「アラブの春」と呼ばれる民主化運動をきっかけに、2011年3月から10年にわたる内戦が続いているシリア。
人々が過酷な生活を強いられる中、戦闘や空爆によって“瓦礫の街”と化したシリア最大の都市アレッポで、取り残された動物たちを守るべく立ち上がった男性がいます。彼の名は、モハマド・アラー・アルジャリールさん。
元々アレッポで、電気技師として働いていたというモハマドさん。<METRO>によると、内戦が勃発した年、別の場所へ避難するという選択肢もありましたが、彼はアレッポに残って負傷者の救出活動を行う道を選んだそうです。
そして2012年からは、現地に置き去りにされた元飼い猫や、野良猫たちに餌を与える活動も開始。彼のもとに集まってくる猫の数が増えるにつれ、いつしか猫たちのための保護施設を作ることが、モハマドさんの夢になったのだとか。
2015年になると、彼の保護活動は海外でも報じられ、モハマドさんは「アレッポのキャットマン」として広く知られるようになります。そんな中で彼にコンタクトを取ってきたのが、後に保護施設の共同設立者となるアレッサンドラ・アビディンさんでした。
モハマドさんは彼女の協力を得ながら、Facebookを通じて寄付金を集め、ようやく念願の保護施設「エルネストズ・サンクチュアリ・フォー・キャッツ」を立ち上げることに。
同時にモハマドさんは、子供たちが猫と触れ合える場も提供。内戦で状況が悪化する中、癒しを求めて多くの子供たちが彼の施設を訪れたのだそう。
しかし翌年、アレッポは激しい空爆を受け、モハマドさんの保護施設も爆撃で倒壊。多くの猫たちが命を落とすという、さらなる悲劇も起こりました。
それでもモハマドさんは挫けることなく、生き残った猫たちを守りながら、再び支援者たちの協力を得て、アレッポと隣接するイドリブ県に新しい施設を設置。現在もそこで、仲間たちと懸命に保護活動を続けています。
また昨年からは、パンデミックの影響でペットを手放す人が増え、保護猫の数が1,000匹超に急増したほか、行き場のない犬や、動物園に取り残されたライオン、熊、虎などの世話も一時的に引き受けているのだとか。
困難だらけの険しい道のりですが、決して祖国を離れることなく、多くの命を守り続けるモハマドさんは、「救いを求める人々や動物たちを助けることが私の喜びであり、責務なのだと、いつも思っています」と、<BBC>に語っています。
今この瞬間も、現地で必死に生き続ける人々と動物たち。内戦やパンデミックが一刻も早く終息し、彼らが心からの安らぎを得られる日が来ることを、願ってやみません。