちの権利もあるからこそ存在します」

2021年には、スコットランド政府が「トランスジェンダーの人々のアイデンティティに対する批判」をヘイトクライム法の対象から除外しようとしたことも。その際には、当事者に対し、議員の一人としてTwitterなどで謝罪の意を表しました。

「私たちには皆、言論の自由があります。これには、どんな政策にも断固として反対する自由があることも含まれています。そして、その自由は守られるべきものです。ただ、そのことと人々を憎悪から守ることは相反することではないのです。傷つけてしまったことを謝罪します。私の意図したことではありませんでした」

※イギリス政府は、35条の行使によって、スコットランドの法律がイギリス全体の法律に抵触または整合性がとれない、と判断した場合、法案の取り消しを求めることができます。

リーダーとして…

ユーサフ氏は、SNPの党首として、そして首相として、すべての市民の利益のためにスコットランドを率いていくことを誓い、市民の尊敬と信頼を獲得し続けるために「毎日毎分、働く」と話しました。

※この翻訳は抄訳です。
Translation: Risa Tsubakihara
COSMOPOLITAN UK