好きな音楽を、開放的な非日常の空間で楽しむことができる音楽フェス。人気エンターテインメントとして注目される一方で、イギリスでは音楽フェスでの「ハラスメント」が問題になっています。

『BBC』によると、イギリスでは音楽フェスに行ったことがある40歳以下の女性の40%が、何かしらハラスメントを経験したことがあるというデータが出ているそう。さらに、別の統計によると、そういったハラスメントのうちわずか2パーセントしか通報されていないとのこと。

実際にイギリスの音楽フェスでハラスメントを受けたという女性たちの声から見えてきた、現状と課題とは――。


【INDEX】


ハラスメントだとも気づかず…

現在26歳のローレンさんは、17歳のときに初めて行ったレディング(イングランド南東部)の音楽フェスでハラスメントを経験。

「フェスに行くのがとても楽しみでした。若かったので、フェスがどんなものなのかも、よく知らなかったんです」

メインステージで、男友達と目当てのバンドが出てくるのを待っていたローレンさん。すると、後ろにいた男性グループが笑っている声が聞こえ、振り返ると、男性が何も言わずに下半身を露出していたそう。

初めは友達と笑い飛ばそうとしたものの、不快感は残ったまま。

「私たちはその場を離れました。その男性は友達と笑いながら、どこかへ消えて行きました」

それから数年後、#MeTooムーブメントが起きてから、あのときの経験はハラスメントだったと初めて気が付いたそう。

「当時は、ただの悪ふざけだと思ったんです。通報するべきだという考えもありませんでした」

この経験から、「まずは自分の心がどう感じるか」「大したことではないと思っても、何かあったら通報するべき」だと学んだという彼女。周りにも伝えることで、他の人の助けにもなると感じていると言います。

「これは女性だけの責任ではありません。男性も何がハラスメントになるのかをしっかり学び、お互いに指摘し合うべきです」
young woman throwing hands in air while dancing at open air nightclub
Hinterhaus Productions//Getty Images

オープンにされないこと自体が問題

ロンドン在住でフィナンシャルコンサルタントとして働くソフィーさん(31歳)も、スコットランドで行われたフェスでハラスメントを経験。背後にいた誰かがすり寄っているように感じたそう。

「人がたくさんいた会場で踊っていました。初めは気のせいかと思ったけれど、だんだん誰かが近づいてくる気がして…それからお尻を触られました。どうしたらいいかわからなくて、立ちすくんでしまったんです」

すぐにソフィーさんは友達を連れ出し、トイレに駆け込んだものの、何が起こったかを誰にも言えなかったのだとか。

「ハラスメントについて発言すること自体が恥だとされるのは問題だと思います。私自身、これよりもっと酷い経験をしたこともあります」

運営側の対策と残された課題

国連機関『UN Women UK』は、音楽フェスをどんな人にとっても安全な場所にするため、「Safe Spaces Now」という活動を開始。今年9月にイギリスで行われた音楽フェス『Strawberries & Creem festival』では、参加者に向けてハラスメントの課題や境界線、ハラスメントの現場での対処法などを説明し、対策がとられました。

また、過去にハラスメントを経験した10代のグループによって設立された団体『Girls Against』の共同創設者ビーさんは問題をこう指摘します。

「多くのフェス参加者は、通報を躊躇してしまいます。大事になったり、誤解されたりするのではないかと恐れているんです」
「加害者はフェス会場から追い出す、出入り禁止にする、場合によっては法的処置も必要です」
rear view of people enjoying at music concert
Evan Burton / EyeEm//Getty Images

声を上げたことでの変化も

なかなかオープンにしにくい環境のなかでも、実際に声を上げたことで変化を起こせた例も。ライターで活動家のジーナ・マーティンさんは、2019年、スカートの中の盗撮を禁止する法案「アップスカーティング」がイングランドとウェールズで成立するきっかけとなった一人。

法律を変えようと動き始めたきっかけは、ロンドンでのフェスで盗撮をされた経験から。ジーナさんは、フェスでのハラスメントは“当たり前”のことのようになっていると言います。

「“当たり前”だからと言って、受け入れるべきでも耐えるべきでもありません。私も通報したのに、『何もできることはない』と言われたことは何度もあります。でも、それが変われば、もっと人々は声を上げられるはず。今でも、『女性は経験を大げさに話す』と言う人もいますが、そんなことはないんです」

“当たり前”になってしまっている状況から、少しずつ前に進んでいるこの問題。 泣き寝入りする被害者がこれ以上増えないよう、社会全体で対策や課題を考えていく必要があるのではないでしょうか。

※この翻訳は抄訳です。

Translation: Haruka Thiel

COSMOPOLITAN UK