まだまだ乾燥が気になる今の季節。スキンケアは抜かりないけれど、もっと生活に重要な“目”の潤いはケアしていますか? 多くの人が一度は感じたことがあるであろう「ドライアイ」について、東邦大学医療センターの堀裕一医師に、原因や対策を教えてもらいました。潤いに満ちた瞳なら、毎日がもっと明るくなれるかも!

Businesswoman at computer with hand on forehead, side view
McMillan Digital Art//Getty Images

そもそもドライアイとは?

「一般認知も広くされ、症状を自覚している人も多いと思います。ドライアイとは、角膜を薄く覆っている涙が減少し、角膜に乾いた感覚が現れる状態を言います」

ドライアイの原因とは?

「一番の原因は涙の分泌が減ってしまうことです。また涙の分泌が減る原因は、加齢や瞬きの減少があげられます。

よくパソコンやスマートフォンがドライアイを進行させると言われていますが、これはパソコンやスマートフォンを見ていると集中してしまい、瞬きの回数が減ってしまうからです。

また、原因は涙の減少だけではありません。生活の中での光やホコリからの刺激も角膜を傷つけているため、ドライアイに繋がる原因となっています」

ドライアイになりやすい人の特徴は?

「まずは涙の分泌が減少する高齢者や、パソコンやスマホを長時間利用する人。そしてアイメイクをしっかりする人や、コンタクトレンズ愛用者もドライアイになりやすい傾向にあります。

アイメイクとドライアイの関係についてですが、メイクが角膜の保湿機能の妨げとなっている可能性があると言われています。先ほど涙は角膜を覆っていると言いましたが、実はこの涙の膜の上には、さらに薄い皮脂の膜があり、“水と油の関係”で涙の蒸発を防いでいます。これにより、角膜の上を潤った状態に保てるのです。

この皮脂は目のキワのまつげの生え際付近から分泌されます。インラインなど目のギリギリまでアイメイクをしっかりしていると、この皮脂が分泌される穴(マイボーム腺)が塞がれてしまうため、目が乾きやすくなってしまう恐れがあるのです。

そして、コンタクトレンズの着用については、レンズと角膜が密着しすぎることにより、涙が角膜に行き届かず乾きやすくなってしまいます。スマートフォンやコンタクトレンズが普及している今、ドライアイは年齢や職業を問わず、なりやすい症状だと言えるでしょう」

治療法は?

点眼薬による治療が基本ですが、状態が悪い方は涙点閉鎖による治療をおこなうことも。涙点閉鎖とは、目頭にある涙を排出するための穴をふさぎ、涙を目に溜めておけるようにする治療です。ただしこれは症状が重い方に行う治療なので、ほとんどの場合は点眼薬での治療で改善できます」

対策方法は?

「まずは意識的に瞬きの回数を増やしましょう。瞬きにより、瞳に涙を行き渡らせるので、ドライアイ対策の基本の対策になります。パソコンやスマホでの作業は、どうしても集中してしまうと瞬きの回数が減ってしまいがちです。休憩の時間をつくって目を労ってあげてください。

また、乾きやすいと感じる人やコンタクトレンズ愛用者は、目薬を差すことも大切。まずはドラッグストアで購入できる、角膜保護剤が入ったドライアイ専用の点眼薬がよいでしょう。目薬を使用する際に気をつけて欲しいのは、防腐剤が含まれている目薬は、使用回数をしっかり守ること。こまめにケアしたい人は、目に優しい人工涙液タイプの目薬を選ぶようにしましょう。それらの点眼薬を差しても効果が不十分な場合は、眼科を受診した方が良いです 」

メイクオフにも注意が必要?

「アイメイクをしっかりしている人は、メイクオフもしっかりと行うようにしてください。目のキワは特にメイクが落しづらい部分。綿棒で優しく拭き取って、部分ケアをオススメします。最近では、目の周り専用のソープ(アイシャンプー)も発売されています。低刺激で目にも優しいので取り入れてみると、より清潔な目元を保てるでしょう」

放置しているとどうなる?

「眼科系の病気で、一番怖い失明だと思いますが、ドライアイは進行が進んだ結果、失明したという事例はありません。

ただ、目が乾燥することによる不快感や、かすんで見えづらくなることから、ビジネスパフォーマンスが低下し、結果大きなストレスとなって体に不調が現れるなど、合併症の危険性はあります。

意識的な瞬きや、市販の点眼薬でも改善されますが、それでも不調を感じたら迷わず眼科へ行くようにしましょう」

今回お話を伺ったのは…

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JUNICHI OTSUKI

堀 裕一(ほり ゆういち)先生
1995年大阪大学医学部卒業。ハーバード大学医学部スケペンス眼研究所・研究員、大阪大学医学部眼科学講座助手等を経て、2014年より現職の東邦大学医療センター大森病院眼科診療部長・教授に就任。 専門は眼科学、角結膜疾患、角膜移植、ドライアイなど。