ジェンダーはグラデーションのように多種多様なもの。「第三の性」とは、女性でも男性でもないと分類される性別を総称するときに、使われる言葉のこと。この言葉は、日常で度々使われているものの、使い方には注意が必要なよう。

そこで本記事では、「第三の性」という言葉の意味や背景、注意点をご紹介。


【INDEX】


「第三の性」の意味

臨床心理士で、ジェンダーとセクシャリティ研究家、レイチェル・リン・ゴールデン先生は、「第三の性」について次のように説明。

「第三の性という言葉は、男性・女性という制限されたジェンダーバイナリーに当てはまらない人たち全てを総称するもの。ノンバイナリー、パンジェンダー、バイジェンダーなどを自認している人を表すときに使用されることが多いです」
「一方で、“第三の性”という言葉は、当事者の間では使われません。この言葉は、女性、男性、それ以外という3つのジェンダーしかないという、時代遅れで学術的概念でもあるんです」

アイオワ大学のジェンダー学専門、アニルッダ・ダッタ教授もこう補足。

使い方によっては当事者を不快にさせたり、否定させたりすることに繋がる場合もあります。“3”という言葉自体が、他の2つのジェンダーの後にくるもののような雰囲気ですよね。それに『第三』があるならば、『第一』の性は? という疑問も浮かびます」
正しい使い方は?「第三の性」にまつわる言葉の意味や注意点
Klaus Vedfelt//Getty Images

「第三の性」の歴史

「第三の性」というのは、紀元前4世紀頃に書かれた古代ギリシャの哲学者プラトンの、『饗宴』でも使用されており、長い歴史がある言葉。

ローマ帝国の「宦官(かんがん:性器を切除された男性)」や、アルバニアの「ブルネシャ(男性として生きる処女の女性)」など、歴史的にも様々な文化のコミュニティを表すときにも使われてきたそう。

現在でも、南アジアの「ヒジュラー(ジェンダーなど世俗社会の規範を捨ててヒンドゥー女神へ帰依する人々)」やメキシコの「ムシェ(オアハカ州の先住民・サポテカ族の社会で伝統的に認知されている女装した男性)」などのコミュニティを表現する際に使われることもあります。

一方で、「コミュニティ外の人が“第三の性”とカテゴライズしても、当事者がそのように自認しているかはわかりません」と、ドット先生は強調。

「南アジアのトランスフェミニン(出生時に割り当てられた性別が男性であっても、自身にとってどちらかといえば女性性の要素の方が強く、かといって完全に女性だと認識していていない人)コミュニティのアクティビストたちは、『第三の性』という言葉を使っていません。代わりにインドのタミル・ナードゥ州などのエリアでは、『トランスジェンダー』、『トランス女性』、『トランス男性』などを使用しています」

ノンバイナリー、パンジェンダー、バイジェンダーとの違い

ゴールデン先生は、言葉の違いを次のように説明。

「『第三の性』は女性と男性以外のジェンダーを一般化する学術的な言葉です。『ノンバイナリー』、『パンジェンダー』、『バイジェンダー』などは、個人が自認するときに選択しています」

どれが自分に合うかはそれぞれの自由。当事者以外は相手のジェンダーアイデンティティを尊重し、変化があったとしてもフレキシブルな対応が必要です。

第三の性
Getty Images

「第三の性」のサイン

“第三の性”にルールやガイドラインはないものの、「自分がそうかもしれない」と思い当たったときのサインとして下記を参考にしてみて。

  1. 出生時の性に違和感を覚える
  2. 出生時の性に対しての社会的期待、制約が自分と一致しない
  3. いくつかのジェンダー的要素を感じる、あるいはジェンダーを全く意識しない

悩んだときには、インターネット上で仲間を探したり、LGBTQ+支援団体からサポートを受けたりすることも検討してみてください。

「第三の性」の友達やパートナーのサポート方法

まずは、相手がどう呼ばれたいか、その代名詞を確認することが大切。誤った代名詞を使ってしまった場合には、謝罪し、深堀りせずに訂正することが必要です。

また、友達やパートナーがカミングアウトした場合、安心して話せる空間を作り、相手が受け入れられていると感じられることも大切。そして時には、権利獲得のために共に立ち上がりましょう。

※この翻訳は抄訳です。

Translation: Haruka Thiel

COSMOPOLITAN US