アメリカ不安神経症協会(Anxiety & Depression Association of America)によると、アメリカ国内で不安感に苦しむ成人の数は毎年4,000万人(そのうち、女性の割合は男性の約2倍)で、精神疾患としては最も多いそう。不安障害と診断を下されたわけではなくても、追い詰められた状況などで一時的に症状を経験したことがある人もいるはず。

では、人はそもそもなぜ不安になるのでしょうか? また、どうすれば不安な感情に対処し、日々を穏やかに過ごすことができるのでしょうか? この記事では、専門家による解説を<オプラ・デイリー>からお届けします。

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不安を感じるメカニズム

そもそも、人はなぜ不安になるのでしょうか? 専門家によると、不安な感情が生じるのにはきちんとした理由があり、私たちは不安によってメリットも得ていると言います。「不安障害という診断を受けているのでないかぎり、不安という感情は正常かつ健康の証。人類が自らの安全を守るために、原始時代につくられた心のメカニズムの一部なのです」と語るのは、心理学者でポッドキャスト『Ask Lisa』のホストでもあるリサ・ダムール博士。

不安や緊張感がもたらすメリットの例としては、高速道路で他の車と距離をとり事故を起こさないように運転できる、保護者がハシゴを上ろうとする幼い子どもを注意して見守れるといったことが挙げられるとか。

ダムール博士は、「こうしたメリットがあるにもかかわらず、人々は不安を問題視する傾向がある」と指摘。その背景には「不安を解消する製品を販売するウェルネス産業の影響」も。現代社会では、“不安を感じるなら、気分が良くなるサプリをどうぞ”“大人用のぬりえはいかが?”など、次から次へと様々な商品が登場しますが、「不安に対処するには、不安の正体を理解することが大切です」とダムール博士は強調します。

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不安を味方につける方法

不安を味方につけるには、まず自分に不安感という症状が起こっているのだと自覚すること。不安と言うと、“心配の延長線上”というイメージが一般的にあるけれど、実際は「不安という言葉で表される状態には、感情的、認知的、行動的、身体的な反応が含まれています」と、ダムール博士は説明します。

「緊張や苛立ち、反すう思考、心拍数の上昇、筋肉の緊張、浅い呼吸など様々なものがあります」(ダムール博士)

これらの反応を自覚できたら、何に不安を感じているのか考えてみましょう。

あなたが今恐がっているのは、実際に具体的な脅威が存在するから? それとも、困難や緊張するようなことを前にしているから?--たいていの場合は後者でしょう。

だからこそ、ダムール博士がすすめるのは「立ち止まって深呼吸すること」。深呼吸をすることで肺の伸展受容器(しんてんじゅようき)が活性化し、脳が出す急性不安反応が抑制されます。そうすると、今不安を感じていることでどのようなメリットがあるか、スッキリとした頭で考えられるのだとか。

「不安のもつポジティブな側面は、準備を促進させることです」と語るのは、心理学者で『緊張のエネルギー(原題:Nervous Energy)』の著者である、クロエ・カーマイケル博士。

つまり、不安な感情からメリットを得るための答えは「行動を起こすこと」。不安のエネルギーを生産性に転換するために、たとえばメールを書く電話をかけるプロジェクトを始めるなど、先延ばしせずに実際のアクションに移すことをカーマイケル博士はすすめます。

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貧困、気候変動、人種差別、性差別など、自分一人では解決できないような大きな問題に対する不安の場合はまた別。「そのような問題に対する不安は、より身の回りの世界を良くすることのほうに使いましょう」とカーマイケル博士。

自分の関心がある問題に関する集会に参加するのも、被災者など困っている人々のために家族や友人から物資を募るも良し。車を買い替えるときに、小さな電気自動車を選ぶのも具体的な行動です。無力感に陥ると心配や恐怖が増すだけ。不安の解消には、小さなステップを積み重ねることが大切なのだとか。

ネガティブな“心の声”には注意を

悲観的な“心の声”は、不安を増幅させます。自分の心のなかにいる“悲劇のヒロイン”の扱い方が大切だと言います。

たとえば仕事で失敗してしまったとき、自分を責めたり「キャリアが終わる」と嘆いたりすることがあるでしょう。そんな場面では、あなたの親友ならどんな言葉をかけてくれるか考えてみて。きっと「あなたは賢いし、機転が利くから、きっと大丈夫。うまく修正できるよ」と言ってくれるのでは?

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不安な感情は、その瞬間に何があなたにとって気にかかっているかを知らせ、来たるべき事態に準備できるように促してくれるもの。自分の心に耳を傾けることでうまく現実に対処し、穏やかな日常を送れるようになりたいですね。

※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。元記事に関連する文化的背景や文脈を踏まえたうえで、補足を含む編集や構成の変更等を行う場合があります。
Translation:mayuko akimoto
Oprah Daily