パンデミックの到来によって、マスクを着用することが私たちの日常と化した昨今。そんな中、時流にマッチした作風で、じわじわと注目を集めているアーティストがいます。

彼の名は、フォルカー・エルメスさん。フォルカーさんはドイツのデュッセルドルフを拠点に活動している画家で、オリジナルの作品を描くだけでなく、サイドプロジェクトとして「Hidden portraits(隠された肖像画)」というシリーズを手がけているのだとか。

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boredpanda>によると、フォルカーさんはこのシリーズで、歴史的な絵画に描かれた人物の顔に、Photoshopを使ってマスクやアクセサリーなどのコラージュを施しており、その作品の数々が今の世とリンクすると、SNSで話題を呼んでいるそうです。

とはいえ、彼がこれらの作品を作り始めたのは、パンデミックがきっかけではないのだとか。実はこのプロジェクトは10年以上前から続けているもので、フォルカーさんが敬愛する画家たちの作品を、新たな視点で解釈して欲しいという思いが込められているそう。

「かつて、肖像画はお金持ちの人々しか依頼できないものでした。驚くほど高価だったのです。なので、絵に描かれた衣装には、その人物の階級や属性を表すコード(暗号)がたくさん詰め込まれているのですが、違う時代を生きている私たちには、そのコードを解読することができません。だから肖像画を見ても、人物の顔にばかり目を向けてしまうのです。そこで私は、その目線を遮断したいと考えました――顔を覆うことで、作品の見え方が全く変わってくると思ったんです」

つまり顔を覆うことで、絵に描かれている人物が示したかった地位や威厳など、より深い部分を感じ取ってもらうことがフォルカーさんの目的だったのですが、奇しくもパンデミックが到来したことで、本来の目的とは違う形で作品が脚光を浴びることに!

それでもフォルカーさんは、「このプロジェクトは長年続けているものですし、医療用マスクをテーマにしたシリーズではないので、作品作りにおいてはパンデミックの影響は受けていません。でも、マスクを着用する生活がどんなものなのか、知ることができたのは新しい発見でした。このような形で私の作品への注目度が上がったことも、喜ばしいことだと感じています」と述べています。

また、「私の作品が、人々がマスクを着用することの重要性を認識するための一助になれば幸いです」とも話しているフォルカーさん。

“マスク”という共通点があるだけで、会ったことのない肖像画の人物たちに親近感が湧くから不思議。ぜひ彼のInstagramで、他の作品もチェックしてみてくださいね。