他人から投げかけられた容姿に対する言動に傷つき、自分の体にコンプレックスを抱いてしまったという経験はありませんか? イギリス人女性のモーガン・コーマックさんは、セクシャルハラスメント(以後セクハラ)が原因で、自分の胸を嫌いになってしまったという経験の持ち主。

本記事では、モーガンさんをはじめとするイギリス人女性たちによるセクハラ被害の体験談を<コスモポリタン イギリス版>からお届けします。

語り:モーガン・コーマックさん

「何かされたくないなら、そんな服を着るな」と言われ…

ある日の夜、私は混雑しているバーにいました。「すみません」という声が後ろから聞こえ、そのときは丁寧に声をかけられただけだと思っていたら、気づけば私の腰に手が回されていたのです。

その手はすぐに上へと伸びてきて、私の胸を掴んできました。その瞬間私は振り返り、その見知らぬ人を押しのけました。私が「何をやってるの!?」と言うと、彼は私の目ではなく胸を見ながら、「何かされたくないなら、そんな服を着るな」と言ったのです。

無意識に私は、胸の谷間を隠すためにに服を上に引っ張りました。そして夜は過ぎ、私の心にはなんとも言えない感覚が残ったのです。羞恥心なのか、嫌悪感なのか、はたまたその男性から言われた言葉や私自身についてなのか…。もうよく分からなくなってしまいました。

rear view of woman standing against wall
Lorella Furleo Semeraro / EyeEm//Getty Images

世界で起こっているセクハラの実態

このような出来事は残念ながら日常的に起きており、私を含め多くの女性が同じ経験をしています。

先日発表された「UN Women UK」の調査によって、「年齢に関わらず、71%のイギリス人女性がセクハラ被害にあったことがある」という実態が浮き彫りになりました。また、18~24歳の回答に限定するとセクハラ被害にあったことがある女性は86%にも及ぶそう。 さらに世界の女性の3人に1人が、生涯に身体的または性的な暴力にさらされており、その数は7億3,600万人に上ります

これらの厳しい統計を聞いて、多くの女性が非常にがっかりしているでしょう。セクハラから生まれる様々な相互作用によって、私たちには多くの不安が生まれるのです。男性があなたの身体を欲望の対象にし、同時にあなたを傷つけることになれば、身体に悪影響を及ぼす可能性もあります。

自分の胸を「邪魔」だと感じるように…

バンに乗った男性が「いいおっぱいだね」と叫んできたり、見知らぬ人からの視線が胸に注がれる世の中で、私はすぐに自分の胸が“邪魔”だと感じ始めました。

彼らは知らず知らずのうちに私に嫌がらせをしていて、Vネックのトップスを着ることさえも怖くなっていたのです。胸の大きさなんて自分ではコントロールできないのに、この2つの突起に恥ずかしさを覚えてしまいました。

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Lorella Furleo Semeraro / EyeEm//Getty Images

もちろん、これは私だけが抱えている問題ではありません。「Catcalls of London」 の創設者であるファーラー・ベニス氏によると、「ストリートハラスメント(公共の場での見知らぬ人によるハラスメント)は、被害を受けた人々に圧倒的な影響を与える可能性がある」と説明しています。

「Catcalls」のアカウントに提出された意見の60%(過去3年間で1万件以上)が、身体や衣服、そして外見に対する言及が含まれていたことが明らかになっています。

「女性や若い女の子の多くは、嫌な思いをしたときの服を二度と着ないようになります。さらには『傷つく言葉をかけられたのは自分のせいだ』と解釈してしまうケースも報告されています」

一方的に浴びせられる性的な視線に悩み…

人生のほとんどをこの大きな胸と一緒に過ごした私は、10代の頃は胸を測定されることが恐怖で仕方ありませんでした。大きいサイズのブラを勧められるたびに、悲しい思いをしたのを覚えています。胸を固定するための頑丈なブラが必要になり、私が着たいと思っていた華やかな下着からはどんどん離れていきました。

それだけでなく、男性が人前で私の胸を見てくることは避けられないと感じ、この先ずっと同じことで悩み続けなければならないという実感と不快感を覚えました。

この羞恥心に近い感情は、若い年齢の頃から始まるケースが多く、大きな胸を持つ女性の間では、一般的に感じられる可能性があるそう。

Everyday Sexism Project」のローラ・ベイツ氏はこう語っています。

「胸が大きい女性は、男性からの一方的な性的な視線や関心のために、恥ずかしさや憎しみを抱くケースがよく報告されています」
「女性の身体に注目しがちな社会では、性的虐待は加害者の行動が原因になるのではなく、“女性の身体が原因”であると幼い頃から教え込まれてきました。そして実際は加害者が負うべき責任にも関わらず、自分の身体を恥じて『こうなったのは自分のせい』だととらえてしまう女性もいるのです」

ランジェリーショップで働いたことが転機に

何気ない生活を送っていたあるとき、胸に対していつもと違う感覚を覚えたことがありました。私が「自分の胸」に対して自信がついてきたのは、女性中心のランジェリーショップで働いたことがきっかけだったのです。

お客さんに自尊心を持ってもらえるよう手助けする環境で過ごしていくうちに、自分の胸を恥ずかしいものと考えるのではなく、褒め称えるようになりましたそして、私の胸に合った機能が付いているだけでなく、デザインも素敵な下着を購入することも転機となりました。下着を購入することは、今までの嫌な感情から乗り越えるための魔法のアイテムではなかったけれど、私が自分の身体との関係を再構築するきっかけになったのです。

さらに下着だけでなく、洋服も好きなものを着たいと思えるようにもなりました。男性からの嫌がらせは、残念ながら今後も終わることはなく、ずっと付き合っていかなければならないと分かっています。けれど私は、他の人の行動を気にして自分の身体を隠さないと決心しました

そして今では、私は自信を取り戻すことができました。私は男性の性的対象とされることを恐れて身体を隠すのではなく、自分の身体を受け入れると決断したのです。けれどもちろん、自分の身体を受け入れることを難しいと思う人もいるでしょう。

オーバーサイズの服を着るようになった女性

エステラさん(24歳)の場合

幼い頃に児童虐待を受けてきたエステラさん(24歳)は、私と同じ経験をした一人。そして、こう語ってくれました。

「この1年間は体重を減らして胸を小さくするために、ひたすら体を動かしていました。私たちがどれほど性的に扱われているのか、そしてあらゆる男性からの視線やかけられる言葉に敏感になっていたんです。スポーツをすることが大好きでしたが、学校で私が走るといつも男子が私の胸を見てくすくす笑い、何か話していたことを覚えています。そのせいで、最終的にはスポーツが嫌いになってしまったのです」
「さらに私は大きな胸を隠すために、ぶかぶかの服を着ています。夏場は重ね着ができないので、毎日びくびくしていました」
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Lorella Furleo Semeraro / EyeEm//Getty Images

乳房縮小手術をした女性

ソフィーさん(22歳)の場合

私と同じ思いをしている女性の中には、社会から性の対象と見られないように永久的な解決策を求めている人もいます。イギリスでは2019年に約4,200件もの乳房縮小手術が行われおり、その理由は腰痛や肩こり、精神的苦痛など様々です。

18歳のときに乳房縮小手術を行ったソフィーさん(22歳)は、術後に周囲の視線が変化し、自分の大きな胸が関連していたと気付いたと言います。

「当時はあまり気付いていませんでした。けれど振り返ってみると、10代の頃に性的対象として見られていたのは、胸のせいだと分かったんです。特に学校では、みんなが私の胸に視線を集めていました」

さらにソフィーさんは、タンクトップを着たことで校長室に呼ばれた経験があり、そのような洋服を着るのは「他の人に悪影響を及ぼす」と仄めかされたこともあったそう。手術後は周りからの視線が消え、「手術をしたことで不安が取り除かれました」と話してくれました。

最後に

セクハラは今でも私に影響を与えており、自分の身体を受け入れるために日々闘っています。胸が大きいという理由でセクハラを受けることは、現代女性が直面している悲しい実情です。だからこそ、多くの女性たちが被害について声を上げることで、少しずつ“セクハラを許さない社会”に近づくのではないかと思っています。


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性犯罪被害相談電話

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男女共同参画局による公式サイト

※相談に関するQ&A、警察や病院に行く時に持って行った方がいいものなどが解説されています

性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター一覧

※この翻訳は抄訳です。

Translation: ARISA ISHIMOTO

COSMOPOLITAN UK