久々に会った友達と価値観のズレを感じたり、もっと踏み込んだ会話がしたいのに、なかなか糸口が見つからなかったり、表面的な会話になりやすい関係と、深い会話がしやすい関係の境界線が見極められなかったりして、疎遠になってしまった…なんて経験はありませんか?

でも、そこで諦めてフェードアウトしてしまうのは、もったいないかもしれません。

本記事では、価値観が違う友達との向き合い方や、深い会話をする方法のコツ自分の意見を伝えたうえで理解してもらえなかったときの対処法などを、心理カウンセラー山根洋士先生の解説のもと紐解きます。


【INDEX】


解説:山根洋士先生(心理カウンセラー)

友達の種類と起こりえるギャップ

人間関係に悩んだときは、まずはその人との関係性を整理し、再認識することが大切です。

幼少期からの幼なじみ

近所に住んでいたり、親同士の仲が良かったりして、幼い頃に共に過ごした時間が長い友達。幼少期からの友人であるため、無条件に価値観が似ていると思い込んでいる人が多く、久々に会うと「なんか変わった?」と感じることも。

高校や大学などの学生時代の友達

一生の友達になることが多い、大人に成長する段階で出会った友達。反抗期を抜けて、まだ社会に揉まれていない、ありのままの自分で出会った人だからこそ、非常に仲が良く、気心も知れた仲になることが多いです。しかし、絆が強いだけに揉めると厄介になる場合も。

会社の友達

仕事を通して出会っていることから、ある程度の距離感があるのが特徴的。その分、トラブルも少なく、直接対峙することも少ないでしょう。

趣味や勉強、サークルなどで出会った友達

嗜好性が高い分、競争心が芽生えやすい関係性でもあるため、感情的になりやすいことがあります。好き嫌いの争いなど、些細な揉め事が多くなる傾向に。

入らざるを得ないコミュニティの友達

地域活動や子どもの学校などでできたママ友など、入らざるを得ないコミュニティでの人間関係。素直にすべてを話すことが難しく、本音と建前をうまく使う必要があります。ときに親友を見つける場合もありますが、そのコミュニティが終わるまでの限定的なお付き合いになることも多いです。

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Ada daSilva//Getty Images

深い関係を築ける関係性

前述した関係性のなかで、深い話がしやすいのは下記の2カテゴリーの友達である場合がほとんどです。

  • 幼少期からの幼なじみ
  • 高校や大学などの学生時代の友達

表面的な会話になりやすい関係と、深い会話がしやすい関係の境界線は、自分が素の状態でいられるかどうか。社会的な関係性のなかでも、その境界線を超え、素でいられることができる人となら、深い話ができると言えるでしょう。

そもそも、人間は「同類=仲間」とみなす性質があります。表面的な面で言うと、下記のように何かしら共通点があったり、育んできたものが似ていたりすると、お互いを同類をみなして仲間意識が高まり、仲良くなる傾向に。

  • 価値観が合う
  • 家庭環境が似ている
  • 家族構成が似ている
  • 出身地が近い
  • 学歴が似ている
  • 親の資産状況が近い

一方で、パーソナルな面で言うと、ありのままの自分を受け入れてくれるかどうかや、安心感が得られるかどうかで仲間意識が高まります。

友達と価値観が合わなくなる理由と対処法

久々に友人と会うと、話が合わなくて違和感を覚えた…というのは多くの人が経験済みなのではないでしょうか。

そんなとき、「相手が変わってしまった」と責めたり、落ち込んだりするのではなく、まずは「そもそも、初めから同じ価値観を共有していたのだろうか」「自分と同じだと思い込んでいただけなのではないか」と自問自答し、根本から見直す必要があります。

また、仕事や住んでいる場所、年収、配偶者や子どもの有無など、ライフステージに合わせて価値観が変わるのは自然なこと。大切なのは、その違いを認識しながらコミュニケーションを取ることです。そうすれば、自分の思い込みによって大きなズレを感じることは少なくなるかもしれません。

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Ada daSilva//Getty Images

価値観が合わなくなったらフェードアウトすべき?

結論から言うと、わざわざフェードアウトする必要はありません。環境とともに価値観が変わることは大いにあるけれど、その人の根本が大きく変わることは少ないからです。

何が変わって、何が変わっていないのか、どの価値観が自分と違っていて、どこは同じなのか、自分の中ですり合わせておけば問題ないでしょう。

ただし、自分のことを引きずり下ろそうとしてきたり、不安を煽ったりするようなスタンスを取ってくるような人とは、距離を置いたほうが無難です。

友達と深い話をするためのヒント

相手を理解するには、その人の発言そのものではなく、その発言の意図や価値観の根源を読み解くことが鍵です。

そのため、自分の意にそぐわない意見であったり、価値観が違うと強く感じたりしたときは、「あたなはどうしてそう思うの?」と聞くのが有効的。理解が深まるうえに、相手もあなたに「聞いてもらえた」「受け入れてもらえた」と思い、距離が縮まることも。

相手に不快な思いをさせずに、自分の意見を伝える方法

どれだけ仲のいい友達であっても、時々会話の中で、アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込みや偏見)による言動が見られると、モヤモヤしたり、違和感を覚えたりすることはありませんか?

対面で伝えるとき

そんなモヤモヤに直面し、どうしても相手の発言をスルーできないときは、「それは違うんじゃない?」といきなり責めるのではなく、まずは相手を認め、受け入れたうえで話し合いをスタートさせましょう。

先ほどの「どうしてそう思うの?」という質問から、次のような流れで会話を進めることがおすすめです。

  1. 「どうしてそう思うの?」
  2. 「なるほど、あなたはそう思うんだ。教えてくれてありがとう」
  3. 「私はこう思うんだけどさ…」

もしくは、自分の意見を述べる前に「私の考えを言ってもいい?」と相手に許可をとる方法も有効的。

一方で、自分の意見を述べる際に“一般論”だけを述べると、喧嘩になってしまう可能性が。そのため、「そういう発言はちょっと悲しい」「実はそれ、結構気にしているんだよね…」と感情に訴えかけるのも方法の一つです。

SNSを使った方法

直接伝えたとしても、その場で完全に理解してもらうのはなかなか難しいもの。「いつか気が付いてくれたらいいな」程度の心持ちが大切です。

その点から言うと、SNSなどで独り言のようにぼそっと自分の意見を呟いて、不特定多数の人に主張するのもおすすめ。あるいは、自分の意見を代弁してくれているような人の投稿をシェアするのも自然な流れです。

いずれにしても、後から「そういえばあのとき、あの人が言っていたことってこういうことか!」と思い返し、理解してもらえる可能性があります。こういった経験に心当たりがある人は多いのではないでしょうか。

ただし、SNSをはじめ、本や映画を通して相手に自分の価値観を伝えるときなどは、わかってもらおうと思わず、自分はこういう価値観の持ち主ですと知ってもらうスタンスが大切。「見て!」ではなく、「この〇〇、面白かった!」などと紹介して、決して強要しないようにしましょう。

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Ada daSilva//Getty Images

自分の意見を伝えたうえで、理解してもらえなかった場合

お互いの意見を交換したのに、それでも理解してもらえなかったときは、「やはりフェードアウトすべき?」とよく聞かれますが、そもそもお互いの価値観は合わせようとするものではないと覚えておくことが大切です。

価値観は異なるのが当たり前。どちらが正しい、間違っている、と一概に判断することはできません。そして「間違っている」のではなく「異なっている」と思うようにすると、心が楽になるでしょう。

逆に言うと、お互いの違いを理解し、受け入れ、良好な関係を築けたときこそ、深い話ができるような親密な関係になれます。すぐにフェードアウトして諦めるのは、そういった点ではもったいないと言えます。

深い話ができる友達を新しく作る方法

まずは共通点がありそうなコミュニティに参加してみて。そこで出会った人と、質問を繰り返しながら共通点を探してみてください。このとき、その人を攻略して友達になろうとするのではなく、「深い友達になれたらラッキーかな」という感覚を忘れずに。

そして深い友達になれるかどうかは、どこまで自己開示できるかが鍵です。ありのままの自分をどう受け入れてもらえるか、相手をどこまで受け入れられるか。無理をしないことが何よりも大事です。

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Ada daSilva//Getty Images

仲良くなれそうな人を見つけたら、“オープンマインド”で接するのがコツ。自分が心を開いていると、相手も心を開きやすくなり、丸ごと受け止めてくれるようになるかもしれません。

深い話をするなら、自分の良いところも悪いところも、すべてを受け止めてくれそうな人を見つけてみてください。

とはいえ、すべての人と仲良くするのはやはり難しいもの。自分を飾ることなく、気楽に付き合える友人と出会えたら本当に幸運なことです。自分のペースで、オープンマインドで付き合える友達を探してくださいね。

今回お話を伺ったのは…

山根洋士先生

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1970年、大阪府出身。一般社団法人メンタルノイズ心理学協会チェアマン(会長)。心理学だけでなく、数多くの経営者やスポーツ選手などへの取材経験、AIやロボット工学、脳科学などを取り入れたメンタルノイズメソッドを開発。これまでのオンライン講座の受講生はのべ8000人以上。『仕事関係からプライベートまでスッキリ! 「自己肯定感低めの人」の人づきあい読本』など、著書10万部を突破。

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