“現代のSNS病”ともいわれる、「FOMO(フォーモ)」。周りや社会から取り残されてしまうのではないか、という不安を表す言葉で、インターネットやSNSの普及とともに広がっていったと考えられています。

多くの人が一度は抱えたことがあるこの不安に対処するにはどうすればいいのでしょうか。今回は心理カウンセラーの小日向るり子さんに、「FOMO」の原因とSNSとのちょうどいい距離感について聞きました。


監修:小日向るり子さん(心理カウンセラー)

「FOMO」とは

「FOMO(フォーモ)」とは「Fear Of Missing Out」の略で、“取り残されてしまうことへの不安”の意味

ネットやSNSの普及によって広がった言葉で、常に周りの情報や行動についていかないと自分が置いていかれたり、チャンスを逃してしまったりするのではないか…と恐怖心を抱いてしまうことを指します。2013年からは世界で最も権威のある英語大辞典として知られる『オックスフォード英語大辞典』にも掲載されました。

そこから現在では下記のような言葉にまで派生しています。

  • MOMO(Mystery Of Missing Out:取り残される謎)
    周りがSNS上に投稿しなかったり、連絡が途絶えたりすることに対する不安
  • FOMOMO(Fear Of the Mystery Of Missing Out:取り残される謎への恐怖)
    スマホのバッテリーが切れたり、紛失したりしたときに限り感じる不安
  • FOJI(Fear Of Joining In:参加することへの恐怖)
    SNSを利用するときの「誰もフォローしてくれないかもしれない」「何を投稿すればいいのかわからない」という不安
  • BROMO(when your 'Bros' protect you from Missing Out:友達が「取り残されない」ようにする行為)
    その場にいない友人が「取り残された」と感じないよう、意図的にSNSへの投稿を控えること
  • SLOMO(Slow to Missing Out:取り残されると気づくのが遅い
    楽しい投稿がされている間に寝ていたりして、取り残されていると気づくまでに時間がかかること
  • JOMO(Joy Of Missing Out:取り残されることへの喜び)
    他人と比べるのをやめて、目の前にあることを楽しみ、不安から解放されようとすること
“現代のsns病”ともいわれる、「fomo(フォーモ)」。周りや社会から取り残されてしまうのではないか、という不安意味する言葉で、インターネットやsnsの普及とともに広がっていったと考えられています。今回は心理カウンセラーの小日向るり子さんに、「fomo」の原因とsnsとのちょうどいい距離感について聞きました。
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「FOMO」の不安の原因

「FOMO」は周りの人を気にしてしまうことから起こる心理です。そもそも人間は一人では生きていけない生き物。周囲を見ながら歩みを合わせ、時には協力していろいろな物事が進められる環境を作っていった方が生存には有利なのです。

そのため、「周囲を気にする」という心理自体は自己防衛のために必要なことであると言えます。しかし、その心理が強すぎてしまうと「FOMO」のような「取り残されたら生きていけない」という不安感情につながってしまうのです。

「FOMO」が“現代のSNS病”と言われる背景

インターネットやSNSがない時代は、自分のリアルな生活範囲だけを見て自身の足並みをそこに合わせていけば安心できました。つまり、周りとの調和のなかで安心感を得ることができたのです。

しかしネットやSNSの浸透によって、自分の生活と直接関係のない人の情報も大量に入ってくるようになると、「合わせていかなければ取り残されてしまうのではないか」という感情がわいてきます。視点が「リアルな身の回り」という狭い範囲から「世界全体」と急激に広い範囲になったことが「FOMO」の不安の感情を増大させていると言えるでしょう。

最初は多くの人が不安を払拭するために、周囲に合わせようとします。しかし、流行りについていくことには向き不向きがあるもの。流行りに乗っていくことを純粋に楽しめる人は問題ありませんが、不安だからと向いていないのに頑張ってしまう人は次第に疲れてきますし、ついていくことを諦めたとしても、周囲から取り残されたように感じ、孤独感にさいなまれてしまう場合もあるのです。

“現代のsns病”ともいわれる、「fomo(フォーモ)」。周りや社会から取り残されてしまうのではないか、という不安を表す言葉で、インターネットやsnsの普及とともに広がっていったと考えられています。

多くの人が一度は抱えたことがあるこの不安に対処するにはどうすればいいのでしょうか。今回は心理カウンセラーの小日向るり子さんに、「fomo」の原因とsnsとのちょうどいい距離感について聞きました。
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「常につながっていないと不安」という気持ちへの対策

取り残されたくないという思いから、ネットやSNS上などで「常に誰かとつながっていないと不安」だと感じる人もいるかもしれません。

まずは一度、電話番号やLINE、メール、SNSのフォローなど、目に見える形のつながりを点検して人間関係の断捨離をしてみましょう。形だけのつながりが増えすぎてしまうと“本当のつながり”がわからなくなってしまいます。

電話帳やフォローリストなど、見えるものでつながっているのが目的になり、そこに執着してしまうと不安に感じてしまうこともあります。最初は消去に抵抗があるかもしれませんが、思い切って消すと「実は多くの人とつながっていなくても自分は生きていける」と体感できるはず。

このアクションはできれば定期的に行ってみてください。自分にとって本当につながっていたい人を見極めていけるようになると、誰かと常につながっていることは、むしろ面倒くさいと感じるようになっていきます。

インターネットやSNSと適度な距離を保つ方法

もっとも取り組みやすい対処方法は、スマホやパソコンなどSNSを見ることができるツールを持たないということ。「そんなシンプルなことか」と思う人も多いかもしれませんが、実行するには依存状態が強いほど心理的な抵抗が強く、難しくなります。

まずは1日のスケジュールを細かく立てて、しっかり実行するように頑張ってみましょう。余白の時間ができるとサイトやSNSを開いてしまいがちなので、少しタイトにスケジュールを入れていくことがポイントです。

このとき、今日の予定が全部終わったらSNSを開く、あるいは休日だけは好きなだけ見ることを自分に許す、などご褒美の要素を取り入れて、ネットやSNSとの接触にメリハリをつけていくと無理なく適度な距離が保てるようになります。

“現代のsns病”ともいわれる、「fomo(フォーモ)」。周りや社会から取り残されてしまうのではないか、という不安を表す言葉で、インターネットやsnsの普及とともに広がっていったと考えられています。

多くの人が一度は抱えたことがあるこの不安に対処するにはどうすればいいのでしょうか。今回は心理カウンセラーの小日向るり子さんに、「fomo」の原因とsnsとのちょうどいい距離感について聞きました。
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目の前のことを楽しみ、自分を取り戻すために

周りにとらわれすぎないためにも、自分と向き合う時間を作るようにしてみましょう。そのために、瞑想をしたり日記を書いたりすることがおすすめです。

たとえば、1日の最後は必ず日記アプリをつけてそのまま寝る、といったように習慣づけるとSNSをずっと見てしまって眠れなくなることも防げます。時に乱れたとしてもすぐに自分を取り戻せる「自分軸」を持つためには、少しの時間でも毎日自分自身と静かに向き合う時間を確保することが大切です。


小日向るり子さん(心理カウンセラー)

小日向るり子
小日向るり子
教育系出版社勤務中に始めた電話相談員ボランティアの活動をきっかけにカウンセリングの奥深さに目覚め、カウンセラーを志す。退職後、公的機関でのセクハラ相談員を経て2012年カウンセリングスペース「フィールマインド」を設立。2022年現在、対面・電話・メールカウンセリング件数約5000件。他、心理・恋愛系コラムの執筆も行っている。