2023年9月、「男性は頻繁にローマ帝国について考えている」というミームがTikTokで話題に。現在は、女性や男性でない人を中心に「自分たちにとってのローマ帝国」を決めようとする新たなトレンドが注目を集めている。

そしてその“ローマ帝国に相当するもの”は、ボディ・イメージと関係しているのではないかというひとつの説が。多様性が広まりつつあるものの、「痩せている方がいい」という考えが今も心に根深くあることを語った女性に共感の声が寄せられた。

※本記事には、摂食障害や過度なダイエットについての記述が含まれています。

頻繁にローマ帝国について考えている?

日本で暮らす人々からしたら、「男性は頻繁にローマ帝国について考えている」というミームが、なぜ話題になっているかわからない人も多いはず。

このトレンドが注目を集めたのは、2023年8月にスウェーデンを拠点に活動するローマ帝国時代の人物や暮らしぶりを再現(リエナクメント)するガイウス・フラウィウスさんが、Instagramにある投稿をしたのがきっかけ。

動画内には、「女性のみなさん、あなたたちの多くは、男性がローマ帝国について考えることがどれほど多いかを理解していないでしょう...」と書かれている。

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同動画はInstagramでも多くの人に再生され、その後数多くのユーザーがTikTokに男性たちのアンサーについての動画を投稿。フラウィウスさんのいう通り「頻繁にローマ帝国について考えている」と明らかに。

ローマ帝国について考えている理由は?

このミームに登場する“ローマ帝国”は、何となく心をつかんで離さないもの、気が付いたら脳裏にあるもの、定期的に思いをはせるもの、といった独特の価値観をもっているもよう。特に欧州で、盛り上がりを見せている。

The Washington Post>が報じたところによると、ある歴史学者は、「西洋社会が歴史的に、一般的なイメージとして、男らしさと結びついたローマ史の側面を過度に強調しすぎてきたこと」がひとつの要因であると考えているという。

歴史の授業で習って以来憧れを持ちつづけているのか、もしくは2000年に公開となった映画『グラディエーター』の影響を受けているのかなど、さまざまな憶測がなされているもののその理由はわからず、大半は“あるある”として楽しんでいるのが伺える。

女性にとっての“ローマ帝国”とは?

もし男性の多くが頻繁にローマ帝国について考えているのであれば、女性や男性でない人はどのようなことを頻繁に考えているのだろうか。アレクサンドラ・グーラさんは、自身にとってのローマ帝国は、“痩せたいという気持ち”であるとTikTokに投稿。物心がついたときから、自分の体に否定的な感情を抱いてきたということを語った。

これはtiktokの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
「私にとってのローマ帝国は、“痩せたいという気持ち”かな。この20年間、毎日毎日考えてきました。前は、“エレベーターミュージック(何気なく頭に残る日常の音楽)”ってよんでたけど、これからはローマ帝国ってよぶことにする」
「頭の中で、『もっと小柄になりたい』『もっと痩せたい』と一日に一度、もしくは何度もそう思った。腕も、お腹も。この20年間、私は身体のことに対して、常に意識的でいたのです」

そしてアレクサンドラさんの動画を見たクリエイターのエラ・ジェイさんも、彼女と同じ感情を抱いたことがあると明かした。

これはtiktokの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
「私が初めて痩せようと思ったのは、10歳くらいのとき。プールに友達と一緒にいてタンキニ(セパレートタイプの水着)を着てときに、自分と友達の水着姿を見比べて、『あれ、すごく違って見える』って思ったの。それ以来、私は自分のことが好きになれなかった。そして自分を変えるために、ありとあらゆることに全力を尽くしたのです」

そう語ったエラさんは21歳になった今、自身の身体について10年以上も考え続けてきたことに気づいたという。

「私はどのくらい『自分を変えたい』『見た目を変えたい』って思いながら過ごしていたんだっけと考えてみたら、なんと10年でした。そして私の人生が『痩せたい』という考えによって支配されていたのだと気がついたのです」
「細くなりたいということばかりにとらわれていたから、私は大切なことすべてを忘れてしまっていた。でも、そんなことを考えながら残りの人生を過ごしたくない」

未だ根深くある「ダイエット文化」

ボディ・ポジティブ(外見や体型に対するコンプレックスを肯定し、ありのままの自分を愛すること)や、ボディ・ニュートラル(自分の外見や体型に対する感じ方をそのまま受け入れること)など、多様な身体についての考えや発信を多く目にするようになったものの、依然として痩せていることが望ましいのが日常的である、“ダイエット文化”は未だ根深くあるよう。

two females in lingerie with different body shape
Maria Korneeva//Getty Images

二人の動画のコメントには、同じようにいかに子どものころから「痩せた方がいい」という考えにとらわれてきたかに共感する声が多く寄せられている。

  • 子どもながらに、噴水にコインを投げ入れたり、誕生日でろうそくをふき消したりするときに願うのは、痩せますようにということばかりでした
  • 私は今49歳。三学年のときに、はじめてダイエットをしました。おわりが見えません
  • 7歳のときから、毎日。今は46歳です。本当に疲れます

これまでも個人の健康やウェルビーイングに悪影響があると指摘されてきた、ダイエット文化。ここでは「痩せる」ことのプレッシャーにフォーカスをしているけれど、もちろんそれだけが個人を悩ますものではない。“誉め言葉”として発したかもしれない「痩せた? 」という言葉が、相手のボディイメージ(自分自身の中での“体”の在り方)に影響を与えてしまうことも指摘されている。

一方で、コメントの中には「私たちの世代がこの事実に気づけていることがうれしい」といった声も。多くの人にとって、自分の身体への自己肯定心を下げて、自分や他人の身体も常に評価してしまうダイエット文化の根深さに、気がつくきっかけとなったよう。