8月のカバーガールはLAを拠点に活躍する日本人女優、祐真キキさん。話題の海外ドラマ『ロスト・イン・スペース』や『ウエストワールド』などに出演し、人気急上昇中の彼女に、女優を志した理由や成功を収めるまでの道のりについて質問してみました。自ら掲げたゴールに向かって突き進む、パワフルでポジティブなハリウッド女優の意外な一面にも注目です!

――女優になろうと思ったきっかけは?

私が女優になろうと思った理由は、世界的に知名度を上げるため。将来、人道支援や環境問題に取り組みたいと思っていて、自分が発言する力を得たい、そしてその発言力を高めたいと思ったんです。夢は大きいんですけど、世界を変えたいと思ってハリウッドを選んだんですよ。小学生くらいから、ちょっとそういうことを考え始めていましたね。『世界がもし100人の村だったら』という本や、いろいろなテレビ番組を見て影響を受けたと思うんですけど、たぶん正義感がものすごく強いんですよ。今は目の前の仕事でいっぱいいっぱいで、あの頃のパッションがもうちょっとほしいくらいです(笑)。

――英語はどうやって習得したんですか?

中学生のとき、アメリカのドラマや歌手に憧れて、自分で英語の勉強を始めました。勉強というか趣味みたいな感じだったんですけど、学校から帰ってきたらドラマを観て、セリフをマネをしていたんです。始めは字幕をつけて観て、だいたい内容を把握してから字幕なしで、そのあと英語字幕で再び鑑賞…と、セリフを覚えるくらい、同じエピソードを繰り返して観るんですよ。ストーリーうんぬんではなくて、「とにかく英語を話せるようになりたい!」という、そのときのパッション。今は英語を喋らなきゃいけない状況になってしまって、やらなきゃいけないと言われると、なかなかできないですよね。

――留学されたのは高校生のときですよね?

高2のときですね。留学団体を通して、アメリカのサウスダコタ州に行くことになりました。とにかく友達をいっぱい作ろうと思って渡米して、すごく楽しかったですよ。日本と違って授業も自分で選べるんですね。本当は数学とアメリカヒストリーをとらなくてはいけなかったのに、宿題についていけなくて「無理!」となって、1日で両方ともやめて、たしか家庭科と体育に変えてもらったんです。全部で6科目履修していたんですけど、バンド、コーラス、美術みたいな、全部英語を読まなくていいやつ(笑)。そこで最低評価のFをとらなければ、帰ったときに日本の高校の単位に変換されることになっていて、高3の夏に日本に戻ってきました。

――女優になるということはその時点で決めていたんですか?

ふわっとですね。興味はあるけど、でも何をしようかなという感じで決まってはいなかったです。高校を卒業して、やりたいことが何かわからなかったので大学には行かず、フリーターをして、世界が見たいと思ってアフリカとかタイを訪れました。タンザニアに行ったとき、実際に南スーダンで人道支援のために働いている男性に出会って、いろいろ話を聞いているうちに、「ハリウッド女優になろう、人生一度きりだし」と思って決めました。その頃、実家がある京都でバイトしていたんですけど、上京してアップスアカデミーという演技学校に入ったんですよ。日本で唯一アメリカの演技を教えている学校で、そこで演技を学んでから行こうと思って。1年半くらい学んで、LAへ渡りました。

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Cédric Diradourian

――そこからどうやって大役を得るまでに至ったんでしょうか?

最初は小さい仕事からのスタートです。どこかの会社のウェブ用の動画とか、韓国の新聞の広告とか、インターネットドラマとか、コマーシャルみたいなものとか。アメリカに行って、役者を始めようとする人はみんなそうだと思いますけど、ひとつひとつ積み重ねていかないと、始まらないんですよ。自分のプロフィールビデオみたいなものを作らないといけないので、そのためでもありますね。そのビデオの中で、こういうことやりました、ああいうことやりましたという実績を見せて、キャスティングからの信頼を得るんです。ものすごい数のオーディションを受けてきましたね。今はエージェントが送ってきてくれるオーディションをできるだけ受けるようにしているんですけど、テレビ番組に出るごとに、だんだんと役の大きさも上がってきていて、最近くるのはかなりいい役ばかりになりました。

――実際、合格するのは大変だと聞きますが、くじけたりすることはありますか?

オーディションはほぼ落ちます。受かったらラッキーみたいな感じ。だからくじけたりってことには全然ならないです。そんなことでくじけていたら、本当に続かない。だって今も5本連続くらいで落ちてますもん。一瞬うわって思いますけど、でも基本的には「まあ、次に行こう!」みたいな。もともとポジティブなので、恋愛くらいでしか悩まないんですよ。恋愛に関しては喜んだり、悲しんだり、超乙女です(笑)。オーディションに落ちてもめげないですけど、恋愛だったら、ちょっとでも傷つくようなことを言われたらすぐ落ち込みます。でも寝たら治る(笑)!

――日本での演技経験や学んだことはアメリカで役に立ちましたか?

アメリカに行く前、日本でヤンキー映画みたいな作品に出たことがあるんですよ。単館上映くらいの規模の映画だったので、もちろんアメリカとはスケールが全然違いますけど、そこでやったのもアクションだったんです。だからアクションの基礎はその映画で学ばせていただきましたね。今考えると、全部つながっていたなと思って。私、運動神経がすごく悪いんですよ。競技とか本当にダメで、走りは超遅いし、リアルファイトになると本当に弱いと思うんですけど、アクションとしてカメラの前でテクニカルに動くことはできます。慣れですかね。ダンスとかも、教えられると習得は早いほうかも知れないです。スクールのクラスで学んだ殺陣も、私は本当にラッキーなことに役と当てはまりました。殺陣を要求される仕事なんて、オーディションを100本受けて、5,6本だと思いますし、男性のほうが必要かもしれないんですけど、いろいろと身につけておいて損はないですね。ダンスでも歌でも空手でも、できるものが多いほど、いろいろな役のオーディションを受けに行けますから。

――アメリカで俳優を目指す場合、何がいちばん必要だと思いますか?

演技力です。日本の演技とは真逆なので、ちゃんとアメリカの演技の基礎を学ばないと絶対受からないですね。アメリカの人たちはみんな、常に学んでいますよ。いっぱい仕事をしているような人でも、時間があったら、演技のクラスに行っているし、私もLAにいるときはできるだけ行くようにしています。LAは俳優の街なので、いっぱい業界のクラスがあるんですよ。でもちょっと商業的になっている部分もあるので、演技に関してはNYのほうがいいものが学べるとは思いますね。NYはやっぱりブロードウェイの世界なので、本気な人が多いです。たぶんダンスもそうで、ダンサーもNYのほうがLAよりレベルが高いと思います。

――有名なドラマに出演されていますが、演じる上で難しかったことなどはありますか?

『ロスト・イン・スペース』は科学者だったので、使ったこともなければ、聞いたこともない単語が多くて、セリフに関して大変でした。『ヒーローズ・リボーン』は日本語が多かった代わりに、アクションシーンが大変でしたね。でも両方ともほぼ自分のまま、自分の中にある違う部分を使って演じるみたいな感じなんですよ。オーディションに受かっている時点で、この私を求めているということなので、そのままの自分でよかったりするんですよね。一概には言えないですけど、たぶん有名になるまでは、自分とかけ離れているような役にはなかなか受からないです。アメリカはリアル志向なので、できるだけ役と近い人間を求める傾向にあります。たとえばアフリカに住んでいるアフリカ人を配役したいときに、アメリカにもアフリカ人はいっぱいいるけど、意外と現地で採用したり。最近は日本人をキャスティングする際も、日本で採用されることが多くなってきたので、「私、LAにいる意味あるのかな(笑)」みたいな世界になってきましたね。今はハリウッド女優になりたいからといって、アメリカに行く意味はあまりないかもしれないです。もちろん行ってもいいと思いますけど、どこにいてもやり方次第でオーディションは受けられます。

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Cédric Diradourian

――憧れている女優や共演したい俳優などはいますか?

アンジェリーナ・ジョリーのことはみんな知っていて、わかりやすいから名前をよく出すんですけど、私が目指しているのは彼女のように"女優であり、人道支援家"という部分であって、彼女に憧れているということでは一切ないです。別にレオナルド・ディカプリオでもいいんです。ハリウッド俳優はみんないろいろな活動をやっているので、それこそアンジーのように難民問題に対して意見を出している人もいるし、最近だったら女性問題について発言している人もいるし、環境問題の人もいるし、いろいろですよね。それに対して間違えたことは言えないし、勉強しなきゃって思うんですけど、今は目の前のことに必死すぎて。私が何にフォーカスしてやっていきたいかはまだ模索中。これから時間をかけて探していきたいと思っています。女優として好きなのはケイト・ブランシェット。もちろんメリル・ストリープも大好きです。最高ですよね。でも共演してみたい俳優とかは特にいないんですよ。私、勉強不足で、監督の名前もプロデューサーの名前も、まわりに「大丈夫?」って言われるくらい全然知らなくて。たぶん興味がないんでしょうね。

――ではキキさんが今、いちばん興味があることとは?

恋人かな(笑)。好きな人ができたら猛アタックします。恋愛体質なのかはわからないですけど、ときめいているのが好きだから、恋はずっとしていたいですね。好きになると自分でも「止まらんなー」って思うくらい、攻めますね。自分からご飯に誘うし、電話で「好きになっちゃいました!」とか言ってしまうし。一目惚れはしないですけど、何かの拍子で好きかもとなったら暴走します。その人のことを四六時中考えて、セリフが頭に入らないときもありますよ(笑)。恋人とケンカとかしたらドヨーンとなって、仕事に支障が出ます(笑)。

――単身でアメリカに渡られたわけですが、大変なこと、辛かったことはありますか?

あまりないんですよね。あったとしても、すぐ忘れます(笑)。私、もともと自由な性格なので、アメリカのほうが合っているのかもしれないです。もちろんその時々は辛いこともあるし、いろいろ悩んでいると思いますよ。たとえば選択肢がたくさんあって、なにかを選ばなきゃいけなくなったときとか。でも基本的には流れに身を任せる生き方をしています。アメリカに行くときもそうでした。行くべきか、もうちょっと日本にいるべきか迷ったんですけど、結局はタイミングだなと思って。そのとき演技スクールを卒業せずに辞めて行ったんですよ。今かな、みたいな感覚でした。私の場合は考えすぎると間違えてしまうので、直感を信じて、できるだけ自分が心からやりたいほうを選ぶようにしています。

――やりたいことすらわからない、という人にアドバイスするとしたら?

いろんなことに無理矢理、興味を持つことが大事だと思います。興味がなくてもとりあえずやってみる。やってから合わなければやめればいいし、やらないと何も始まらないし、やりたいことは降ってこないですからね。恋人だって、ただ待っていても見つからないじゃないですか。若いうちに海外にも行ったほうがいい。自分の目で見るのと、テレビで見るのとでは全然違うから。興味がなくても、新しいことに挑戦してみるといいと思います。たとえば行ったことのない場所にいってみる、それが近場だとしても。やりたいことがわからないとか、何にも興味が持てないという人は特に、無理矢理でも行ったほうがいい。いろんなことに無理矢理、興味を持ったほうが人生楽しくなると思います。

――今後の活動の予定や目標などはありますか?

しばらくはLAで女優を続けますね。たぶん5年は続けると思います。特に目標みたいなことは一切ないんですけど、将来子供は3人くらいほしいので、32歳くらいから産みたいな、みたいなことは考えます。でも全然プランではないですよ。私の人生、プランしたところでプラン通りには一切いってないですから。すべてプラン以上、プランを超えてくるので、ざっくりな想像しかしていないです。理想は子育てしながら、やりたいことをやる。女優を続けているのか、人道支援をしているのか、何をやっているのかわからないですけど、しばらくは女優を続けているんじゃないですかね。愛する人と結婚できればいいですけど、結婚できなくても子供はほしいです。アメリカにいると結婚にとらわれる必要はないって、感じますね。

――では最後に読者の皆さんへのメッセージをお願いします!

人生、楽しみましょう、ですかね。本当に楽しんだもの勝ちだと思うんですよ。やりたくないことは基本やらなくていいって思っています。やらなくていいことをやるのは時間の無駄だから。やりたいことに対する努力は、やりたくなくても大事ですよ。毎日ハッピーでいることが一番です。先日、番組収録のメイク中に政治の話になって、「じゃあ私、ハッピー党、作ります」とか言って、みんなで「ハッピー、ハッピー」って唱えていたら、なんだか本当にハッピーになってきて(笑)。これから辛いときは「ハッピー」って唱えようって、大爆笑だったんです。それは冗談として、人生ハッピーに、日々を楽しく過ごしたいと思いますね。いやなことは無理にせず、もしやりたいことがなくても、素朴なものにハッピーを感じられたら、最高だと思います。私は天気がいい日もハッピーだし、くだらないことで笑ったり、おいしいものを食べたり、今は暇がないですけど旅行したり、恋愛だとまた話が違いますけど、好きな人に見つめられたりすると超絶ハッピーです♡ みんなでハッピー党に入りましょう(笑)

ひたすら自分の目標に向かって頑張るというシンプルなスタンスで、生き方にまったくブレがないキキさん。まさに竹を割ったような性格で、発言も潔く、サバサバとした印象でした。女優としてグローバルな成功を収めているにもかかわらず、あっけらかんとしていて、とっても自然体。だけど恋をすると乙女になってしまうところは、なんだか親近感ですね!

撮影/Cédric Diradourian ヘア&メイク/LISA スタイリスト/町野泉美 モデル /祐真キキ 取材・文/江口暁子

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