出産への考え方、方法、制度は世界各国によって千差万別。そんな海外での出産ですが、海外移住を視野に入れている人のなかには、興味がある人も多いのではないでしょうか。一方で、語学の壁など、ハードルが高いと思ってしまう要素も…。そんな壁を乗り越えて、無事に異国の地で我が子に出会ったママたちは、口を揃えてこう言います。

「子育てはもちろん、自分自身に大きな自信がついた」

そこで、実際に海外出産を経験した日本人女性たちを直撃。妊娠中の検査や、出産中のエピソード、費用や食事事情まで深掘りしてお届けします。

第1弾は、インドネシアのバリ島で出産したヒトミさん(41歳)の体験談から。 “伝説の助産師”立ち合いのもとで出産するという貴重な経験になったそう!

Happy pregnant woman enjoying under the waterfall in nature.
skynesher//Getty Images

世界中から妊婦が訪れる人気の助産院で出産

基本データ

名前:ヒトミ(41歳)

出産をした国:インドネシア、バリ島ウブド(バリ舞踊、バリ絵画などが有名な芸術の村)

出産当時の年齢:34歳(三男)

病院のタイプ:「ブミセハット」と呼ばれる世界から妊婦が訪れる助産院

費用総額寄付(※当時)

入院期間:1泊

母子同室:可能

食事内容:「入院中の看護は基本的に家族がするようで、食事は家族が持ってきてくれました。病院側からは、現地で取れるオーガニックの赤米のおかゆとゆで卵のみが出されました。素朴で滋味深い味に元気が出たことを覚えています」

「CNNヒーロー」にも選ばれた“伝説の助産師”が立ち合い

――出産をした助産院には、現地の人だけでなく世界中から妊婦が集まるとのことですが、どのような助産院なのでしょうか。

世界中からの寄付で運営されている、「ブミセハット」という助産院で出産をしました。インドネシアの貧困層では、現在でも母子が出産時のトラブルで命を落とすことがあります。この病院は「たとえ貧しくとも安全に出産をしてほしい」という願いから、アメリカ人の助産師ロビン・リムさんによって立ち上げられました。また、自然な出産を希望する外国人にも門戸が開かれています。

立ち合いをしてくれた助産師ロビン・リムさんは、温かなエネルギーを放つ素敵な女性。彼女のハグは、涙が出るくらいホッとするんです。ロビンさんは、フィリピンが台風被害に遭った時やネパール地震のときも、すぐに現地へ飛んで妊婦さんや赤ちゃんをケアした方。その功績から、『CNNヒーローズ』に選ばれたこともあるほどです。

4カ国の日本人女性の実録「海外出産期」
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この助産院での検診や出産、産後の子どもたちの治療は無料。私は寄付をしたのですが、自分がムリのない範囲で支払った出産費用が、本当に必要としている妊婦さんや新しい命に使われることに、とても喜びを感じました。また、綺麗なシーツやタオル、ベビー服やママ用の服なども、たくさん寄付してきました。とっても穏やかで明るい雰囲気で、日本人女性で利用される人も少なくないようですよ。

ヒンドゥー教の歌と精油の香りに包まれ、フラワーバスで水中出産

――妊娠中は、どのように過ごしていましたか。

バリ島で、まだ小さかった長男・次男と、ゆっくり妊娠中の時間を過ごしました。ベビーシッターやお手伝いさんも雇うことができたため、大きなストレスが溜まることはありませんでした。尿検査で妊娠が分かった後の健診は、体重と血圧、むくみのチェック、心音の確認だけ。超音波検診や内診、血液検査はありませんでした。

――出産時のことを教えてください。

陣痛が始まって、深夜に助産院へ。柑橘系やフローラル系の精油を入れたお風呂の中で、水中出産をしました。助産師のロビンさんが、庭に咲いていたプルメリアの花を持って駆けつけてフラワーバスにしてくれたり、立ち合いの助産師さんたちがガヤトリー・マントラというヒンドゥ―教の歌を歌ってくれたり…。とても幸せな雰囲気の中で、出産をすることができました。後産(出産直後、胎盤などが体外に出ること)のために、漢方の煎じ薬のようなものもいただきました。

――産後にも異文化を感じる出来事はありましたか?

へその緒を切らずに自然に取れるのを待つ、ロータスバースを実践しました。へその緒と胎盤を赤ちゃんにつけたまま退院したんです。オムツ替えなども、胎盤付きだとちょっと大変でした。産後1週間くらいだったと思うのですが、へその緒がどんどん乾いて堅くなり…。赤ちゃんが自分でへその緒をキックして、無事にとれました。

バリ島では胎盤が兄弟神のような存在として、大切に埋葬される習慣があります。その習慣に則って、私も素焼きのツボに胎盤を入れ、埋葬しました。

――バリ島で出産して良かったと思うことを教えてください。

振り返ると、ナチュラリストやヨガの聖地であるバリ島ウブドらしい、自然で伝統を大切にした出産を経験できたなぁ、と感じています。自然に身を委ね、生まれてくる命を信頼するという大きな愛に溢れる気持ちで迎えることができたと思います。

今はバリ島を離れて別の国に住んでいますが、いつか三男に、生まれた場所を見せてあげたいと夢見ています。現在の助産院「ブミセハット」は当時からかなりの進化を遂げ、清潔で心地よい空間で出産をすることができるようですよ。

正直、様々な検査のない妊娠期間中には、異国の地での出産に不安を感じることもありました。でも、世界中どこにいても「なるようにしかならない」のが出産。この経験で、世界中どこにいても子どもたちを守って生きていこうという強さや自信が身につきました。