高身長で細身のモデルたちを起用したブランディングで、欧米では特に絶大な知名度を誇った下着ブランドの「ヴィクトリアズ・シークレット」。一方で、近年では「画一的な美を助長している」という批判的な声が寄せられ、現在はリブランディングを進めている。

先日、歌手のJaxが往年の同ブランドに対するアンチテーゼを込めた楽曲『Victoria's Secret』を発表したところ、SNSで瞬く間に話題に。歌詞を紹介している楽曲動画はYouTube上で300万回再生を超え、「ヴィクトリアズ・シークレット」の現CEOがコメントを発表する事態に発展している。

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制作のきっかけは、少女の涙

1995年からはランウェイショーも行い、人気モデルを数多く輩出してきた「ヴィクトリアズ・シークレット」。欧米では憧れブランドとして長年愛され続けてきたものの、その多様性に欠けるキャスティングなどから、数年ほど前から「時代錯誤」といった声が囁かれ、リブランディングを始めている。

そんなブランドに対するアンチテーゼを込めた楽曲を発表したのは、オーディション番組『アメリカン・アイドル』のファイナリストであるシンガーソングライターのJax。

ベビーシッターとしても働いているというJaxは、面倒を見ているチェルシーという少女のために同楽曲を制作。その理由は、チェルシーが友人たちと「ヴィクトリアズ・シークレット」の店舗に買いものに行った際に「太くてくびれがないように見える」と言われ、泣いてしまうほどショックを受けたから。

Jaxもチェルシーと同年代の頃に摂食障害や身体醜形障害を経験しており、「当時こういう曲があったら救われたはず」と思ったことがキッカケだったという。

ヴィクトリアの本当の姿は「男性」

そうして誕生した楽曲『Victoria's Secret』は、TikTokを中心に大きな共感を呼ぶことに。 歌詞には、以下のようなメッセージが含まれている。

子どもの頃に、「体型は人それぞれ」だと教えてくれる人がいれば良かった。雑誌の表紙を飾るフォトショップされた細身のモデルを見ては、私は太りすぎだと言われているような気分だった。そうして、食べるのをやめてしまった。
昔の私に何か言えるとしたら、こう言うでしょう。ヴィクトリアズ・シークレットの本当の姿は、オハイオに住む年配男性(※レスリー・ウェクスナーや、マーケティングの最高責任者でVSファッションショーも手がけていたエドワード・ラザークのこと)。細身で大きな胸の女性たちを売りにして、私たちのような自分の体型に不安を持つ女の子の気持ちにつけこんでいるんだよ。ヴィクトリアの秘密はね、男性によって作り上げられた存在だということ。

CEOが綴った感謝のメッセージ

その後、2018年から「ヴィクトリアズ・シークレット」のCEOを務めているエイミー・ホーク氏が同楽曲に対するコメントを発表。「私を含め、多くの人が共感する曲」であると記し、「重要な課題を取り上げてくれたことに感謝します」と手書きで綴っている。

「過去の過ちに、言い訳はしません。また、再び信頼してもらえるように努力をしています。すべての人の存在が反映されているようなコミュニティを作ることに尽力しています」という言葉も。

「声」を届けるために

メッセージを受け取ったJaxは、一時的な盛り上がりで完結させないためにも、自身の動画のコメント欄を活用して、より議論を進めたいという思いを発表している。

「巨大ブランドのCEOの目に留まったことは、すごいことだと思います。彼らから、話し合いに参加して欲しいと言われていますが、この曲で歌っていることは、決して私だけに起こったことではありません。(中略)私一人でみんなを代表して話すことには違和感を感じます。だから、みんなの力を借りたいんです」
「このアカウントは今、ヴィクトリアズ・シークレットをはじめブランドから注目されています。これまで自分の意見を伝える場がないと感じていた人たちには、是非この動画にコメントを残してほしい」
「あなたたちが安心できるように、そしてあなたたちが今の社会に反映され、美しいと思えるようになるためには、どのような変化が必要なのか。彼らに伝えましょう」