吹き出物が増えたりキメが粗くなったように感じたり、ストレス状態が続くとお肌の調子が崩れるのは、誰にでも経験があるはず。

「ストレスが肌に現れるのはよくあること。ストレスが一過性のものではなく日常化してしまうと、さらに状態は悪化します」と話すのは、皮膚科医のデニス・グロス医師

そこで本記事では、ストレスが原因で起こる肌の問題とその対処法を<マリ・クレール>からお届けします。

ストレスが肌に与える影響

チェスター大学の心療皮膚医師であるフランシスコ・タウスク教授によれば、ストレスに直面すると、血圧や心拍数が上昇するなど、人間の体は“戦闘態勢”になるのだとか。

「体はストレスから主要な内臓器官を守ろうとします。体にとって肌は優先順位の上位ではないために、“一時停止状態”に置かれてしまう。ホルモン放出のコントロールもできなくなるため、肌に影響が出てくるのです」

また、皮膚科および精神科を専門とするエイミー・ウェクスラー医師も、ストレスが長期化することの危険性を警告。

「ストレスに対する“闘争・逃走反応”は、ほんの数秒〜数分で決まってしまいます。そのスイッチ機能がオフにならないと、体にさまざまな問題が起こってしまうのです」

症状:吹き出物(ニキビ)

ストレスによって起こる肌の問題がさまざまにある中でも、吹き出物はもっとも一般的な症例のひとつ。ストレスは吹き出物の原因となる「皮膚の炎症」と「皮脂」を増加させてしまい、さらに皮脂そのものを変化させて毛穴が詰まりやすくなるんだそう。

吹き出物が増えることで、さらなる精神面への影響も。研究によると、鬱になるリスクも高めてしまうとのこと。ウェクスラー医師は「吹き出物ができたためにさらにストレスを感じ、この状況がさらに吹き出物を悪化させるという悪循環が生まれるのです」と解説しています。

吹き出物が治った後も、肌に問題が残る場合が。「肌の色味にもよりますが、吹き出物はしばしば色素沈着を引き起こします」と皮膚科医のローズマリー ・イングルトン医師は指摘。

対策:忍耐力をもって治療

吹き出物ができたら、すぐに市販の「吹き出物(ニキビ)治療薬」を塗りたくなるけれど、ちょっと待って!

イングルトン医師によれば、ストレスを感じている時期は肌も敏感なので、まずは過酸化ベンゾイルという成分で患部を乾燥させ、その後、サリチル酸で完治させるのがベター。これは色素沈着を防ぐカギでもあるのだとか。

「炎症がおさまった後、ダークスポット(黒っぽい跡)が残るはずです。この状態になったタイミングで、炎症の再発を防ぐフルーツ酸やナイアシンアミドが含有されたセラムや美容液を使用することをお勧めします」
「トーンアップ効果などで知られるハイドロキノンを使用した色素沈着の治療とは異なり、効果は穏やかです。皮膚を明るくするのではなく、時間をかけてダークスポットを消す働きがあります」

また保湿を欠かさないことも大切な治療のひとつ。

肌が乾燥すると、体はより多くの皮脂を生み出し、肌を守ろうとするのだとか。その際、吹き出物治療に効果的とされる「ノンコメドジェニック化粧品」を選ぶことも忘れずに。

症状:乾燥&敏感肌

心がざわつくと、肌の潤いも失われるもの。ストレスは“肌の水分補給剤”であるヒアルロン酸の自然生成を妨げてしまうのだとか。また、肌が見た目にもカサカサになったり乾燥していると感じるのは、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン、神経伝達物質)と炎症性サイトカインが原因かも。

タウスク医師によれば、これらの物質は皮膚のバリア機能を混乱させ、乾燥、炎症、かゆみなどの症状を引き起こすんだそう。

「普段はどんな製品を使っても問題ない人という人も、ストレスを感じている時期に使用すると、かゆみを伴う発疹の原因にもなることもあります」

ストレスを実感しているときには、製品選びに気をつけて!

対策:無香料・低刺激の製品を使用

「皮膚の保護機能を良い状態に戻すため、肌を過度に刺激したり、乾燥や角質の原因となる美容製品の使用は避けましょう」とウェクスラー医師。スキンケアのラインナップを保湿効果が高く、かつ無香料・低刺激性のもの変えると良いのだとか。

症状:シワ&たるみ

短い期間で急にシワやたるみが気になるようになったら、それはストレスが関係しているかもしれません。

グロス医師によれば、それも体が「皮膚への循環を後回しにしている」ことが原因なのだとか。

「ストレスによって闘争・逃避反応が生じると、体は血液を内蔵に送ることを優先します。これにより、皮膚の循環機能が低下してしまうのです。ストレスを感じていると肌のつやがなくなるのは、こういったメカニズムが原因です」

肌の天敵は多いものの、最大の敵はコルチゾールというホルモン。

「コルチゾールはコラーゲンの分解、皮膚の菲薄化(肌痩せ)、自己治癒力の遅延を誘発します」とタウスク医師。またストレスはDNAの修復を妨げる可能性があり、テロメア(染色体の末端にあるキャップ構造)が短くなる現象と関連していることも、研究で明らかになっているそう。

そして、内側からの肌のダメージは、外側からのダメージも受けやすくなることに。

「フリーラジカルの体内生産が急増すると、天然の抗酸化物質の供給量が減少します」とグロス医師。その結果、肌は紫外線などの外的ストレスに対してより脆弱な状態になってしまうのだとか。

対策:保護力を高める

ここに来て、やっと良いニュース! 「6カ月以内の短期的なストレスによる老化は、回復力も早いのです」とウェクスラー医師。つまり対処すべきは長期的ストレスと、それに伴うエイジング問題なのだそう。

ストレスを感じている肌は敏感なため、レチノールのような即効性があるとされる成分を使用するのは控えるべき。「代わりに、フリーラジカルの中和、そして抗酸化物質が豊富な処方によって肌を保護することを優先してください」とウィクスラー医師はアドバイスしています。

もちろん根本的な問題であるストレスを解決しなければ、肌問題も解決しないのは明白。「毎日“自分のために時間”をしっかり確保してください。落ち着いた気持ちで1日を過ごせることが大切なのです」と話すのは、イングルトン医師。

「スキンケアをする行為そのものが、ストレス緩和と美肌の両方に効果がある人もいるでしょう。顔を洗うだけでさっぱりし、気持ちをコントロールできるようになるかもしれません」

この翻訳は、抄訳です。

Translation: 宮田華子

MARIE CLAIRE