YouTubeや17LIVEなど、さまざまな発信で注目を集めている「ハゲップル」の2人。学生時代に脱毛症と診断された「ハゲカノ」さんが、自分に合うウィッグ探しに苦労した経験から、 2021年10月に株式会社NEJIKO(ネジコ)を設立し、今年の秋に美容師がカットしたオリジナルのウィッグを製造・販売するサービスをローンチしました。

今回は、公私ともにパートナーである「ハゲカレ」さんとともに、これまでの経験やブランド設立までの想いをインタビュー。洋服をコーディネートするように楽しめるウィッグの魅力や、2人だからこそのコミュニケーションのコツを聞きました。


髪型が選べなかった学生時代

――脱毛症に気づいたのはいつ頃でしたか?

  • ハゲカノ:脱毛症と言っても、種類や原因は人によってさまざまです。一気に髪が抜けてしまう人もいますが、私の場合、高校2年生のときにいわゆる「10円ハゲ」と言われるような円形脱毛症が突然発症しました。親と相談して皮膚科に通っていましたが原因がわからず、処方された薬も効果がなくて。髪が抜けはじめてから何カ所にも円形が広がっていくうちに「これは本当に治るのかな?」と不安が大きくなっていきました。

    そのとき学校を休む選択肢もあったかもしれませんが、「休んでもどうしようもないな」と思い、頭頂部をカバーするヘアピースをつけるためにベリーショートに髪をカット。それでも抜けた部分が隠せなくなって、頭全体をカバーするフルウィッグを被るようになり、学校に通おうとしていました。

    当時、脱毛症の人向けのウィッグを探してみても、情報がほとんどなかったうえに人毛でできた医療用の10万円以上するウィッグくらいしかありませんでした。好きな髪色や髪型を選べるような選択肢はなく、高価な医療用ウィッグのなかでも比較的安い10万円くらいのものを選んでいました。

パートナーが「脱毛症」の発信のきっかけに

――ハゲカレさんとの出会いについて教えてください。

  • ハゲカノ:ハゲカレとの出会いは、三軒茶屋にある芸人バー。もともと芸人だったハゲカレが働いていて、友達と「おもしろそう」とふらっと入ったときに偶然出会いました。
    意気投合して、その後2人で会うことに。はじめてバーで会ったときはウィッグのことを知らせてなかったのですが、できれば早めにハゲカレに伝えたかったんです。当時はウィッグを気分やファッションでコロコロ変えていたので、突然髪型が変わったら驚かせちゃうな、と思って。髪型をあえて変えて、2回目のデートでウィッグのことを伝えました。
  • ハゲカレ:ハゲカノに伝えられるまで、ウィッグに全然気がつきませんでした。2回目のデートでいつもと違う雰囲気だったので、「髪染めた? 切った?」と聞いてみると、「これウィッグなんよ」と教えてくれて。僕に気づかせるように、はじめて会ったときとは違う髪型のウィッグを被っていたみたいです。
  • ハゲカノ:ウィッグのことを伝えたら「なんで被ってるの?」と聞かれるのはわかっていたのですが、そのときはサラッと流しました。脱毛症のことをいきなり伝えても、負担になりそうで。その次に会ったときに、自分が脱毛症だということをハゲカレに伝えました。
  • ハゲカレ:僕は「10円ハゲ」はなんとなく聞いたことがありましたが、そもそも脱毛症自体を知りませんでした。ハゲカノから聞いたときは、正直「脱毛症ってどんなものなんだろう?」っていう気持ちが大きかったですね。
さまざまな発信で注目を集めている「ハゲップル」の2人。脱毛症と診断された「ハゲカノ」さんが、美容師がカットしたオリジナルのウィッグが手に入るブランド「nejiko(ネジコ)」を今年の夏にローンチしました。今回は、公私ともにパートナーである「ハゲカレ」さんとともに、これまでの経験やブランドへの想いをインタビュー。
ハゲップル

――脱毛症について発信しようと思ったきっかけを教えてください。

  • ハゲカノ:付き合って一緒に住みはじめた頃、ウィッグを完全に外すのになかなか踏み出せなかった時期がありました。ウィッグをする前に地毛をまとめるネットがあるのですが、その姿を見せるのも抵抗がありましたね。
    でも一緒に過ごすうちにウィッグを外すのも徐々に慣れてきて、この毎日の様子を何か発信したいな、というのを感じて。私自身はすでに17LIVEでイチナナライバーとして配信をして、ハゲカレはお笑い芸人だったこともあり慣れている部分もあったので、二人の日常の延長線としてSNSや動画配信サービスでの発信を始めてみました。
  • ハゲカレ:多くの方に知ってもらったきっかけは、ハゲカノの誕生日に投稿した、僕がハゲカノの頭を剃る動画。動画内で詳しく説明をしていなかったので、さまざまなコメントを受け取りましたが、ハゲカノに対するポジティブな意見が大多数でした。
  • ハゲカノ:これまでとくに脱毛症の方に向けた発信を意識していなかったのですが、脱毛症の方やウィッグが必要になった方から「明るい動画を見て勇気をもらえました」「ウィッグが好きになりました」という反応をいただくことが多いです。
    私自身も元々Instagramでウィッグのレビューに関する投稿をしていて、そこでつながった子と自分たちを「ウィッガー」と呼びあったりしていました。動画をアップしはじめてから、脱毛症のことを知らない層にも見てもらえるようになったので、そこからもっといろんな人に発信したいなと思うようになりました。

ウィッグに込めた過去の経験と想い

――「NEJIKO」を立ち上げるまでの経緯を教えてください。

  • ハゲカノ:学生の頃被っていたウィッグは高額だったので、ボロボロになりながらも大事に使っていました。イチナナライバーとして17LIVEでライブ配信を始めた頃も毎日同じ髪型にしていたのですが、あるときウィッグならすぐにヘアスタイルを変えられることに気づいたんです。
    当時は毎日配信をしていてマンネリ化しやすかったので、すぐに印象が変えられるウィッグなら新しい髪型や髪色も挑戦しやすいし、みなさんにも楽しんでもらえるんじゃないかと思いました。

    そこからいろんなウィッグを試してみようと考え、値段が手ごろな人工毛のウィッグを買ってみることに。従来の人工毛のウィッグは“不自然”な印象が強かったと思いますが、最近のものはクオリティが格段に高くなっていたんです。そこから、人工毛のウィッグの可能性に気づきました。

    その後、自分好みのデザインだけれどなじみにくいなと感じていた人工毛のウィッグを、友人の美容師さんにカットしてもらったのが「NEJIKO」を立ち上げる大きなきっかけに。「はじめからこんなウィッグがあったらいいのに」という想いがブランドのコンセプトにもつながっています。
    image
    ハゲカノ・17LIVE

――ウィッグを作る上でどんなところにこだわりましたか?

  • ハゲカノ:「NEJIKO」の大きな特徴は、好みの仕上がりに合わせてカスタマイズができるところ。まずは髪型を選んで、前髪の長さやカールの強さ、カラーなど、希望の仕上がりを決めていただきます。カスタマイズしたオーダーに合わせて美容師さんが1点ずつカットして、オリジナルのウィッグが届けられる仕組みです。

    人工毛=不自然というイメージを覆したくて、1番こだわったのはナチュラルな髪質選び。医療用ウィッグは主に人の毛で作られたウィッグなので、うねりや枝毛など、毛の悩みがあります。人毛は巻いてもカールが取れやすいのですが、人工毛なら洗ってもカールが取れにくい。「NEJIKO」のウィッグは、私自身が「これがいちばん自然」と思う毛質を選んでいるので、これまでの人工毛とは比べ物にならないくらいリアルです。

  • ハゲカレ:ずっとハゲカノの横でウィッグを見ていますが、「NEJIKO」のものはとくになじんでいて好きです。美容師さんがカットしたウィッグをハゲカノがつけているのを見たときには、「すごくいい!」と感動しましたし、毛質へのこだわりは注目してもらえたらと思います。
さまざまな発信で注目を集めている「ハゲップル」の2人。脱毛症と診断された「ハゲカノ」さんが、美容師がカットしたオリジナルのウィッグが手に入るブランド「nejiko(ネジコ)」を今年の夏にローンチしました。今回は、公私ともにパートナーである「ハゲカレ」さんとともに、これまでの経験やブランドへの想いをインタビュー。
NEJIKO
▲NEJIKOウィッグイメージ

社会が考える「脱毛症」のイメージ

――「脱毛症」に対しては、さまざまなイメージを持っている人がいると思います。ハゲカノさん自身はどう考えていますか?

  • ハゲカノ:「脱毛症」と聞くと、社会的なイメージが先行しているのもあって重くとらえる人は多いんじゃないかな。実際にDMでいろんな声を聞きますが、当事者の周りにいる方がちょっと過保護になりすぎている印象があります。脱毛症で特別扱いされたくない方も多いと思うので、個人的には普段通りに接してくれるほうがうれしいです。
  • ハゲカレ:僕の場合は、むしろ気遣いが欠けてたくらいかも(笑)。最初から「脱毛症だからどう」とは特に考えてなかったです。
  • ハゲカノ:仲がいい友達にも脱毛症やウィッグのことを話しますが、もし、私を助けようと治療法を調べてくれたとしても「そんなことはしなくていいよ」と言うかもしれません。「今日の髪型いいね」って、一緒に楽しんでくれるとうれしいですね。

――容姿に対して他人から指摘された経験がある人も多いと思いますが、お二人はどう考えていますか?

  • ハゲカノ:その言葉の背景にどういう意図があるか、という判断は難しいですよね。悪気なく言っている場合もあるし、相手との距離感や関係性にもよるから。
    たとえば、私の場合「ハゲ」というワードをずっと避けていましたが、ハゲカレと出会って「ハゲカノ」という名前を使うようになって、受け入れられるようになってきました。ただ、関係性がなにもできていないなかで、いきなり「ハゲ」と言われたら壁を作るし、軽蔑すると思います。
    言葉自体をなくそうとするのは、難しいですよね。無理のない範囲で自分の気持ちと向き合いながら、言葉に敏感になりすぎないようにいるのがいいかなと私のなかでは解釈しています。
  • ハゲカレ:傷つけるつもりで容姿を形容する人のことは、軽蔑してしまいます。言葉は残るものなので、それなら傷つける言葉を発した人自体のことを忘れた方がいいんじゃないかとも思います。僕らは2人とも嫌なこともすぐに忘れてしまうタイプだから、普段からポジティブに過ごせているのかもしれませんね。
  • ハゲカノ:私も同じスタンスです。何か言ってくる人とは、深い関係にならないだろうなって判断することが多い気がします。
    たまにDMで、「パートナーに脱毛症のことを打ち明けられない」という相談を受けることもあって。個人的には「脱毛症だと伝えてフラれたらどうしよう」という気持ちが理解できます。でも、「自分のことを伝えて逃げるような人とは、今後もうまくいかない。他に素敵な人がいると思う」と、パートナーとのこれからを判断できるいい指標としてみなさんに伝えるようにしています。
さまざまな発信で注目を集めている「ハゲップル」の2人。脱毛症と診断された「ハゲカノ」さんが、美容師がカットしたオリジナルのウィッグが手に入るブランド「nejiko(ネジコ)」を今年の夏にローンチしました。今回は、公私ともにパートナーである「ハゲカレ」さんとともに、これまでの経験やブランドへの想いをインタビュー。
ハゲップル

    ――今後のお二人の目標を教えてください。

    • ハゲカノ:私は専門学校が医療系だったので、学生時代は黒髪以外にしたことがありませんでした。こうした理由も含めて、事情や髪質によってできない髪型、カラーがある人は多いと思います。
      でもウィッグなら「この髪型かわいいな」「この色かわいいな」と、洋服を選ぶ感覚で、好きなヘアスタイルをコーディネートすることができる。髪型を着せ替えできるという軸で、髪の悩みに関係なく、単純に「かわいいから」という気持ちで、たくさんの人にファッション感覚で「NEJIKO」のウィッグを被っていただけたらうれしいです。

      現状はオンラインのみでの販売なので、実際にウィッグを触ったり、被ったりできる機会を増やしていきたいですね。やっぱり画像だけでは毛の質感やカットなど細かな部分が伝わりにくいので、実物を手に取れるポップアップストアを開催できればと思います。また、モデルさんにもウィッグを被ってもらって、服と髪でコーディネートするような使い方を増やしていきたいです。
    • ハゲカレ:脱毛症の方だけではなく、ファッションとしてたくさんの人にウィッグを楽しんでいただける機会が増えたらいいですよね。ウィッグが当たり前になれば、いろんな悩みを持つ人が取り入れやすくなるはず。そうなったら理想だと思うので、僕も実際に手にしてもらえるようなイベントができればと思います。
    • ハゲカノ:今は女性用のみの展開ですが、男性向けや子ども向けのウィッグがほしいという声を多くいただきます。「こんなニーズもあるんだ」という新発見もあるので、徐々に範囲を広げていきたいですね。

    ハゲップル

    ハゲカノとハゲカレの普通のカップルとはちょっと違った日常動画をアップ。最近ではウィッグブランド"NEJIKO"を立ち上げ、ウィッグカットのASMR動画がYouTube shortsにて5,000万再生を超える。NEJIKOは『髪型は着せ替えできる』をテーマとし、髪の毛があるなし関係なく被れて、美容師が全てカットしたウィッグという今までにないものを展開。

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