今や肌トラブルの原因の一つに数えられている「ダニ」。ダニと言っても種類は様々ですが、特にまつ毛にひそむ「まつ毛ダニ」は、目元のトラブルの元凶だと思われることが多いそう。
そこで今回は、筑波大学医学医療系の准教授を務め、現在は松本眼科の院長である加治優一先生に顔ダニの一種「まつ毛ダニ」について伺いました。目元のトラブルとの関係性やケアの方法をご紹介します。
【INDEX】
まつ毛ダニとは
加治先生によると、人の肌に寄生しているダニは実は一種類だそう。生息している場所によって、メディアなどで呼び方が変えられているだけで、顔に潜むダニはすべて「毛ダニ」と呼ばれる同じ種類のダニだと言います。つまり「まつ毛ダニ」は、その名の通りまつ毛に潜む毛ダニを指しています。
毛ダニは、小鼻の周りや目の周りなど、肌の油分が多いところに寄生する傾向があるそうで、ブラジル皮膚科学会の公式ジャーナル<Anais Brasileiros de Dermatologia>誌で発表された最近の研究では、毛ダニは毛根などで過剰に分泌された皮脂を分解し、さらには雑菌を殺す働きがあることが分かりました。
また、加治先生はまつ毛ダニが肌に及ぼす影響について次のように話します。
「一見すると肌に悪影響がありそうなイメージですが、実は『ニキビダニ』や『まつ毛ダニ』と呼ばれているものは、悪さをするようなダニではありません」
目元のトラブルと「まつ毛ダニ」の関係
まつ毛ダニの存在を知っていた人は、目元のトラブルが起こったときに「まつ毛ダニのせいかも…」と考えたことがあるのでは?
しかし、加治先生によれば「まつ毛ダニは直接的な肌トラブルの原因ではない」と言います。
「ダニという名前から、どうしても悪者の印象が強いまつ毛ダニですが、肌トラブルの原因となっていることはほとんどありません」
「確かに、肌トラブルが起こっているときはまつ毛ダニが増えていることが多いです。しかしこれはダニが原因でトラブルが起こるのではなく、肌トラブルが起こったことによってダニが増加しているのです。つまり、まつ毛ダニは私たちに肌トラブルを教えてくれる『肌のバロメーター』的な存在だと言えます」
まつ毛ダニが生息しているサイン
まつ毛ダニはとても小さいため、肉眼でその存在を確認することは極めて難しいうえ、加治先生は、健康的な目元にはまつ毛ダニは存在していないと言います。しかし、トラブルが起こった目元のまつ毛を左右3本ずつ抜いて顕微鏡で調べると、合わせて20匹ほどのまつ毛ダニが寄生していることがあるそう。
まつ毛ダニが生息しているサインは以下の通り。
- 目ヤニが多く出る
- 常に涙目
- 目の周りのガサガサ
- 肌荒れ
このような状態は、免疫力の低下による細菌の増加が原因です。細菌が増えたせいでトラブルが発生し、加えてまつ毛ダニが肌に住み着く事態に。この場合はまつ毛ダニを除去するよりも、まつ毛ダニが発生している原因を特定することが大切です。
まつ毛ダニが発生する原因
- 免疫力の低下
- 長時間メイクしたまま過ごす
- 合わないコンタクトレンズの使用
- アトピーなどのアレルギー
- 刺激の強いスキンケア
- 病院で処方された肌に合わない軟膏の使用
このような習慣や状態は、肌や眼球に負担をかけるとともに、トラブルの原因になります。また、肌トラブルが起こったときに間違った薬を使用し続けると、さらに状態が悪化し、最終的にまつ毛ダニの増加につながることも。
まつ毛ダニが増えている時の症状
目元の免疫力が弱っている不健全な状態のときは、さまざまな細菌が増えている証拠。次のような症状が肌に出ている場合は、まつ毛ダニも一緒に増えている傾向があるので要注意です。
- アトピーなどのアレルギー症状
- 炎症
- ただれ
- 皮脂の分泌量の増加
まつ毛ダニの発生を防ぐ方法
まつ毛ダニは目元のトラブルの直接的な原因ではないですが、いないほうが肌が健康な状態であることは事実。毎日のケアや習慣に気を遣うとまつ毛ダニの発生を防げるようなので、この機会に覚えておきましょう。
肌を清潔に保つ
目元周りはもちろん全身の皮膚を清潔な状態に保つことが大切。肌が弱い人は、刺激の少ない化粧品を使って肌に負担がかからないように気をつけましょう。
生活習慣を整える
生活習慣の乱れから皮脂の分泌が増えたり免疫力が落ちて、目の周りに異変が現れる場合があります。 寝不足やストレス、食生活の乱れがまつ毛ダニの発生につながるそう。
洗いすぎに気をつける
目元を清潔に保つことは大切ですが、やりすぎは禁物。例えば、目元の汚れを落とすためのアイシャンプーですが、洗いすぎによって肌が荒れてしまうことがあります。アイシャンプーや洗顔料は適度に使いましょう。
頼れる眼科の選び方
加治先生によると、まつ毛ダニに詳しい医師はあまり多くないそう。
「目元のトラブルやまつ毛ダニについて病院で診てもらいたいときは、ダニや細菌に詳しい医師が属する『LIME研究会』に所属している人を選ぶと良いでしょう」
「目元に異変が現れたときは、トラブルの背景までもを考えて診察してくれる眼科医がおすすめです」
肌を清潔に保つためのケアだけでなく、整った生活習慣を意識して、目元のトラブルが無い健康な状態を目指しましょう!
■今回お話を伺ったのは…
松本眼科 院長 加治優一先生
東京大学医学部医学科卒業、ハーバード大学マサチューセツ眼科耳鼻科病院に留学。筑波大学准教授を経て、現在は松本眼科院長を務める。眼感染症、角結膜疾患、ドライアイを専門としている。